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(第25回の3
ファイアーエムブレム〜封印の剣〜
そのCMを誰が作ったか?
倉恒良彰インタビュー その3

“母ちゃん達には内緒だぞ!”
    

 
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屈強な米国海兵隊が夏の演習地で汗びっしょりになって
トレーニングをしている。
ランニング、腕立て伏せ、スクワット、再びランニング。
こんな歌を歌い(歌わせられ?)ながら。
 
♪ファミコンウォーズが出るぞ
 (ファミコンウォーズが出るぞ)
 こいつはどえらいシミュレーション
 (こいつはどえらいシミュレーション)
 のめりこめる!(のめりこめる!)
 のめりこめる!(のめりこめる!)
 母ちゃん達には内緒だぞ!
 (母ちゃん達には内緒だぞ!)
 のめりこめる!(のめりこめる!)
 のめりこめる!(のめりこめる!)♪
 
このCM、歌詞を見ただけで
メロディを思い出す方も多いことと思います。
1988年、ファミコンソフトで発売された、
任天堂初の本格的現代戦シミュレーションゲーム
「ファミコンウォーズ」のCMです。
 
いまは(もちろん)オンエアされていないCMですが
もう一度見たい、まだ見たことがない、
という方のために、今回も、データを御用意しました。
こちらをクリックしてご覧ください。
(ウインドウズメディアプレイヤーが必要です。
 インストールの方法については、こちらをご覧ください)

 
そして今回のインタビューには、
さらに2作のCMのお話が入っていますので、
そちらもご覧ください。
スチャダラパーが音楽を担当した
スーパーファミコンソフト「ゼルダの伝説」と、
科学ドラマ仕立てになった「スーパーメトロイド」です。
「ゼルダの伝説」はこちら
「スーパーメトロイド」はこちらです。
 
これらのCMの
クリエイティブ・ディレクターをつとめたのが倉恒良彰さん。
「ファイアーエムブレム」でオペラを、
「ゼルダの伝説」でスチャダラパーを起用し、
そして今回のGBAソフト
「ファイアーエムブレム〜封印の剣」で
再びオペラをCMに使った人物。
いままでは裏方に徹し、なかなかお話を聞く機会がなかったのを、
ほぼ日がムリヤリ引っ張り出しました。
「倉恒流・任天堂CMのつくりかた」
今回も、どうぞ。
 

 


イメージ ●プロフィール
■倉恒良彰【くらつね・よしあき】
米国海兵隊の演習風景をパロディにした
「ファミコンウォーズ」のCMから、
スチャダラパーを起用した「ゼルダの伝説」など
印象に残る任天堂の多くの広告を制作してきた
クリエイティブ・ディレクター。現・任天堂企画部所属。
なかなか表に出てこなかった、謎の人物でもある。
   
ロゴ ■製品と広告のタッグ。
 
「ファミコンウォーズ」は、
ゲームのCMに“歌”を取り込んだ、僕の初めての作品です。
“歌を基本にゲームの世界観をあらわした”
というと堅苦しいかもしれませんが、
このCMがその後のファイアーエムブレム、
ゼルダの伝説につながっていくんです。
 
企業にとってCMって何だろう、と考えると
僕はそれは製品と同じくらい大事な財産だと思ってます。
こういうことを言うと
制作の人たちに怒られちゃいそうだけど
僕は製品と広告、両方とも素晴しいといわれ、
みんなの心に残ったものが“名作”になりうるんだと
思っているんです。僕は、いつもそれを目指したいと思って
CMをつくっています。
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「ファミコンウォーズ」のCM、当初は、
“あのCMは異端だ”なんて言われたんですよ。
ゲームのCMとしては、たしかに例がないものでしたから。
ゲーム画面のないCMの第一号じゃなかったかな。
シミュレーションゲームは面白さを伝えるのがむずかしい。
あの頃のゲームは2Dで、平面的なキャラがマップ上を動きます。
ですから、プレイしていても見えているのは見たままの世界です。
しかし、ゲームの作者やプレイヤーには
イマジネーションが膨らんでいて、
たとえば「歩兵が戦車にバスーカを撃つ」ゲーム上のボタン操作が
頭の中の想像世界では戦争映画のように浮かび上がる。
そんな2Dゲームならではのプレイヤーの豊かなイメジネーションを
ゲーム世界の実写化を行うことにより、
ゲームと世界観の一体化を図ることで
ゲームに期待感が湧き、プレイにも熱が入る。
結果「のめりこめる」「はまる」となるのでした。
もちろん、ただ実写化するだけではなく
広告には当然その面白さを伝えようとする企画が必要で、
それが訓練のモチーフであり、
訓練歌にのって宣伝することだったのです。
ドンパチやるだけが戦争ゲームのイメージじゃない所が
このCMのよさでもあります。
今、この部分は3Dになって
ゲームムービーがその役割を果たす目的だと思いますが、
広告表現で機能していたものとは
根本的に違っていると僕は思っています。
しかし、こんな考えとは別に周りでは
「別の理由」で出来たCMとも言われました。
このCM企画にはディレクターやアートディレクターなども
企画参画しているのですが
なぜか、倉恒色を強く受け取られたようです。
というのも、僕、実は自衛隊出身なものですから・・・(笑)。

 
ロケはアメリカに行き、
米軍の演習地を借りて行いました。
出演は全員本物の米国海兵隊員です。
本物の軍隊で表現したく、ダメもとでお願いしてみました。
軍隊を撮影に貸してくれると聞いた時は耳を疑いましたよ。
広報ととらえられているそうです。日本の自衛隊ではありえません。
オンエアされたCMは、日本人のアフレコになりましたが
実は現場では、彼らに歌唱指導をして、
「ふぁみこんうぉーずガで〜るゾ〜♪」
と歌ってもらったんです。これ大変だったですよ。
日本語の唄指導を自分がやったんですけど、相手が相手なんで
そこ違うとか言って指導すると、なんか恐い。
ちらっと腕をみると普通の人のふとももくらい太い。
でも、やれっと・・・・(恐)
それに字幕をつけてオンエアする、
という映画的表現が目論見だったのですが
やっぱりわかりにくいということで、
最終的に入れ替えました。
いまでも元のバージョンが好きなんやけど。
それから、発売前のCMは
「ファミコンウォーズが“出るぞ”」なんですが
発売日以降は
「ファミコンウォーズが“出たぞ”」になっています。

 

イメージ ■リンクは女の子。
 
歌もの三部作は、その後、前にお話した
「ファイアーエムブレム」の第一作(1990年)を経て
スチャダラパーに音楽をお願いした
1991年の「ゼルダの伝説」へとつながります。
ちょっと見てみましょうか(ビデオを見る)。
 
「出る出る ゼルダの伝説
 出る出る出る出るついに出る
 ゴージャス! 今度の冒険
 リアル! 君もすぐに体験
 はっと息のむ謎解きアクション
 なるほど! スーパーファミコン
 あぶない! 出た!
 行け! リンク!
 しらずしらずの真剣勝負
 今宵もゼルダは最高潮
 スーパーファミコン ゼルダの伝説
 出る出る出る出るついに出る」
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リンクが女の子なのわかりますか?
オーディションで探した高校生の女の子なんです。
ゼルダの伝説の主人公であるリンクは男の子なんですが
実写にすることを考えると、本物の男の子より
ボーイッシュな女の子のほうがよかったんです。
最終オーディションに残ったのが、この子と、
当時はまだ無名だった現・TOKIOの
長瀬智也くんだったんですよ。
リンク役の彼女は結局プロにはなりませんでしたが、
このCMがオンエアされた当時は
問い合わせが殺到しかなりの人気でした。
 
音楽はスチャダラパーに頼みました。
キーワードは僕から伝えたけれど、
基本的に「おまかせ」で作ってもらった。
彼ら、任天堂ファンでもあったので、
とてもスムーズに行ったのを憶えてます。
ダンスとラップでゲームのCMをつくることは
表現の手法なのですが、
基本的には前段でお話した制作のコンセプトを踏襲しています。
「ゼルダの伝説」を実写化することも
当時は型破りだったと思います。
このような広告表現は、これらのゲームソフトが
大人も楽しめるすばらしいソフトであったからこそ
できたことだと思っています。
やはり、製品に個性があると広告も個性的になりますね。
基本は製品にありますから。

 
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■火が使えない理由とは。
 
「ファミコンウォーズ」
「ファイアーエムブレム」
「ゼルダの伝説」で“歌もの三部作”になるんですが
もちろんそのほかにもいろんなCMをつくりました。
そのなかに「スーパーメトロイド」という
ゲームのCMがあります。
これ今見るとなんですが、
当時としてはかなりの労力がかかっていますね。
手法も様々で特撮、CG、人形アニメ、セルアニメ、多重合成等、
今の技術なら楽勝なこともたくさんありますね。

このCMも……うーん、じつは今回のGBAソフト
「ファイアーエムブレム」につながるんです。
どうつながるかと言うと、今回のCM
(註:
こちらでご覧いただけます)
で、火を使っていますよね。
あれ、実は、合成なんです。

本当は本物の火矢を撃ちたかったんですが。
映画グラディエーターの火矢も合成と実写らしくて
説得されました。

 
それは技術が進歩した、ということでもあるんですが
じつは「倉恒には火を使わすな」という
お達しが出てまして(笑)。
「スーパーメトロイド」のCMは、
実写とコンピュータグラフィクス、アニメーションなど、
いろんな技術を総動員しているんですが、
爆発炎上のシーンがありますよね。
火花が散って煙が出ているところです。
そこに敵キャラ、リドリーの影がありますね。
ベニヤ板製なのですが、
それに火が移ってボヤを出したんですね……(苦笑)。
その、現場の責任者は僕だった訳で……
それ以来、僕は火を使っちゃいけないと
いうことになりました。そんな理由もあって
GBA版の「ファイアーエムブレム」のCMは
火の部分が合成だったんですよ。

 

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さて、GBA版の「ファイアーエムブレム」のCMが
どんなふうに作られていったのかは、
二週先のこのページで、お届けすることにします。
次回は開発者インタビューの第二回目ですよ。
お楽しみに!
 
  2002-03-29
 
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