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01 (第19回の3)
どうぶつの森 デザインチーム座談会
その3(最終回)
一日中釣りをしても
手紙ばかり書いても
金もうけに走ってもよし。
人生と同じ。
好きなことをやればいいんです。
 
イメージ 4月14日発売のニンテンドウ64ソフト
「どうぶつの森」。
発売したてのホヤホヤですが、
いちはやく情報をお届けします!
今回は、ゲームのデザインに携わったメンバーのうち
7名の方々に集まっていただき、
お話を聞いています。
このゲームには、ゴールはありません。
倒さなきゃいけない相手もいません。
単にお話をトレースするだけの
ゲームではないのです。
では、いったい何をすればいいのでしょう!?
学校の帰りに道草ばかりしていた、
最近、家庭内の会話が減ってきた、
そんなヒトに、このゲームはぴったりです。
 
 
 
イメージ ■座談会出席者
 
■池側紀子 Noriko IKEGAWA
キャラクターデザイン担当
「キャラクター全般のモデルを作成しました」

 
■小西伸子 Shinko KONISHI
フィールドデザイン担当
「フィールド(地形)のデザインや、
 建物の内装を主にやっていました」

 
■住本 礼 Aya SUMIMOTO
インテリアデザイン担当
「プレイヤーがゲームのなかで
 集める家具を作りました」

 
■飯田 季 Toki IIDA
スクリーンデザイン担当
「アイテム画面や、登場人物の会話する
 スクリーンなどの、
 立体物ではないウィンドウ関係を担当しました」

 
■菅原たえ子 Taeko SUGAWARA
デザインアシスタント
「主に服のテクスチュアや傘、
 化石などを作らせてもらいました」

 
■林三千穂 Michiho HAYASHI
デザインアシスタント
「じゅうたんと壁紙、服のテクスチュアの
 デザインを担当しました」

 
■田中しのぶ Shinobu TANAKA
イベントBGMコンポーザー
「ゲームのなかで起こる
 イベントのBGMを作らせていただきました」

 
 
●どうぶつの森ってどんなゲーム?
プレイヤーは、これから一人暮らしを始めようとする主人公。
列車に乗って、引っ越しをするところです。
でも、住むところも決まっていない……。
列車のなかの「みしらぬネコ」さんや、
村の「たぬきち」くんたちが世話をやいてくれて、
なんとか引っ越し第一日目がスタートします。
さーて、これから、どんな暮らしが待っているのか!? 
どうぶつキャラクターたちと積極的にかかわることで、
いろんなゲームや、イベントが起こります。
実際の日付・時間どおりに ロムのなかも時間が
経過していきますよ!

 
 
イメージ ──「どうぶつの森」は、
おしまいのないゲームなんですか。

池側:
ないです。
ずっとずっと、少しずつ遊んでほしいという
タイプのゲームです。


飯田:
確かに一日に何時間もやりこむような
ゲームではないですね。
ちょっと時間ができたときに
ちょこっと電源入れて
ちょこっと楽しむといいかも。
しばらくやってない間に
こんなに村が荒れ果てた! とか(笑)。
あんまり「ゲームだゲームだ」と思わないで
気楽に村に遊びに行ったりしてほしいですね。


池側:
わたし自身、何のゲームをしても、
いつも先を急いでしまう。最短ルートを探って(笑)。
でも、散歩してるみたいなかんじで遊んだら、
すごくいい。すごく楽しい。


菅原:
これまでのゲームは
「目的があって前に進むもの」だったと思います。
「どうぶつの森」には一応
目的を感じることのできる素材が
入ってはいるのですが
あくまでもそれはひとつの遊びかたでしかないんです。


飯田:
いちばん最初は、
どうぶつたちとのやりとりを
ただ楽しむだけでもいいのかも。
そうやって知らず知らずのうちに
「村」という自分の世界が作れて
自分なりにゲームを味わえるようになります。
でも、自分とはまた違った感覚で
このゲームを受けとめて遊んでいる人が
いるかもしれない。

 
イメージ

小西:
それを確認できるように
このゲームはコントローラパックを使って
ほかの人の村に遊びに行けるようになっています。
つまり、まったく別の世界を作って遊んでいる人の
場所そのものを訪れることができるということです。


池側:
別の人の「遊びかた」を見ることができます。
その人が現実に住んでいる部屋を
覗いているような感覚で。


──「遊びかた」を遊ぶんですね。

飯田:
ふだんずっと一緒に仕事をしているスタッフであっても
全く知らなかった面を見せつけられたりします。
あるスタッフの村に遊びに行ったら
まず、村の名前が変なんですよ。
“むっしゅむらむら”とか
“かめらのきたむら”とか(笑)。
「うわー、こんなんつけてるー」と、
なんか“のぞき”をしている人は
こんな感じかと……。


住本:
音楽も、自分で変えられる部分があるのですが、
それがまた人それぞれでおもしろい。


池側:
ほかの人の村に行って駅に降り立ったら、
その人のつくった音楽が流れるんですけど
突然、「やだねったらやだね」の
メロディーが(笑)。


菅原:
人格のなかの見えない部分が、
村じゅうに点在しているんですよ。


飯田:
部屋の趣味や
アイテムの置き方などにも
その人柄が現れるというか。
道ばたに、ものをぼんぼん捨てている人がいたり(笑)。
村が草ボウボウの人もいれば
きちんと花を植えている人もいる。
このゲームには遊ぶ素材がいっぱい入っていますから
それをどう扱っているかで
その人の深い部分が自然と見えてきちゃう。

 

──「案の定」だったり「意外」だったり。

池側:
現実の世界でも
そこからまた話が広がっていくんです。
「あんた、村と同じで机の上汚いなぁ!」
とか言って。


小西:
同じ村のなかでも
何人かで住むと楽しい。
遊んでいった人が
自分ではやらないようなことをしてたりして、
以外にいろんな変化があっていいですね。
家族で楽しむのもいいし、
1日遊んだら友達に託してみる。


──交換日記みたい(笑)。

田中:
プレゼントをもらったり、
自分の家の近くに何かが埋まっていたり。
隠しておいた宝物を掘り起こされて
売り払われていたりするんです(笑)。

菅原:
ネットのゲームと違うのは、
そこに匿名性がないということ。
お互い顔を知っているのに、
あえて村という世界で
コミュニケーションする。


林:
それがほんとに交換日記ぽくて、楽しい。
現実の世界で話す会話と
村の中で書く手紙はどこかしら違う人が多いし。


飯田:
普段はその人に言わないようなことを
掲示板に書いてみたり。
昨日見たシュールな夢とか(笑)。
秘密ごとや、表に出していない自分の隠れた面を書いて、
それを読んでもらいたい、という
心理が生まれてくるんです、なぜか。
自分でも、おもしろい現象でした。

池側:
家族で遊ぶ場合は、掲示板に
「今日はバーベキューするから手伝ってね」
など、自分たちの現実をとり入れて遊んでいくと、
コミュニケーションツールになる。
普通に伝えるのとは違って、
やはりどこか大きなイベントのようで
おもしろい。

 
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──コミュニケーションのおもしろさ、ですね。
それは、ひとりで遊ぶ場合には
あまり味わえないことですね。

飯田:
でも、ひとりで遊ぶと
それはそれで奥深いものがありますよ。
ゲームのなかで、自分が浮き彫りになるんです。
自分でも見えていなかったもうひとりの自分が
そこにいたりする。
家具の趣味などにしても
「わたしって案外和風のもの好きだったんだ」とか。


池側:
自分を再確認することもあります。
現実の世界で部屋が散らかっている人は
やっぱり村も汚かった、とか。
小さいころ図鑑ばかり見ていた人は
やっぱり魚や昆虫をコレクションしてしまっていたり。


──その人なりの特徴が出るんですね。
ところで、「どうぶつの森」は
キャラクターだけでなく、フィールド、音楽、動き、
セリフ、家具、すべてに細かいこだわりがありますね。

池側:
わたしたちの仕事は「遊んでもらうためのネタづくり」
だったわけですけれども
「雪の日に歩いたらさくさく音がして
足跡が残るのっていいよね」とか
「秋になったら秋の虫が飛ぶね。
ああ、そういえばオニヤンマは
捕まえられないくらいのスピードで飛ぶんだよね」とか
企画の段階で、みんなで話をしながら
自分たちが子どものころに経験した楽しい遊びの要素を
どんどん入れていきました。
みんなそこにとてもこだわっていた。

 
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飯田:
ごく普通のゲームなんかの中で
そのゲームの世界だけにある架空の素材や
エピソードが盛りこまれていると
お父さんは子供の話を聞いても
チンプンカンプンだったりしますけど、
それが、昔やったことがある虫とりだったり
何かのコレクションだったりすると
お父さんはお父さんで
子どものころの思い出や思い入れがある。


池側:
現実とかけ離れたものにしたくない。
大人も子どもも共通の心のなかにあるもの、
それを素材にしたかった。
例えば、カブト虫は早朝しかいないんですよ。
お母さんは朝早く起きて
カブト虫を捕まえることができますが
お父さんはできない(笑)。
どうやって捕ったの?というように
楽しんでもらえるような
しかけや素材がたくさんある。


飯田
大人だましでも、子供だましでもない。
そういうところですごくこだわりがあった。


──セリフもそうですよね。
どうぶつたちの性格にも
ちゃんと幅があって、奥深い。

池側:
人間にもいろいろいるように、
どうぶつにもいろいろいるんです(笑)。
「どうぶつの森」はパラダイス的なものではなく、
もうひとつのややリアルな世界。
ときどき辛口なことを言われたりしますよ。


──主人公の動きがまたかわいくて。
椅子に座ったり、穴掘ったり……。

住本:
服を着替えるときに、
クルッと回ったりする(笑)。


飯田:
「どんな動作にしようか……」と
煮詰まって考えたのではなく、
みんなで話をしながら
楽しんで細部までこだわっていきました。


イメージ 池側:
「そういえばスコップで穴を埋めたあとは
トントンって叩かない?」
という意見が出れば
全員がウンウンと頷いている。
頷けば頷くだけリアリティが増すというか(笑)。


住本:
フィールドの色にもこだわりがあります。
天気や時間によって色合いが変わるし、
季節も微妙に移り変わっていきますよ。
秋なんかは、ただ茶色なだけじゃなくて、
色味が複雑なんですよ。

 

──季節によって変化していくものは
ほかにもありますか。

住本:
タヌキチのお店にある商品が変わったりします。
クリスマスの時期はツリーがあったり、
ひな人形や五月人形が売っていたり。
季節のイベントもあるし、
どうぶつたちのセリフも違います。


 
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飯田:
主人公の顔も、じつはたくさんあるんですよ。
ゲームをするときは大抵ひとりだから、
そのことに気づく人はあまりいないかもしれない。
あるとき、ふと
「あ、おねえちゃんと私のキャラクターの顔が違う」
「おねえちゃんの方がカワイイ!」
なんてことになる(笑)。


小西:
音楽も豊富です。
BGMは1時間ごとに変わりますし。
部屋にはラジカセやコンポを置くことができるんですが、
いいコンポだったらいい音がするし
ラジカセだったらそれなりの音になりますよ(笑)。
それに、家具はじつにこだわったつくりです。
扉の開きかたひとつにしても
さまざまな資料や実物を
充分に観察してデザインしました。


住本:
家具には赤、黄、緑などの色があるんですが、
配置する位置などによって、運勢が変わったりするんです。
招き猫などのラッキーな家具もあって、
部屋に置いたら金運が上がったりとか。
どうぶつたちの部屋のレイアウトはみんなで
それぞれのキャラクターを考えて作りました。
それぞれテーマが違うので、ぜひ部屋に入って
キャラクターの性格を想像してください。
あっ、ラジカセに触ったりしたら
音楽が止まるんですよ。


──あ、止まった(笑)。

住本:
ピアノをポンって触ったら、(ピアノの音)、ね?
遊ぶ人が何をやってもいい。
釣りしてもいいいし、穴を掘っても
木を倒してもいいし、
そのうち蜂が出てきて刺されたりしますけど(笑)。


──危ない目にも会うんだ(笑)。

住本:
突然何が起こるかわからない。
海岸沿いを歩いてたら誰かが打ち上げられてたり、
何かが落ちていたり、出現したりとか。


イメージ ──こだわってつくられたいろんなものが
いろんなところにこめられている。

飯田:
遊びかたも
それだけ広がっていく、ということです。


──単に伝言板として遊んだっていいわけですね。
極端に言えば。

池側:
そうですね。
ゲームのなかの世界で完結するのではなく
「どうぶつの森」から別の何かが広がっていく。
このゲームは、道具なんですよ。
それも拡散型の、いろいろな使える要素が
たくさんあるので、それを使ってどう遊ぶかは、
遊ぶ人しだいです。


菅原:
その人なりの遊びかたを
どんどん生み出してほしいですね。

 
 
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ゲームというのは、
はっきりゴールが決められていて、
それをクリアするもんだという
既成観念があったりする。
「どうぶつの森」は、それを打ち破る、
しかも顔見知りによる
コミュニケーションゲームなんですね。
ちょっと村をのぞいてみようかな、というかんじで
ずっと楽しみたいですね。
 
  2001-05-31
 
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