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イメージ 「コロコロカービィ」
 
〜落とすな、転がれ、ゴールまで!〜
 子供たちがあまりに自然に操作したのを見て
 「俺達は新しいゲームをつくったんだ」
 って、実感したんです。

「コロコロカービィ」開発秘話をお届けしている
樹の上の秘密基地、その4回目です。
ソフトチーム、ハードチームとも、
商品化が決定してからが
ほんとうにたいへんな日々だった。
それぞれの役割分担をお聞きしました。
 
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座談会出席者
 
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★谷口和彦
任天堂株式会社開発第二部課長。
ソフトとハードの両開発チームに携わっている。

 
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★増山巌
任天堂株式会社開発第二部。
ハードウエア担当。

 
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★池田昭夫
任天堂株式会社開発第二部。
ハードウエア担当。

 
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★中井康純
任天堂株式会社開発第二部。
商品化のサポート&まとめ役。

 
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★鈴木利明
任天堂株式会社開発第二部。
ソフトウエア担当。
コロコロカービイのディレクター。

 
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★坂上博樹
任天堂株式会社開発第二部。
ソフトウエア担当。
コロコロカービイのアシスタントディレクター。

 
──今回のソフトの作り方は、
「スーパーマリオ的な作り方」だとお聞きしたんですが、
それはどういう意味なんでしょう?
 
鈴木:
まず、課題を全員に明確にして
壁に貼りだす、というようなことは、
スーパーバイザーの中郷 という、
マリオとかゼルダのスタッフから
教わりながらやったんです。

 
坂上:
まず32コースを担当者4人に振り分けました。
ひとりずつの担当のマップがありまして
最初は全部に印がついているんです。
できあがったものから、それを取っていく。
できないものには印がずっと残るんです。
そういう表を、制作室の壁に貼りだしてあるので
まるで試験前の勉強部屋なんですよ。

 
鈴木:
印が全部取れたときは幸せだったよねえ。

 
坂上:
それから、規模はマリオ級にしよう、
ということも考えたよね。

 
鈴木:
このチームでは以前、
スーパーマリオブラザーズを
ゲームボーイカラー用に移植をしたので
じゃあ次は、マリオ規模のゲームを作ろうぜ、
ということですね。
それから、マリオで培われた遊びを
持ってきています。ワープがある、とか。
これは、操作方法が変わっているし、
上から見たビューも違うので
わかりにくいとは思いますが、そういうところが
「マリオ的」という理由ですね。

 
──なるほど。
 
鈴木:
でも、いろいろ苦労しているときに
宮本や中郷と話をしたんです。
「マップがたいへんなんです」と言ったら
広がりすぎて訳がわからなくなっているんじゃないのか、
と。でも、コースは32に絞っているから大丈夫だと言うと
「ふうむ、そんなら大丈夫だな!」
と言われたんですね。
「やっぱりそこがキーポイントだったか!」
と再認識しましたよ。でかくなりすぎていたら
収拾がつかずに終わっていたと思います。
32という数字は、最初、「少ないんじゃない?」
なんて思っていたんです。ところが、
つくってみると、これが、つくれない!

 
坂上:
全然、つくれるどころの騒ぎじゃない。

 
鈴木:
中郷は「マリオ3は90面あるんやでー」
なんて言うし(笑)。
「あと3倍くらい働いたらできるよ」って。
それはカンベンして〜、と思いながら
必死につくりましたよ。

 
谷口:
最初はみんなワクワクして始まったけれど、
後半はかなりたいへんだったよね。

 
鈴木:
といって、32面あればいい、というわけではなく、
それぞれがちゃんと面白いものが
32、集まらなければいけないわけですからね。

 

谷口:
ハードのほうも、最初、加速度センサーというものを
発見してから、一品ずつ手作りでつくるのは
ワクワクするわけです。
そして、それが、採用される。それはハッピーな
わけですよ。そうなると、あとは「ソフト次第」
と言うことになりますよね。
今回、システムやプラットフォームではなくて
アプリケーション、一個の商品なわけです。
お客さんはソフトを買ってくれはるわけや、と。
ハードを買うんやないんですね。
ですからソフトが完成してはじめて、
ハードの仕事が前に進むんです。
ハードの人間は、その間、量産するためには
どうしたらいいのかということを考える。
それはまた、ソフトのチームとはパラレルの、
別の苦労でしたね。

 
──それはとてもたいへんなことだと思うんですが。
 
谷口:
今回、ハウジングから起こしていますからね。

 
──ハウジング、とは?
 
谷口:
カートリッジのプラスチックケースです。

 

 
谷口:
これや、基板を量産設計する作業というのは
できるんですけれども、
実際に量産試作して、準備していくのは
ソフトが「これは面白い、商品になる!」
ということが認められてから、
はじめて前へ進むわけです。
でも、それに合わせていると
スケジュールに間に合わない、
ということになるんですね。
最後にソフトが認められたところから
大慌てになるんです。
そこらへんがハードのたいへんなところですね。
池田あたりがいちばん苦労したところなんですが。

 
池田:
……おカネ、出ないんですよ。

 
一同:
(爆笑)
 
池田:
わかりやすく言っちゃうと、
試作品から、商品になるくらいの小さい基板にする、
ここから先が、予算が取れないんです。
ソフトを商品にすることが決まるまで待つんです。

 
谷口:
量産するためには、金型をつくったりしなければいけない。
ハードチームがその仕事をするためには、
ソフトができなければならないんですね。

 

 
──そういうプレッシャーを感じながらの
ソフト開発だったんですね。
 
鈴木:
センサーのメーカーの人の会議に呼ばれて
「あとはソフト次第ですから」
と言われたり……。
「がんばります!」と言うしかない。

 
谷口:
メーカーさんも、チップをいくつ用意したらいいのかと
気がはやりますよね。ゲームですから数が違う。
すごく期待してくれてましてね。

 
鈴木:
そういうプレッシャーと、
宮本からの「まだまだやな」というプレッシャーと
戦いながら、つくっていったんですね。

 
──発売が決まったのはいつですか?
 
谷口:
この4月ですね。
それからが、またたいへんです。
ハードも新作やったので、テスト環境ひとつとっても
ソフトチームとハードチームが
足並み揃えてやらなあかん。
テスト用だって、量産できるわけではないですし
展示会に出展するとなったら
それなりの数を手作りでそろえなくてはいけない。
こういう「ソフトもハードも新しい」というのは
やっぱりたいへんなことが多いですね。

 
──テスト、というのも、ずっとつくってきた人や
ゲームにとても詳しい人がする以外にも、
まったく知らない人に向けて、ということも
あるわけですよね。
 
鈴木:
それも大切なんですよ。

 
中井:
それが僕の役割だったんですよ。僕の仕事は、
最終的に、製品になるときの取り扱い説明書の
チェックですとか、パッケージの文言を考えたりとか
そういうことが中心なんですけれども、
さかのぼって開発中は、
「しろうとのモニタ」という立場で参加していました。
月に一度くらいやって、「面白いと違うん?」とか
「まだもうちょっとネタ仕込めるんやないの?」
とか話をする。そうすると、また一ヶ月後まで
触らずにいるんです。
ずっと触っていると、面白さが当たり前のように
なってきてしまうんですね。
次のバージョンができるまで、知らずにおくわけです。

 
鈴木:
テレビカメラに試作機をつないだ部屋に中井を呼んで、
ひとりで遊んでもらうんです。
僕たちは3人くらいでヨコにいるんですけど
「どうか気にせず、ひとりでいるときみたいに
 遊んでください」
って、やってもらう。わからないことがあって
僕たちに「どうするの、これ?」と訊いてきても、
僕たちはいないことになっているから答えない。
つまり、どういうところでつまずくか、
どういうところで面白がるかが知りたいわけです。
そういう役回りを、中井にはしてもらったんですね。
難易度の判断に役立ちましたよ。

 
中井:
肩こりましたよ……。

 
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谷口:
まだカービィになるうんと前、
加速度センサーを採用しようとだけ決まったころ、
テレビゲームと携帯ゲームの違いみたいなところ、
コントローラの違いは、
みんなすごく意識したんですね。
携帯ゲームは、表示画面とコントローラが
一体になっている、ということに意味がある。
携帯ゲームを斜めにすると球が転がるというのと
コントローラを斜めにしたら画面で球が転がるのでは
まったく、意味が違うわけです。
そういうことを考えるときに、
中井とずいぶん議論を重ねてきたんですよ。

 
鈴木:
子供のいる社員に協力してもらったり、
土曜日に「子供モニタ」してもらったり。

 
中井:
自分たちが面白いと思ったことを
子供たちが面白いと思ってくれるかどうかというのは
実際にやってもらわないとわからないんです。
特殊なデバイスなので、
遊びかたもわからないんじゃないだろうか、とか。
取っつきやすさの度合いですね。
社内に子供のいる人に声をかけて、
集めて、ためしてみたことがあるんですよ。
そうしたら、全然大丈夫やったね。

 
鈴木:
「はね上げ」というのが、
ゲーム中の説明だけでわかるだろうか?
というのが、不安だったんです。

 
──はね上げなくてはいけない面の前に、
別画面で説明が出てきますよね。雲に乗る面ですね。
あの説明はわかりやすかったですよ。
 
鈴木:
その説明をつけてすぐに、
子供モニタをしてみたんです。
僕らからのレクチャーなしでやってもらって
10分位してから「雲に乗れた人!?」と訊いたら
ほとんど全員が手を上げたんだったよね。
あれでホッとしたんです。

 
谷口:
はね上げさせる方法を、文章で
「手前に引く」と書いたら、
平行に手前に移動させるのか、と
勘違いされたりね。

 
鈴木:
でも、改訂して、子供たちがあまりに自然に
はね上げをマスターしたのを見ていて、
「俺達は新しいゲームをつくったんだ」
って、実感したんですよ。
子供たちは本体を上に揺さぶると
ボールが跳ね上がるというのを
「あたりまえのこと」としてやっちゃったんだけど
そういうふうに思ってくれること自体が
成功だったんですよ。
もっとも、あまりゲームボーイをやったことの
ない子は、ソフトのほうに加速度センサーが
ついているとはわからずに
「ゲームボーイってこういうものなんだ」
「ゲームボーイってすげえな」
って思ったかもしれないけどね。

 

ハードとソフトが合体した
新しい商品をつくるのって
こんなにたいへんなんだ……。
コロコロカービィが、面白いはずだよー!
次回もこの続きです。お楽しみに!!
 

(c)2000 Nintendo/HAL Laboratory.Inc.

2000-10-27-FRI

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