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ドルフィンというハードは、やっぱりパワーがあるので、
実験にかなり時間がかかるんですね。
でも、そう言うとね、「作るのが難しいんでしょ」って
パッと切りかえされるんだけど、
作るのがすごく難しい、というわけやないの。
そやけど、やっぱり先端のものなんで、
どんな不思議なことが出来るかはまだわからへんの。
それを今、やってます。
当然、ご存じのように、
まだCPUが出来てないものなんで、
それがちゃんと完全に1枚のボードになって動くまでは、
最終のデザインは出来ひん、というのが
この世界の常識やから。
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もうちょっと、お話ししましょか。
例えば、今までのゲームで、ポリゴンという板がね、
あ、これはヒントになってしまうかなぁ、
あぁまずい。
いや、まずくはないか。
ポリゴンという板が、今までのボードでは
例えば3000個とか、5000個、動くよね。
それって、全部を1面ずつバラバラにして、
平面に敷き詰めても、波1枚にしかならないんですね。
そやけど、今、例えば、デジカメとかでも、
250万ピクセルとかってあるよね。
何十万、何百万ピクセルって単位になってくると、
1枚の絵になるわけですよね。
ということは、別に3Dを描くことだけじゃなくて、
描画能力としてみたときに、
そんだけの1個1個の点を
自由に描きかえるという能力が、
基本的にはあるわけなんで、
例えば、250万個あるドットを、
それぞれ1点ずつバラバラに動かせて、
それぞれバラバラに色がコントロールできて、
となると、今まで絵を描いていた道具では
描けなかった絵が、描けるでしょ。
いや、実際には、
こんなことやってるわけやないんやけどね(笑)。
だから、そのものが何を生むかわからへんから
面白いんですよ、おもちゃって。
で、それをしたいのね。それを見たい。
それを見るだけで「え?」って思うことを。
少なくとも、今までのテレビの放送では
見たことがないものだし、
ビデオゲームとしても、
そんな画面、今まで見たことがない、
という絵が動いてないと、
もう、ひとは寄ってこないと思うから(笑)。
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だから、64で3Dになったマリオが、
今度はすごいきれいになって動いてる、っていうのが、
今回、ぼくらが作らなくちゃいけない「最低の保険」なの。
この「スーパーマリオ128」ではね。
けど、出来ればもっとね、
本来の「スーパーマリオ128」というべきものは、
面白いおもちゃとして、
「そのハードを買う価値がある」というものに
なってほしい。それがすべてなんですよ。
だったら、それをやろうよ、ということです。
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そんで、そのものすごい高性能なハードがあるときに、
それを君ならどう使う?ということが、
プランナーの、プランナー冥利の部分なんだよね。
そこをちゃんとやっておかないと、
ほんとの制作部隊だけになるでしょ?
『スーパーマリオBros.』を上位機種へ移植する、
みたいな作業にとどまってしまうよね。
だからぼくらは、「移植」という仕事を、
出来るだけ社内ではやらないようにしておこうと思って、
ずっとやってきたんで。
ムービーっていうものに関しても、
社内の開発スタッフがムービーを作るということは、
「インタラクティヴなゲームを作る」という意味から
みれば本業じゃないし、っていうかそれは、
「面白いおもちゃを作る」っていうこととは
ぜんぜん違う仕事なんで、
だからそういうことには、あんまり
パワーをかけないようにしてやってきたから。
ほんと、制作部隊になっちゃうんですよ。
このままいくと、「高性能ハード」の先にあるのは
我々が制作部隊になっていくということなので、
そうならないような運営をしようという考えが、
大もとにありますね。
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でもね、「高性能ハード」って、それなりに厄介でね。
例えば、より速い乗り物が出たら、
それは乗ってみたいと思うものですよね。誰もが。
速さばかりがクルマの魅力じゃないよね、って言うけど、
やっぱり速さはクルマの大きな魅力のひとつだから。
で、困ったことに、やっぱり「すごく速い」ってのは、
単純に嬉しいの(笑)。
あぁ速いって楽しい!とかって、思ってしまうのよね。
まぁ、だからそれは、使わない手はないと思う。
すごい速いということは、十分素晴らしいことだと思う。
けど、すごい速いだけで、楽しみが拡がるんなら、
ずっとハード屋さんをやってたらいいわけですよ。
ぼくらプランナーは必要ないわけです。
ぼくはやっぱりプランナーの立場っていうのを守りたい。
そうじゃないとね、「速い」以外のクルマの楽しみが
どんどん必要なくなっていってしまうでしょう。
単なる移動手段としての乗り物っていう意味では、
そんなにスピードばかり求めて、クルマを
頻繁に買い換える必要はないわけで、
「別に前のでええやないか、十分速く走ってんのやし」
っていうことになるよね。
で、さらに困ったことには、
残念ながらプレイステーション2なんかと比べると
スピードは出るんですよね、うちのクルマのほうが(笑)。
実は「踏めば出てしまう」んで、
だから、力自慢ってことじゃない、っていう言い方もね、
なんか生意気そうで、なんて(笑)。
かっこいいなぁ(笑)。
ってなハズ、なんですけどね、まだ出来てないんでね。
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けど、ほんとにたぶん、すごいハードですよ。
ドルフィン自体はすごいハード。
だからこそ、そのすごいハードを
どう使うかだけに終わると、
ドルフィンの設計をしてるひとたちが
誉められるだけなんですよ。
「いいもんつくりましたねぇ」って(笑)。
そうさせてたまるか、っていう気持ちがあるね。
新しいハードに乗って動いてるマリオを見たときに
「わぁ、こんなの、今まで見たことなかった」って
言ってもらわんと、悲しいもんねぇ。
どうしたらいいもんかなぁ。
ふふふ。それが、ねぇ。
ただ、今、ぼくに言えることは、
ものすっごい新しいもんを作れると思う。
ぼくらじゃなくても、次の世代のデザイナーが、
その仕事をやってくれるんじゃないかな、と思ってます。
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まぁ、はっきりとした形があるわけやないんで。
どんなもんなんだ、見せてみろ、って言われると、
それを今考えていますって言うしかないんやけども。
そやけどね、「マリオ」が出るから(笑)。
ね、みんなが買いたくなるような「マリオ」を
作るんです、ぼくは。
うん、ほんと、それだけ。
なんでもいいから面白いことを考えて、
それにマリオのキャラクターを乗せる。
今までのマリオと同じようなものを作ってしもたから、
キャラもマリオにせんとおかしい、っていう考えで
ゲームは作りたくないんで、
新しいものを作って、で、そこにマリオを乗せてみて、
で、マリオが似合わなかったら、
ゼルダに替えようかな、なんて(笑)。
そうやって、枠組みをいくつも持ってるっていうのは、
仕事してて楽な部分ですね。
やっぱり、エネルギーの総量って、
限られてると思うんですよ。
自分でやれるエネルギーの量って。
だから、マルチにいろんなものを作ったら、
その各々に注ぐ集中力っていうのも
それだけのものになってしまうし、
1作だけをずっと作ってるほうが、
より自分らしいものが出来るのも確かやし。
マリオとかゼルダという、キャラクターの枠組みを
いくつか持っているということは、ある意味では、
それ以外の部分にパワーがかけられるんだよね。
シリーズを作り続けることは、そういう意味でも
別に悪いことやない、と最近は思うようになってます。
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『スーパーマリオBros.』が、
「横スクロールアクションゲーム」というジャンルを
作ったわけです。
『マリオ64』では、「3Dアクションゲーム」という
ジャンルをきちっと体系づけたわけで。
そしたらどちらにもいっぱいフォロワーがついてきた。
だからそういう意味では、今度のもまた、
来年以降のビデオゲームの軸になるようなものを
きっちりと作ることのほうが、
「マリオでやるか、ゼルダでやるか」ということよりも
ずっと大事なことやと、ぼくは思うんですね。
たぶんお客さんのほうも、
「とにかくマリオじゃなきゃイヤだ」ということでは
ないと思うし。
次のマリオが乗っかってる、
その遊びの骨格に魅力があるからこそ、
そこに乗ってくれるんだと思うしね。
「こんなの今までなかったよ、わぁ!」
っていうもの。
それを、作りたいですね。
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