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はれ
 
32℃
第10回 ゲームと睡眠。
もう寝ようかな、という時間になって、
でもちょっとまだ眠れないなという自覚があって、
そんじゃちょっと『ピクミン2』でもやるかと思って、
小一時間、プレイして眠ることがある。

そんなとき僕は、
ああ、ちょうどやりかけのゲームがあって
よかったなあ、などと思う。
眠れない時間を中途半端に持て余している夜に、
暇を潰すようなものがなにもないと
さらに目が冴えることになる。
わけてもこの夏は記録的な猛暑である。
例年になく寝苦しい東京の熱帯夜を過ごすうえで、
『ピクミン2』というやりかけのゲームを抱えていて
よかったなあ、助かったよなあと、僕は思うのだが、
ちょっと待て。
それってほんとのことなんだろうか?

ていうか、これ、逆なんじゃないだろうか。

『ピクミン2』が気になってしまって、
ちょっとばかしプレイしたくなってしまって、
そのうずうずした感じが眠りの淵へ落ちようとする僕を
ぎりぎりの際で押しとどめているのではないか。
眠れないからコントローラーを握るというような
体裁を繕ってはいるものの、
実際のところは本と末が転倒していて、
ちょっとでいいから電源入れてみたくなってしまって
「おやおや、なんだ、今日は眠れないなあ」などと
脳内で自分相手に自分で茶番を演じているのではないか。
暇があるから潰すのではなく、
潰したいから暇をつくっているだけなのではないか。
はい、そうです。
なんだやっぱそうなのかよ。
自作自演の三文芝居とはこのことである。

ゲームという娯楽は、たいへんおもしろく、
飽きないように工夫されているため、
自分がそこにハマっているときには、
極端にいえばいくらでもプレイできてしまう。
だからこそ、人はそこにあらかじめブレーキをかける。
わけても、仕事を抱えている社会人ともなれば、
「ゲームを好きなときに好きなだけ
 プレイするわけにはいきませんよ」
ということを、お母さんや先生に命じられずとも、
自ずからキモに銘じているのである。
小中学生の諸君はさっぱり理解できないかもしれないが、
オトナってそういうもんなんだよ。
キミもいつかきっとわかる日が来るよ。

身も蓋もないいいかたをしてしまうと、
ゲームをプレイすることはけっきょく
睡眠時間の減少につながるのである。
重厚長大なゲームの台頭による総プレイ時間の長さとか、
携帯電話およびネット文化の発展による
余暇時間の奪い合いとか、
むつかしい説明だってできるのだと思うけれど、
要するに、とどのつまりということでいえば、
ゲームのしわ寄せは睡眠時間にくるのである。
ゲームばっかやってると眠れなくなるのである。
ゲームで遊ぶのが好きだという人は
いっぱいいると思うけど、
睡眠時間が短くなるのが好きだという人なんて
どこにもいないだろうと思う。

その意味で、ゲームと睡眠時間は
つねにせめぎ合っていると僕は考えている。
だって、ゲームというものは、
「飽きずにずっと続けられるようにできている」
ほとんど唯一の娯楽なのだ。
飛躍を承知でつけ加えると、
「一粒飲むと3時間眠ったことになる薬」
なんていうものが開発されたら、
きっとゲーム業界は大躍進すると思う。

当然の流れとして話を戻すとすると、
そのように、睡眠時間との兼ね合いを
あらかじめ考えてしまうオトナのゲームファンにとって、
『ピクミン2』というのはひじょうに相性がいい。
それは、以前の日記に記した
「制限日数がないことによる大らかさ」
に因るものも大きいが、それ以上に影響しているのは
ゲーム内に時間が流れていて、
「1日」という区切りがあることではないかと思う。

ゲーム内の「1日」は、実際の時間で15分~20分。
過去、さまざまなゲームをプレイした経験上、
この「15~20分程度」という時間の区切りは、
生活とゲームのバランスを取るうえでとても都合がいい。
ちょっとだけやるか、という最低限のプレイなら15~20分。
もうちょいやるか、となっても30~40分。
やっぱい、ずいぶんやっちゃったよ、となっても1時間程度。

先日、ゲーム友だちであるスチャダラパーのボーズさんと
その話をしていたところ、
「そういえば『ウイニングイレブン』の1試合は、
 10分ハーフの20分でプレイするのが
 もっともちょうどいい」と言っていた。
プロ野球ゲームの定番である
『実況パワフルプロ野球』の1試合も15分程度。
『巨人のドシン』の1日もたしか15分程度。
パッと思い出せないけど、まだまだあったと思う。
つまり、ゲームのジャンルにもよるけれど、
15分とか20分くらいのサイクルを持つゲームは、
コントローラーを握るとき
自然と睡眠時間のことを考えてしまうオトナにとって、
とても生活にフィットするのではないかと僕は思っている。

そういうわけで、僕は分別のあるオトナではあるけれども、
眠れない夜は『ピクミン2』をプレイするのだ。
あ、もちろん、眠れないので、しょうがないから
ちょっとだけプレイしているだけですよ?
小中学生の諸君はさっぱり理解できないかもしれないが、
オトナってそういうもんなんだよ。
キミもいつかきっとわかる日が来るよ。

2004-08-01-SUN


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