宮本:
そうそう。
みんなね、結果的には
「自分自身、よくやった」と思えると
思いますよ。
それはすごく大事なことでね。
どこかから外人部隊がやってきて、
それまでのデータとか資料を
よそへ持っていって、よそで仕上げた、
っていうんじゃなくて、
結局は最後まで、自分たちの手で固めて
完成できたのでね。
かなり理想に近いかたちで終われたと
思うんですよ。
ぼくは、やっぱりどうあってもいいから
完成して欲しかったんですよ。
荒削りでもいいから。
完成しないかもわからないという状態が
長かっただけにね。
僕からチームには、これといって何か、
具体的なサポートが出来たわけじゃ
ないんで、僕らに出来ることっていうのは
唯一、「完成する手応えというものを
見せてあげたい、味わわせてあげたい」と
いうことで、それ以外は出来ないんですよ。
だから、ほんと、完成してほしかった。
「ほんとにみんな、よくがんばって
くれたな」と思いました。
岩田:
宮本さんが「完成してほしかった」と
おっしゃるのは、よくわかります。
実は任天堂のソフトのなかにも、
日の目をみることの出来なかったソフトが
ないわけじゃないんですよね。
このソフトが、そのなかのひとつになって
しまっても、何ら不思議はない状況が
幾度となくあったわけですから。
ただ、このソフトが、
そうじゃない終わり方をすることだけが、
これに参画した人たちが
参画した時間を徒労に終わらせない、
唯一の手段でしょう。
いや、もちろん、ほんとの意味では
徒労にはならないんだけど。
それはその、ある経験値は得られた
わけだからね。
でも、同じ3年半を費やしても、
結果として完成させるかさせないかでは、
得られるものがまったく違うはずなんで。
宮本:
やっぱり、商品にして、売って、売れて、
売れることで癒される傷って、
あるじゃないですか。ね?
僕は、ゲームをプロデュースするときに、
自分でやってる部分に関して言えば、
けっこう厳しいことを言ったりってことが
あるんですよ。
でもね、結果として売って、それによって
みんなが満足してる、というのを
今までに何度も経験してるんです。
開発期間中はすごくいい人なんだけれども、
結果の出ない人、というのには、
僕はなりたくないんです。
開発中はいい人でなくても、
発売後「売る」ことに責任を持ちたいし、
その結果によって、皆が報われることが
大事です。
ほんまにそうや、と思ってますよ。
「次、やれる」っていう原点も、
そこにあるんで。
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