「コロコロカービィ」 〜落とすな、転がれ、ゴールまで!〜 ハードウエアとソフトウエア、 どちらが欠けてもできなかった。 |
樹の上の秘密基地、今回から新シリーズです! 発売中のゲームボーイカラーソフト 「コロコロカービィ」開発秘話をお届けします。 “ゲームボーイ本体を傾けると、カービィが動く” という、なんだかとてもフシギなこのゲーム。 いままでなかったゲームのプレイ感覚が 大ヒットにつながっています。 じつは、ほぼ日編集部でも、流行中。 でも疑問が一つ。「傾けるだけでなぜ、動くんだ!?」 そのヒミツを解くために、このゲームをつくった 任天堂開発第二部におじゃまして、 お話を聞いてきましたよ。 |
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──傾ける、はね上げるという動作で、 画面の中のカービィも動いたり、 飛び上がったりするんですね。 ハードウエアとソフトウエア、両方の開発が 必要だったと思うのですが、 このゲームができたいちばん最初の発端というのは どこにあったんでしょうか。 「動きセンサーカートリッジ」があって、 それに合わせてゲームを考えたのか、 それとも「こういうゲームをつくりたい」というアイデアが あって、それにあわせて「動きセンサーカートリッジ」が 開発されたのか…… 谷口: 端的に言うと「ハードありき」でした。 ハードウエアの部分というのは、開発第二部というのが もともとファミコンとかサテラビューですとか プラットフォームのシステムの開発をする部署なんです。 いわゆる一個のアプリケーションの商品開発は そんなにしていなかった。 それが、ゲームボーイだ、64だ、という方向に 任天堂のメインストリームが移り、 僕らも衛星関係の仕事が一段落したとき、 さあ、何をしようか、というところに来ていたんです。 やっぱりゲームソフトを開発していかなければいかんな、 と、皆であれやこれやとネタをさがしていたんです。 ゲームのアイデアもさがしますし、ハードのほうも、 なにか使える周辺機器や、カセットの中に入れられるものが ないか、と、姿勢として模索していたんです。 コロコロカービィに関しては、使えるハードが見つかった、 というところからのスタートでした。 一般的には「こんなハードがある」というのを ハードウエアの(部署の)人間は見つけてくるんですけれど それをどうソフトにするかは、なかなか広がらないんですね。 ──「ハードを見つけてくる」というのは どういうことなんですか? まったくゼロから作り出す、のではなく、 あるものの、応用の仕方を考えるということでしょうか。 |
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谷口: この一、二年でいえば、……たぶん先達も変わらないと 思うんですけれど、他で使われたちょっとした技術とかを 応用できないかな、と考えるわけです。 何に目をつけるかということでは ハードの人間は「こんなん、面白いんやけどな」というのは みんな持っていたりするんです。 けれども、なかなか、それをゲームソフトにするということ までは、考えないんですね。 ──逆に、ソフトウエアを開発なさるかたがたというのは どうなんでしょう。 谷口: ソフトだけで考えると頭打ちになりますね。 ソフトのアイデアがあっても、それを実現させるための ハードウエアがあるかないか、何が応用できるか、までは なかなかわからないですよね。 |
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──ソフトからハードが生まれるということもあるんですか? 鈴木: 実現できる技術が「あるか・ないか」ということが キーポイントになりますね。ないものはできない。 谷口: ですから、インスピレーションという意味では、 ハードがトリガー(引き金)だと思いますね。 「こんなんあるよ」とハードの人間が見せる、 それを見たソフトの人間が「ピピピ!」と来て ソフトが生まれるということでしょうね。 ──今回のハードの第一発見者は誰だったんですか? 谷口: 増山ですね。 ──その経緯をお話しいただけますか? 増山: 部内で次に何をしようというときに、 今までのゲームと違って何かのセンサーを組み合わせよう、 というテーマはあったんです。 じゃあ、何をくっつけようか? ということで いろいろなセンサーをあたってみたんです。 今回のセンサーは、偶然、出張の折りに手に入れたもの なんですよ。でも、それが直接ゲームに結びつくとは 思っていなかった。 ──それは、何なんですか? 増山: 重力を目で見られる、というものです。 「加速度センサー」というんですが。 ──??? 谷口: あれは、もともとは電子工作キットみたいなもの だったんだね。 増山: そうですね。科学工作キットみたいなもので、 重力を数値で表示する、というものでした。 谷口 けれども、それをそのとき動かしてみて、 周りにも見せてみたけれど、すぐにゲームには結びつかず、 一ヶ月くらいはお蔵入りしてたんです。 ハードのメンバーだけで検討してまして、 毎日ソフトのメンバーに見せるわけではなかったので、 そのくらいの時間がたつまで気づかなかったんですね。 増山: 重力と、今回のゲームのような「傾き」ということが すぐに結びつかなかったんです。 |
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谷口: 動かすと、1Gとか、0コンマいくつとか、 数値が出るわけです。 「ほう、数字がでるなあ」 と言っていただけだったんです。 ハードチームではそういうふうにやっていた。 ──それが、どういうときに引き金となったんですか? 谷口: ハードのメンバーの間では パッとしたアイデアが出てこなかった、 そういうときだったんです。 ちょうど、タイミングとしては、期末……3月末ですね、 4月から新しい期になって、 ソフトの開発計画を立てる時期だった。 ミーティングで、ゲームボーイのソフトをやろう、 ということになりまして、その場で 「じつはこんなもんがあるんやけど」 と、加速度センサーを持ちだしたんです。 そのときソフトの人間が 「それはいけるかもしれんな!」 と、ゲームボーイのソフトに直接利用する、 という話が出たんです。 そこからがスタートですね。 |
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──去年の3月ということですね。 谷口: そうです。3月の1ヶ月くらいは 加速度センサーをタテにしたりヨコにしたりしてた(笑)。 ──そこでソフトのかたがたが この加速度センサーの存在を知った、と、 それが「カービィ」になったのには どんないきさつがあったんでしょう? 谷口: それは、だいぶ長いな(笑)。 鈴木: 長期連載になりますよ、話すと(笑)。 まずは、モノを見てもらわないといけないですね。 これが試作一号機で、 こういう時間軸で並ぶんですよ……。 ──ちょっと拝見します……あれ? これ、カービィじゃないですよ!? 鈴木: そうなんですよ、違うんです。 |
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おお、これが試作機か……と手に取ってみたら、 それは「カービィ」ではなかった! 次回は、「加速度カートリッジ」をつかった ゲームづくりの四苦八苦をお届けします。 お楽しみに!! |
2000-09-29-FRI