「罪と罰」〜地球の継承者〜 〜最終ステージまで突っ走ろう!〜 「罪と罰」には、 “3つの初心者救済策”が用意されてるんです |
新シリーズ、アクションシューティングゲーム 「罪と罰 地球の継承者」についての第3回目。 いよいよ、ゲームの中身についての話です。 ゲームの初心者に遊びやすさを提供するために、 どんな工夫がされているのか? それは、マニア層のファンを見捨てることには ならないのか? ディレクター山上さん、 プロデューサー前川さんが語ります。 |
「罪と罰」〜地球の継承者〜
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山上: ここに、初期の頃に受け取った企画書を もってきたんですけどね。 前川: あいや〜、懐かしい〜(笑)。 山上: 「こういうゲームを一緒に作りませんか」という話が トレジャーさんから任天堂に来まして。 トレジャーさんはもともと「セガ」さんメインに ゲームを作られていた会社で、 周囲にいるゲームの好きの人たちから、 「トレジャー」と言えば、セガのシューティングゲームで すごい有名な会社で「セガの最後の良心」とか 言われてるらしい、という話を聞いて(笑)。 で、こういう企画書を受け取りまして……。 前川: もう黄ばんでますねぇ(笑)。 でも、改めてこの企画書を見るとわかりますが、 最初から細かい設定まで出来ていて、 その通りに完成しているという意味で、 今回は、かなり良い感じで開発が進んだわけですね。 |
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1998年8月頃に企画がスタート |
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山上: 仮称で「グラスソルジャー」という名前だったんですけど、 この時点から、ルフィアンとか、世界観の設定が きちっとでき上がってたんですよね。 ゲームレイアウトや、3Dスティックの使い方も きちっとでき上がってるんですよ。 で、僕の頭の中でいろいろ想像すると、 「今までのゲームにないアクションだなぁ!」と。 「かなりおもしろいぞ、これは!」と。 ぜひ僕が担当でやってみたいということで、 スタートしたのが1998年の8月頃ですね。 で、それから最初の画面を見せてもらうまでが かなり時間がありまして、 1999年に入ってからでしたっけ? 前川: 入ってからですね。 山上: かなり高度なことをやろうとしてるゲームでしたので、 最初の作りにかなり時間かかりまして。 前川: ニンテンドウ64というハード機を しゃぶりつくしたいという気持ちがあって、 「64でここまでやれるんだ、というゲームを出そう!」 ってことで、システム作りからガリガリやり直しました。 ですから、最初の画面が出るまで、時間かかりました。 山上: で、でき上がったものをポンと見たときの僕の第一印象が 「こーれは任天堂の世界とちがいすぎるぞぉ……」と、 「これは、えらいものを引き受けたんじゃ ないだろうか……」と(笑)。 最初の「新宿駅周辺」のシーンと、 登場人物のサキが巨大化して、 敵側のカチュアと戦うシーンが出てきて、 そのあたりを見て、 「こーれは、倫理的に任天堂は出すのかなぁ……」と。 前川: わっはっは(笑)。 山上: つまり、ゲームの中で、具体的に人が斬り合ったりとか、 バンバン撃ち合ったりというのが、 ……とがった印象に見えたんですよね。 「ちょっとこれは、どうしたものか……」 と、思ったんだけれども、実際にゲームをやると、 これがすごく新鮮だったんですよ! その時点では難易度はもう強烈に難しくて、 とてもじゃないけどクリアできないんですけど、 「これは絶対おもしろくなるぞ」と思って(笑)。 まず、難易度のことは置いておいて、 もう少し作ってもらわないと次の話もできない。 ということで、とりあえず制作を進めてもらいました。 1999年は各ステージを順番に作ってもらってたんです。 で、いろいろなステージができ上がったんですけど、 やはり思ったより制作に手間がかかるということで、 当初の予定より、ステージの数も少なくなってきまして トレジャーさんのディレクターからも、 「ゲームのボリュームはこれで大丈夫だろうか?」 という不安があると言われて……。 つまり、1つのステージあたりのクリア時間を検討すると、 このままではステージ数が少なすぎると。 制作期間を延ばしてでも ステージを増やしてもらわないと困る、ということで。 当初は、5ステージ作りたいと言っていたのを 途中で1ステージにするという話になって(笑)、 それはさすがに少なすぎるということで、 最終的に、3つのステージに決まったんですね。 で、1999年の11月くらいには、ほぼ各ステージが でき上がってきたわけですね。 だいたいゲーム全体ができ上がった……、 ここから先が大変なんですよ(笑)。 ──: 2つの会社の違うカラーを、どう融合させるか、 という仕事が始まるわけですね。 山上: まず“難易度”のこと。 ゲームの導入部に“練習ステージ”がいるのか、 いらないのか、という話。 “ストーリー”の難解さについての僕の意見。 この3つの点について、長い、長い、 打ち合わせと説得の時間が(笑)。 ──: その3つの点というのが、 ゲーム初心者からすると、楽しさを感じた部分でしたよ。 “練習ステージ”からスムースにゲームに入っていける、 先の“ストーリー”が知りたくなるから、 ゲームを続けたくなる。 初心者が熱くなれる“難易度”だから、 3時間くらいで、後半のステージまで進めた、という。 山上: でしょう(笑)。 で、まず僕たちがトレジャーさんに 伝えなければならないのは、 「初めて遊ぶ人の気持ちを忘れてはいけないですよ」 ということでした。 マニア層が繰り返し遊んでくれるのも大事だけれど、 初めてゲームを買った人を裏切らなければ、 必ずそのお客さんはファンになってくれるから、と。 その人を厚く守ってあげるために、 僕はこの3つの部分については譲れない、 ということでね、ずーっと打ち合わせでした。 前川: 「罪と罰」はコントローラの操作がやや複雑というか、 初めてゲームをやる人にとっては ちょっと難しいかな、という部分があるので、 その3つの要素は、いつも以上に 慎重に考えなきゃならないことでしたよね。 ──: その3つの要素の話が、そのまま「罪と罰」の おもしろい部分を伝えることになるかもしれませんね。 まず、コントローラの操作から言うと、 僕が初めてやってみて思ったのは、 すぐにゲームを始めたいと思うんですが、 とにかく操作する自信がないんですよ、初心者の僕は。 まともに、扱えないんじゃないか、と。 そう思ったので、まず「トレーニングモード」に 行ってみたんですよ。 で、実際に操作しながら、トレーニングできるので、 コントローラの操作に指が慣れてきたんですよ。 クルマの教習所みたいに、運転しながらわかる感じで。 で、「トレーニングモード」が終わると、 自分はもういっぱしのソルジャーになったような 気分になってるんですよ(笑)。 で、すぐに草原を進むという最初のステージ (「ステージ0-0」)が始まるんですけど、 そのステージはクリアできるんですよ。 そこで思ったのは、 「オレ、イケてるよ!」と(笑)。 武久: (笑)うまい具合に、いい意味で勘違いできるんです。 |
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「ステージ0-0」が実は練習モードだった…… |
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山上: でね、実は「罪と罰」には、 “3つの初心者救済策”が用意されてるんですよ。 1つめが今言っていた「トレーニングモード」ですね。 2つめが、「タイトルデモ」です。それを観ていると、 「ステージ1-1」を例にしてゲームの進め方を すべて説明してあるんですね。 3つめが、「ステージ0-0(草原)」なんですよ。 この3つを入れることは、 任天堂として絶対に譲れない部分でした。 一度に言うと現場のスタッフを混乱させてしまうので、 まず最初に「練習モード」を追加してほしい、と。 その「練習モード」とは、 “ゲームに自然に入り込める形での練習モードがほしい” という依頼をしてるんですよね。 それがつまり、「ステージ0-0」のことなんですよ。 ──: え!? 「ステージ0-0」って実は練習モード? 山上: そうなんです。 前川: もともとなかったステージを後から追加したから、 「ステージ0-0」という名前がついたんですよ。 もともと「ステージ1-1」から始まってたんで(笑)。 山上: で、「ステージ0-0」を追加したこともあって、 ストーリーに整合性をもたせるために 「ステージ0-0」を“夢の中のシーン”に してくださったんですよ。 これは僕らが提案してないですね。 トレジャーさんがきちっと考えて 作ってくださってる部分なんです。 ──: そうか! 「ステージ0-0」をクリアした後で、 夢から醒めるストーリーになってましたよ。 で、「ステージ1-1」へ進む……。 山上: で、私は、最初のステージは絶対に、 練習とは気づかせないような練習ステージに してもらわないと困る、と断言してるんですよ。 これは、初めてゲームをやる人は、 絶対にいきなり操作ができないから。 そこを救済しないと、その時点でお客さんは 逃げていきますよ、と。 これもずいぶん話し合いをしたなかで納得していただいて まず「ステージ0-0」を作ってもらいました。 これが1つ目の救済策です。 次に、それでも対応できない人がいるから、 「トレーニングモード」を作ってください、と。 初めてのお客さんで、すぐゲームを始めた人も、 スタートして「ステージ0-0」をクリアするだろう、と。 でも、それでも操作ができなくて 「ステージ0-0」で行き詰まったときに、 ハッと我に返って、 「トレーニングモードがあるわ!」と、 そこで操作に慣れてくれる。 そうしたら、救済できるではないか、と。 「トレーニングモード」がなかったら、 64の電源を切るかもしれないんですよ。 で、これで救済策が2つになって、 かなりの人を救済できます。 3つめは、 任天堂のゲームでは、気をつけていることがあって、 「取扱説明書」を読まなくても、 ゲームにすんなり入り込めるような配慮をする、 という工夫がされてるんですね。 その一環として、「タイトルデモ」の中に、 ゲームの説明を入れるということを 多くのゲームでやっているんですよ。 で、当然「罪と罰」でもそれはやりましょうということを 説得して入れていただいたわけですね。 で、トレジャーさんの判断として“新宿のステージ”で、 つまり「ステージ1」を使って、 「タイトルデモ」を作ってくれました。 それを観ている初心者のお客さんは、 「トレーニングモード」で操作に慣れて、 「ステージ0-0」がクリアできて、 本格的にゲームが始まる「ステージ1-1」も、 すでに「タイトルデモ」でその場面を見ているので、 初めてゲームをやる人でも、 「ステージ1-1」までは、スーーーッと行けるんですよ。 その頃には、もう「罪と罰」にかなり慣れていて、 ゲームが楽しいと思えるテンポで先に進めるわけですね。 ──: は〜、すごい仕組みですねぇ。 |
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「タイトルデモ」が「ステージ1」のヒントに。 ステージ1の舞台は新宿駅 |
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山上: |
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画面の上にスコア表示を残したのは、 スコアの追求をマニア層に楽しんでもらうため |
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山上: だから、爽快感を追求するという部分だけで 「罪と罰」を見ていくと、 スコア表示がなんのためにあるのかわからないんですね。 「スコア表示なんていらないじゃん」と。 ──: 言われて初めて気づきました。 初心者の僕は“どこまで進んだか”が楽しくて、 気持ちよかったんですよ、バシバシ先に進めますから。 先に進むのが楽しいし、気持ちいいという初心者には、 敷居を低くして、「罪と罰」の世界に入りやすくして。 同時に、マニア層の人には、 スコアをストイックに追求できる ようにしてあるんですね。 (つづく) |
ゲームの初心者を、そうとは気づかせずに 救済する3つの工夫。聞いてて、驚きました! 「言われてみれば、そうだった」ということばかり。 単にゲームを簡単にするのではなく、 いかに遊びやすくするか、という話はこの後も続きます。 次回は、やる人を先に進みたくさせる、 ストーリーについて話を聞いています。 |
2000-12-13