〜ウイニングショットをねらえ!〜
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発売ほやほやの、 |
──マリオテニス64ではトップスピンとスライスが 打ち分けられるということですが、 コントローラの操作をどうするか、というのは かなりの難題だったのでしょうか。 宏之: AボタンとBボタン、このふたつで打ち分けられるのが ベストだ、と考えたんですよ。 ──Cボタンは? |
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宏之: コントローラにはCボタンもあるけれど、 ゲームボーイにはA・Bのふたつしかないですからね。 先々のことを考えて、同じ仕様にしたかった。 だからA・Bだけなんです。 そうすると、トップスピンとスライスで分けるのが 一番分かりやすいよな、と。 秀五: すんなり、できるよね。 宏之: じゃあ、フラットってどうなるんだろう? と考えたとき、トップとスライスの中間だから AボタンとBボタンを同時に押すのはどうだろう? と思ったわけです。 これは、できそうだな、と。 ただ、二つのボタンを押させる、というのが 本当にいいのかどうかがわからなかったんですよ。 |
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秀五: 今まで、ゲームボーイのアクションゲームでは 同時押しさせるソフトはなかったですからね。 宏之: ゲームボーイでそういう遊ばせかたをする、 という考え方が、これまでなかったですよね。 スポーツゲームであるということで、 僕のイメージは、親指一本で操作できるもの、 だったんですよ。 片手で持てる、ということですね。 ──でも、オトナの指ならできるかもしれませんが…… 宏之: たしかに、コドモの指でできるのかな? というのがわからなかった。 やっぱり“技”として、同時押しというのは、 コドモにとってはハードルになるだろう、 とは、思ったんです。 ただ、たとえば、Aボタンを2回押す、というのは わかるだろう。Bボタンを2回押すのもわかる。 しかも、シビアに(間隔を空けずに)押さなくてもいい、 というのであれば、お子さんでも対応ができるのでは ないかなと思ったんです。 何でもいいから、ボタンを2回押すと、 キャラクターが違う動作をする、ということが わかってもらえれば、いろいろ押してみよう、 という気になるんじゃないかな、と。 それをプレイヤーが「技」だと認識できれば 楽しいんじゃないのかな、と。 で、さっきも言ったように、 スポーツゲームでこういうプレイのさせ方は ないんですけれども、逆に、ないからいいかな、と。 |
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秀五: それで、宮本さんには「こういう操作ルールにしました」 と見せたんですよ。そこまで作り込んだ状態で、 今年の1月に、宮本さんに遊んでもらったんですね。 宏之: そうしたら思いの外、楽しく遊んでもらえた。 まあ、そういうことは机上で考えられるんだけれども それ以外のルールづくりは、マリオテニス64には いろいろ工夫があるんですよ。 今回、僕は、ベースのゲームデザインというのは やらせてもらったんですけれども、 たとえば二つのボタンの効果の出し方なんかは あえて特定していなかった。 僕自身も、そこまで考えが及んでいなかったという 部分があった。それを、秀五たちが、 うまく料理してくれたんですよ。 秀五: いちばん大きかったのは、 時間がないようでいて、 ちゃんと試行錯誤をする時間が作れた、 ということなんですよ。 企画側とプログラム側が。 テニスのゲームを作るにあたっては、 基本のルールを作ることがいちばん大きいんですよ。 たとえば、ゴルフみたいに、いいゴルフコースを たくさん作る、という部分を、マリオテニス64では ルールをつくる時間に振り分けよう、 ということができた。 そのなかで、ABボタンのことも、 どういうタイミングでどういうふうに入ると プレイヤーがどれだけ気持ち良く感じるんだろうね、 というのを、みんなで寄ってたかって、 試行錯誤することができたんですよ。 宏之: 常識的に言うと、スポーツゲームというのは タイミングのゲームとして成立しているんですよ。 だけれども、マリオテニス64は タイミングのゲームとしなかった。 そこが、このゲームの肝になっているんです。 それは僕も、そういう処理の仕方もあったのか、 参った! という感じだったんですよ。 |
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──どういう事なんですか!?!? 秀五: 既存のテニスゲームで言えば、 「ボールを打つ瞬間にキー入力をする」 というのが当たり前じゃないですか。 僕たちも、作り始めたとき、 それが当たり前だと思っていた。 でも、たとえば、Aボタンがトップスピンの強打、 って設定したときに、どのタイミングでキー入力を 受け付けるの? ということを突き詰めて考えたんです。 たとえば、スマッシュ。スマッシュというのは 「相手の体制を崩してチャンスボールが来た」 ということですよね。 でも、チャンスボールは高くフワッと上がってくるから、 タイミングが取りづらい。 せっかくスマッシュを打つチャンスがあるのに、 タイミングを優先しちゃうと、気持ち良くないじゃん!? ということになりますよね。 なかなか打てない。高さも合わせなきゃいけないし 落ちどころも合わせなきゃいけない。 宏之: 実際、いままでのテニスゲームはそうだったんですよ。 秀五: 「スマッシュだ!」って意気込むと、スカるんですよ。 たいてい。 それは、やっぱり、違うよね、と。 「チャンスボールを作ることができた」 ということに対するご褒美を、プレイヤーに与えたい。 そのためには、タイミングに縛られてはムリだな、 という結論になったんです。 その場所に行けて、球が来るまでの間に キー入力を済ますことができたら、 打てていいじゃないか、って。 それで実際に、打てるように作ってみたら、 すごく気持ちがいいわけですよ。 「チャンスボールを出させるように、 いままで相手にいろんなアプローチしてきて よかったぁ!!!」 という気持ちで、ウイニングショットを決められるように なるわけですよ。 |
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宏之: これまでだと、スマッシュは、 どこが打てるポイントかを探すのと、 タイミングを選ぶのが難しかった。 それが打てるようになるためには ものすごい修練が必要だった。 ──訓練がゲームのすべて、みたいになりますよね。 秀五: だからタイミングは気にするのをよそう、 こっちのほうが気持ちいいから、って。 ホンモノのテニスだって、 ここに来るだろうなというところに できるだけ早く行って体勢を作ったほうが 有利になるゲームなんだから。 だったら、僕らの作っているゲームは、 本当のテニスに近いよね、って。 そこでまず、納得できた。 さらに、スマッシュは、 ボールが来るポイントに行かなきゃいけないんだけど フワーっと上がってくるから、どこなのかが わかりにくいわけですね。 これも、タイミングを許したことで 自分たちを解放したんだから、 そこのところも開放して、 そのポイントがわかるようにしちゃおうよ、と。 プログラマーがそう言ってくれてたので、僕も 「そうだよね、そんなことに縛られなくてもいいよね!」 って。そしたら、すごく気持ちのいい ゲームになったんです。 もともと「気持ちのいいゲームをつくろうね」と 始めましたから、正しい方向に自分たちを持っていくことが できたというのが嬉しい点でした。 宏之: でもフツウは縛られちゃうんですよ。 僕たちも縛られていたんだから。 秀五: でもボタン操作にしても、既存のゲームから 離れちゃっているんだから、 すべて、ニュートラルな状態でものを考えようよ、 ということで、プログラマーたちと ああでもないこうでもない、 こっちのほうがいい、あっちがいい、と 試行錯誤したわけです。 |
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次回もタカハシ・ブラザーズの 熱いスマッシュ・トークが続きます。 お楽しみに!! |
2000-07-22-SAT