「コロコロカービィ」 〜落とすな、転がれ、ゴールまで!〜 子供たちがあまりに自然に操作したのを見て 「俺達は新しいゲームをつくったんだ」 って、実感したんです。 |
「コロコロカービィ」開発秘話をお届けしている 樹の上の秘密基地、その4回目です。 ソフトチーム、ハードチームとも、 商品化が決定してからが ほんとうにたいへんな日々だった。 それぞれの役割分担をお聞きしました。 |
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谷口: ハードのほうも、最初、加速度センサーというものを 発見してから、一品ずつ手作りでつくるのは ワクワクするわけです。 そして、それが、採用される。それはハッピーな わけですよ。そうなると、あとは「ソフト次第」 と言うことになりますよね。 今回、システムやプラットフォームではなくて アプリケーション、一個の商品なわけです。 お客さんはソフトを買ってくれはるわけや、と。 ハードを買うんやないんですね。 ですからソフトが完成してはじめて、 ハードの仕事が前に進むんです。 ハードの人間は、その間、量産するためには どうしたらいいのかということを考える。 それはまた、ソフトのチームとはパラレルの、 別の苦労でしたね。 ──それはとてもたいへんなことだと思うんですが。 谷口: 今回、ハウジングから起こしていますからね。 ──ハウジング、とは? 谷口: カートリッジのプラスチックケースです。 |
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谷口: これや、基板を量産設計する作業というのは できるんですけれども、 実際に量産試作して、準備していくのは ソフトが「これは面白い、商品になる!」 ということが認められてから、 はじめて前へ進むわけです。 でも、それに合わせていると スケジュールに間に合わない、 ということになるんですね。 最後にソフトが認められたところから 大慌てになるんです。 そこらへんがハードのたいへんなところですね。 池田あたりがいちばん苦労したところなんですが。 池田: ……おカネ、出ないんですよ。 一同: (爆笑) 池田: わかりやすく言っちゃうと、 試作品から、商品になるくらいの小さい基板にする、 ここから先が、予算が取れないんです。 ソフトを商品にすることが決まるまで待つんです。 谷口: 量産するためには、金型をつくったりしなければいけない。 ハードチームがその仕事をするためには、 ソフトができなければならないんですね。 |
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──そういうプレッシャーを感じながらの ソフト開発だったんですね。 鈴木: センサーのメーカーの人の会議に呼ばれて 「あとはソフト次第ですから」 と言われたり……。 「がんばります!」と言うしかない。 谷口: メーカーさんも、チップをいくつ用意したらいいのかと 気がはやりますよね。ゲームですから数が違う。 すごく期待してくれてましてね。 鈴木: そういうプレッシャーと、 宮本からの「まだまだやな」というプレッシャーと 戦いながら、つくっていったんですね。 ──発売が決まったのはいつですか? 谷口: この4月ですね。 それからが、またたいへんです。 ハードも新作やったので、テスト環境ひとつとっても ソフトチームとハードチームが 足並み揃えてやらなあかん。 テスト用だって、量産できるわけではないですし 展示会に出展するとなったら それなりの数を手作りでそろえなくてはいけない。 こういう「ソフトもハードも新しい」というのは やっぱりたいへんなことが多いですね。 ──テスト、というのも、ずっとつくってきた人や ゲームにとても詳しい人がする以外にも、 まったく知らない人に向けて、ということも あるわけですよね。 鈴木: それも大切なんですよ。 中井: それが僕の役割だったんですよ。僕の仕事は、 最終的に、製品になるときの取り扱い説明書の チェックですとか、パッケージの文言を考えたりとか そういうことが中心なんですけれども、 さかのぼって開発中は、 「しろうとのモニタ」という立場で参加していました。 月に一度くらいやって、「面白いと違うん?」とか 「まだもうちょっとネタ仕込めるんやないの?」 とか話をする。そうすると、また一ヶ月後まで 触らずにいるんです。 ずっと触っていると、面白さが当たり前のように なってきてしまうんですね。 次のバージョンができるまで、知らずにおくわけです。 鈴木: テレビカメラに試作機をつないだ部屋に中井を呼んで、 ひとりで遊んでもらうんです。 僕たちは3人くらいでヨコにいるんですけど 「どうか気にせず、ひとりでいるときみたいに 遊んでください」 って、やってもらう。わからないことがあって 僕たちに「どうするの、これ?」と訊いてきても、 僕たちはいないことになっているから答えない。 つまり、どういうところでつまずくか、 どういうところで面白がるかが知りたいわけです。 そういう役回りを、中井にはしてもらったんですね。 難易度の判断に役立ちましたよ。 中井: 肩こりましたよ……。 |
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谷口: まだカービィになるうんと前、 加速度センサーを採用しようとだけ決まったころ、 テレビゲームと携帯ゲームの違いみたいなところ、 コントローラの違いは、 みんなすごく意識したんですね。 携帯ゲームは、表示画面とコントローラが 一体になっている、ということに意味がある。 携帯ゲームを斜めにすると球が転がるというのと コントローラを斜めにしたら画面で球が転がるのでは まったく、意味が違うわけです。 そういうことを考えるときに、 中井とずいぶん議論を重ねてきたんですよ。 鈴木: 子供のいる社員に協力してもらったり、 土曜日に「子供モニタ」してもらったり。 中井: 自分たちが面白いと思ったことを 子供たちが面白いと思ってくれるかどうかというのは 実際にやってもらわないとわからないんです。 特殊なデバイスなので、 遊びかたもわからないんじゃないだろうか、とか。 取っつきやすさの度合いですね。 社内に子供のいる人に声をかけて、 集めて、ためしてみたことがあるんですよ。 そうしたら、全然大丈夫やったね。 鈴木: 「はね上げ」というのが、 ゲーム中の説明だけでわかるだろうか? というのが、不安だったんです。 ──はね上げなくてはいけない面の前に、 別画面で説明が出てきますよね。雲に乗る面ですね。 あの説明はわかりやすかったですよ。 鈴木: その説明をつけてすぐに、 子供モニタをしてみたんです。 僕らからのレクチャーなしでやってもらって 10分位してから「雲に乗れた人!?」と訊いたら ほとんど全員が手を上げたんだったよね。 あれでホッとしたんです。 谷口: はね上げさせる方法を、文章で 「手前に引く」と書いたら、 平行に手前に移動させるのか、と 勘違いされたりね。 鈴木: でも、改訂して、子供たちがあまりに自然に はね上げをマスターしたのを見ていて、 「俺達は新しいゲームをつくったんだ」 って、実感したんですよ。 子供たちは本体を上に揺さぶると ボールが跳ね上がるというのを 「あたりまえのこと」としてやっちゃったんだけど そういうふうに思ってくれること自体が 成功だったんですよ。 もっとも、あまりゲームボーイをやったことの ない子は、ソフトのほうに加速度センサーが ついているとはわからずに 「ゲームボーイってこういうものなんだ」 「ゲームボーイってすげえな」 って思ったかもしれないけどね。 |
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ハードとソフトが合体した 新しい商品をつくるのって こんなにたいへんなんだ……。 コロコロカービィが、面白いはずだよー! 次回もこの続きです。お楽しみに!! |
2000-10-27-FRI