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 宮本茂が語る。
〜今思うこと、5年後のこと〜
 第6回 宮本茂が語る、「DK64」と「MOTHER3」。



今考えていること、5年後のこと。
宮本さんが思っているたくさんのことを
お伝えしてきたインタビューも、
今回がとうとう最終回です。
来月10日に発売される「DK64」について、
また来年発売を予定するdarling糸井重里の
「MOTHER3」についても、語っていただきました。

 

   

 

『ドンキーコング64』は、いわばオールドファッションな、
スタンダードなゲームなんです。
 
ひとことで言うと、よくも悪くも3Dアクションゲーム。
で、いきなり批判的なことを言っちゃいますけど、
ぼく、3Dアクションゲームってほんとに面白いかな?って
思ってるんですよね、
自分で作っておいて、言うのもなんですが(笑)。

 
「3Dアクションゲームの時代だ!」とか言って、
みんなをその気にさせたのはぼくなんやけども、
みんなも「そっか。これからは3Dアクションか!」って思って、
それで実際に3Dアクションゲームをつくってみたら、
たいへんだった、という思いをしてると思うし、
そのわりには意外と面白くならへんかったって、あれ?って。
だったら、マリオのことを、なんで面白いと思ったんやろ?
って言って、もう1回してみたら、
やっぱり意外と面白くなかったとかね(笑)。
あのね、ほんとにそういうものだと思っているんです。
作るほうにとっても難しいし、遊ぶほうも
難しく感じることが多いの。
つまり、3Dアクションというだけで面白がる時期は
終わったと思います。
3Dゲームにすることで面白さが引き立つ、
ゲーム性の「アイディア」が中心にならないと
だめなんでしょうね。

 

 

 

で、レア(=RARE 編集部註:DK64を開発した
イギリスのゲームソフトメーカー)はね、それとは逆の方向で、
ものすごくよくやってると思うんです。
「3Dアクションゲームってのは面白いんだ」という前提で、
ゲームを作り続けていって、どんどん技術をみがいて、
その道を究めて
きてると思いますよ。
 
だから、「ドンキーコング」は、うち(任天堂)を越えて、
「レアの3Dアクションゲーム」になりつつあるし、
ひとつの完成形と言えるとこまで来ているし、
今、出てるハードで、ドリームキャストも含めてね、
3Dアクションゲームとしては、
いちばん良く出来てるんじゃないですか。うん、そう思う。
 
プレイヤーが面白いと思って遊んでくれることが大事なんで、
それがあれば、だいじょうぶだし、
すごく、その、「任天堂らしさ」みたいなものを、
うまく再現できるチームなんでね、
ディレクターもしっかりしてるし、
きっと楽しいと思ってもらえるゲームですので、
楽しいと思いますよ、ってぼくからもお勧めしておきましょう。

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けど、ほら、さっきも言った、
ゲームに今まで興味を持たなかったような、
新しいユーザーをも惹きつけることが出来るのか、
っていう意味では、見た目でいうと、良くも悪くも
3Dアクションゲームなんですよね。
だから、この『ドンキーコング64』の担う役割としては、
もちろんそれでいいんだけど、
今年の年末の「64市場」に期待するものっていうことで、
みんながぼくの言ってることを見たら、
そんならもっと新しいもん出せよ、と言われると思います。

『タレントスタジオ』とかね、(編集部註:
来年2月に
ランドネット会員に対してリリースする予定の、
64DD専用ソフト。ソフトに描き込みが出来て、自分で作った
タレントが主演するオリジナルのアニメーション制作などが
売りです)そういう新しいソフトも作ってはいるんですけども、
まだなかなか、ほんとの新しさ、という意味ではね、
遊んでも楽しくて、新しいことがいっぱい載ってるというものは
完成していないので、現状のラインナップでは、
『ドンキーコング64』のほうが熟成されていて、
自信を持って勧められる、面白いソフトだということです。

 

 

 

9月にイギリスに行ったときに、
レア社へも寄ってきたんですよ。
 
レアはもう、独自に開発している、独立したチームで、
自覚とプライドを持って仕事しているのでね、
周りからいろんなことを言っても、
あんまり聞いてはくれないのですけれどもね(笑)、
こないだ、ぼくが行ってきて、で、ぼくに対しては
まだ聞く耳を持つので、そんなら意見を送れって。
 
ここ数週間のあいだに、最後の調整をするんですよ。
今、ちょこちょこと意見のやりとりを始めているところ。
けっこういい感じのものになると思うんですけれども。
今は、ほぼ完成という段階で、あとひと月で
ロム出しをせんとあかんので、
けっこう厳しいんですけれども(笑)。
(編集部註:このインタビューは9月下旬に行われました)
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わりとね、今度出る『スターツインズ』もそうなんですけど、
コースがそんなにたくさんはないんですよね。
ある程度、3Dゲームを作り慣れてくると、
あるコースを絞り込んで、そのなかにいろんなネタを
多層的に入れていったほうが、
プレイヤーも楽しいやろ、と思いますので、
『DK64』も『スターツインズ』も、
遊び込めば遊び込むほど、どんどんネタが出てくるように
なっていますから。
買ってもらったひとは、きっと長いあいだ遊べますよ。

 

 

 

『スターツインズ』は、『ブラストドーザー』をやった
チームが作ったんですよ。
だから、『ブラストドーザー』をやってもらったひとにはわかる
スルメ的な味わいというのがあって、
始まってから1時間くらいまでがちょっと辛いんだけど、
そこを克服するとね、何度でも新しいネタがあって遊べる、
極めようとすると、トコトンまで極められる、そういうゲーム。
これもなかなか楽しいと思う。
こちらも3Dアクションゲームですね。
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『MOTHER3』についても、今ぼくが自由に思ってることを
ちょっと言っておきましょうか。
幕張のスペースワールドでの反応もよかったですしね。
触ってみて、触り応えもそれなりに揃ってきたし、
今のところ、80%くらいまで来たかな、と思います。
前から仕上がっていた絵を組み込んで、調整して、
結果として動いているものを触ると、
あぁ、これは京都(任天堂)で作ってないゲームだな、
いう感じがするね。
 
これは、うちにとって非常にありがたいところで、
最近は、どのゲームも京都で作ってる、みたいな
偏った雰囲気が感じられるのでね。
レアにさえもあるもんね(笑)。
京都で作ってる、みたいな匂いが(笑)。

 

 

 

けっこう、そういう意味では、
『MOTHER3』はなかなか新鮮なゲームで、
ロールプレイングゲームが3Dになりました、っていうだけじゃ
ないティストが、いちおうあるかな、と思います。
スーパーファミコンでの、
きれいに描かれたテクスチャーを張り込んだゲームとか、
CGの先端のような雰囲気で、絵柄を仕上げたゲームが
ほとんどで、それが今のビデオゲームというふうに
思われている時代なんですよね。
『MOTHER3』は、そういう種類ばっかりじゃない
絵というのがあるよ、
という部分まで来たんで、
けっこう楽しみですね。

 

  

 

だから、来年マリオRPGが出ても、ゼルダが出てもね、
それと同じ時期に『MOTHER3』が出てきても、
別に、ちっともかぶらないよって雰囲気がすごくあってね。
あとはなんとか、冬までにちゃんと動いてほしい、って
思ってます。
楽しみですね。
あれはね、入れ込んでいったら入れ込んでいっただけ、
よくなるものなので、「いつあきらめるか」ですね。
ほんと、楽しみですよ。


(C)1999 Nintendo. Game by Rare.
TM & (C) 1999 Rare.
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(c)1999 Nintendo/HAL Laboratory,Inc./Shigesato Itoi
 


全6回にわたってお届けしてきた宮本茂インタビュー、
いかがでしたか。宮本さんの求める、面白くて不思議な
ものって、きっといつまでも宮本さん自身のなかに
あり続けるのだろうな、と思いつつお話を聞きました。
宮本さん、どうもありがとうございました。

さて、次回からは宮本さんも年末イチオシ!のソフト、
『ドンキーコング64』の発売直前情報をお伝えします。
ひきつづき「樹の上の秘密基地」をお楽しみに!!


1999-11-19-FRI

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