「コロコロカービィ」 〜落とすな、転がれ、ゴールまで!〜 主人公が「カービィ」に決まるまで かなりの試行錯誤があったんです。 |
樹の上の秘密基地、新シリーズ第二回目、 「コロコロカービィ」開発秘話ですよ〜! この“加速度センサー”は 車のある部分に使われているセンサーの 仲間なんだって! でもそれを“どんなゲームにするか”という ことについては、かなり長い時間の 試行錯誤が必要だった!! 今回はそのあたりのことをお聞きしてますよ〜! |
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左が2号機、右が3号機。 この先にまだまだあるのだ! |
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──試作機というのはこんなにたくさんつくるものなんですか? 鈴木: そうですね、とにかくつくってみて、ためして、 まずいところがあれば改良していく、という方法ですね。 同時に、ハードの開発チームとも 「こんどはこういう機能がつけられないかな?」 というやりとりも生まれてきますし。 ここに並んだものは、汗と涙の格闘の歴史ですよ(笑)。 ──最初の電子キットに入っていたという センサーは、この第一号試作機から採用されているんですか? 鈴木: それは変わらないですね。 それをどう使うか、ということですね。 谷口: 一年という短い時間でこのゲームが完成したという ラッキーの背景には、加速度センサーというチップが 量産品やったということですね。 メーカーから買えるものをそのまま利用できた、 という点では手間がかからなかったんです。 |
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──量産されていた、というのは 何に使われていたんですか? 谷口: 加速度センサーにも、シリーズがありましてね。 重力の単位を「G」(ジー)と言いますけど、 いま使っているチップの許容幅は プラス・マイナス2Gの計測ができるもので、 わたしたちがこうして生活している「1G」の 倍の重力・衝撃が計測できるものなんです。 シリーズのなかには「50G」なんていうものもあって そのチップは、車のエアバッグなんかに使われています。 ドンとぶつかった衝撃を測るセンサーですね。 大手自動車メーカーがここのチップを採用している、 と、そういうものですね。 ──それで、ここに6種類くらい並んでいますが どこからがカービィになったんですか? 鈴木: 3つめまでは、カービィじゃなかったですね(笑)。 一番最初は、僕が昼休みを使って絵を描いた 「おもしろゲーム 玉コロ君」というものでした。 傾けると、玉に乗った人が転がっていくんです。 あまり、たいしたことはなかったんです。 ──でも、ゲーム機を傾けるとキャラクターが動く、 というのは、すごいことだと思いますよ。 鈴木: チームのみんなにもそう言われまして(笑)、 これは半年でできるぞ! って。 これで売れるはずだ、と僕たちは信じて 僕たちは走り続けたんですよ。 谷口: 去年の4月にその話をして、 年内に発売やな、というのが 最初の甘い計画だったんですよ…… 鈴木: でも現実には、「カービィ」に至るまでに 非常に時間がかかってしまったんですが。 |
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──最初のバージョンである「玉コロ君」の 反省点はどんなことでしたか? 鈴木: 一番最初につくった形というのは 面があって、高い塔があって、 一階ずつ上っていって、穴から落ちたら 下まで落ちてしまうという、 わりとそういうシンプルなものだったんです。 誰がいちばんはやく最上階にたどり着くか? なんて遊びかたを考えながら。 でも、実際には、5階くらいから落ちても ぜんぜん嬉しくない(笑)。 すごく根本的な話ですけれど。 そこから、ほかのルールは考えられないのか、 ということで二代目をつくったんです。 今度は、ルールが自分たちで選べる。 敵を倒す、だとか、いかだみたいなもので 水の上を滑ったらどうだろう? など どういうネタができるか、ということを ふくらませていったのがこのあたりですね。 それと同時に「玉乗り」っていうと、 自分が動くじゃないですか。玉に乗った人が 足を一所懸命動かして、玉を動かすことで進みますよね。 でも、ゲームの動作を考えると、 「傾ける」ことが「足を動かす」のとイコールにならない。 地面を動かすんであって、主役を積極的に動かすのでは ない、という、これまた根本的なことに 気づいたんですね。 それで、「自分はただ転がる」というふうに ゲームの基本ルールを変更したんです。 それで、三代目は「猿が転がる」となりました。 ──猿コロ君、というんですか。 鈴木: それなりにでっかいものが転がるほうが 面白いな、ということで猿になったんですが。 そういう実験をしばらく続けましたね。 |
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──どこかで遊んだことのあるような懐かしさを 感じるんですよね。 鈴木: 箱根で売っている組木のおもちゃですね。 パチンコ玉なんかを転がすような。 それから、25年くらい前になると思いますが 子供用の、ポケットゲームにも ホンモノのボールを転がすものがありましたね。 そういうものに思いがあったので、 みんな、電子デバイスでこういうゲームをつくることに すごく夢が膨らんだんだとおもうんですよ。 あれもできる、これもできる、って。 それこそ、ゴルフだ野球だ、なんて考えましたよ(笑)。 でも、画面のサイズのことや、実際に遊んでみたときの 違和感みたいなものがあって、 「まっすぐ上に進んでいく」 という、マリオみたいなタイプのゲームにしよう、 と落ち着いたんですよ。 ──操作方法に、はね上げ、というのもありますね。 オムレツをつくるみたいに奥の方をはね上げると カービィもぴょこんとはね上がります。 これは、加速度センサーひとつで できることなんですか? 鈴木: う〜ん、そこにも歴史があるんですよ。 谷口: 加速度センサーというのはタテとヨコのふたつの軸が あります。ボールが板の上を転がるような、 平面上の動きをセンサーで感知するわけです。 座標軸でいうところの「Z軸」は、ないんですよ。 メーカーさんは、勢いよく動いたときは それを遠心力として認知すれば 検出できる、とおっしゃっていたんですね。 で、たしかにその通りやと。 でもゲームボーイに演算させるのは ちょっとしんどい。 そこで、タテ型の円柱内に小さな球が入っていて 上下にふれるのを感知する もうひとつのスイッチを入れよう、 ということになったんでです。 3軸にしよう、と。 ですが、加速度センサーのコストを考えると、 あまり他の部品は使わないほうがよさそうだ、 ということになった。 ──では、いまのはね上げというのは……? 谷口: 種明かしすると、 ふつうに傾けるのは「おだやかな変化」ですよね。 はね上げる動作をしたときには、それが 「急峻な変化」になります。 その「急峻な変化」を、ジャンプと見なす、という ソフトウエアの解釈をしたわけです。 技術的にはそんな感じですね。 ──それがあるとないとでは ゲームの操作性のインパクトが違いますよね。 鈴木: そうなんです。はね上げ、という操作方法の発見で 一気に「はね上げを使ったゲームにしよう!」って そっちのことばかりやっていこうとしたゲームを 作ろうとしたこともあったほどでした。 階段をひたすら上る、とか(笑)。 そしたら、こんどはやりすぎで、 画面がよく見えなくなるという事態に陥って。 認識できないじゃないか、って、一時期は まるっきり「はね上げ」をやめてみた。 でも、そうしたら、なにか寂しいんですよ。 そういう経緯があって、ほどほどの割合で混ぜる、 というところで復活になったんですよ。 宮本(茂)は、このゲームは「はね上げ」を 復活させたことで生き返った、と言ってました。 でもただ復活させるのでは同じなので、 雲に飛び乗るとか、はね上げたとき周りのバンパーもはねる、 などの要素がついたとき、最後まで行けるなという ゴールが見えたんですよ。 |
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2000-10-07-SAT