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しばらく帰ってグーと寝る生活が続いていたのだけれど、 いまゲームのなかで 自分がなにを手がけているのかを忘れることはなかった。 そう、僕は最初の着陸地点の 洞窟を降りている最中だったのだ。 その洞窟を苦労しながら進んでいたときに、 青ピクミンが足りなくて、 にっちもさっちもいかなくなってしまって、 渋々途中で引き上げてきたのだ。 ひとつの洞窟を攻略するのに 日をまたいだことは初めてだったから、 ずうっと引っかかっていたのだ。 満を持してコントローラーを握った僕は、 高床式の基地内にて休息をとる たくましき戦友たちに向かって号令一喝気合注入。 赤青黄白紫の色とりどりの先鋭たちを集め、 「攻略途中であった件の洞窟に向かうぞ!」 と声を荒げたのであった。隊士は総勢70匹。 目的は洞窟内深くにあるお宝物資の奪還である。 敵兵の数は未知数。ひとたび入れば援軍はない。 誠の志のもとに集いし一同は 固い決意とともに洞窟の闇へ身を投じるのであった。 当方、ただいま『新選組!』にハマっているため やや時代錯誤な文体となっております。 二〇〇四年(平成十六年)八月三日 東京──。 あっという間に文体をゆるめますけれど、 いくつか洞窟を探究するにつれ、 攻略の方法がだんだんと固まりつつあるのです。 まず、新しいフロアーに降りたら、 ピクミンたちに号令をかけ、 敵のいない地点へ呼んでから解散する。 そして、周囲の地形および敵の配置などを調べていく。 調査にあたっては、オリマーが単独で行動する。 隊長みずから斥候をつとめるとはこのことである。 毎週伊豆から特急で通勤とは夢物語である。 近場の現状を把握したら自分内作戦会議。 こうしたらどうかと自分が提案し、 それじゃ話にならんだろうと自分で却下する。 しかるのちに、選ばれるのはやはり安全策。 できるだけ、敵をいっぺんに刺激しないように、 必要最低限の敵だけを攻撃する。 それがむつかしければ、 ピクミンやオリマーをおとりにして 敵の配置を崩したりする。 このあたりの戦略、時間はかかるが愉快である。 一対一で戦うことを目指しつつ、 できればザコから片づけていって、 フロアーのヌシたる大きな敵には 赤ピクミンたちを結集させて挑む。 背後からそろりそろりと近づいていって、 いまだと思う瞬間、ピクミンたちを高速で発射。 やぱっ、こっちむいた、口あけた、 撤収、撤収、早めの撤収、ピピーーーッ! とんずら、とんずら、とんずら、 あっ、逃げ切った、あいつ、また寝てやがる。 背後からそろりそろりと近づいていって‥‥、 以下、くり返し。 だいたいこんなふうにして僕は洞窟を愉快に進む。 この、苦労しながらも、達成感のある感覚には なんだか覚えがあるなあと思っていた。 どうやらそれはアクションゲームである。 いつの間に二世代以上前のゲームの話になってしまったが、 当時、アクションゲームはゲームの主流であった。 それはおもに横スクロールで、 行く手にはさまざまな敵やトラップが待ち受けていて、 マップの端まで進むととりあえずのゴールがあって、 ひと区切りのクリアーをしたときには プレイヤーはささやかにガッツポーズをとった。 少し進むこともむつかしくて、やりがいがあって、 コツを覚えるとどんどん進むことができるけれど、 すぐにつぎの難題が行く手を阻むから また違うことを学ばなければならない。 ときには、アクション性のみで、 ときには、発想の切り替えで、 なんとかマップの端を目指して僕は進んでいった。 呆れるくらいたくさんあった 横スクロールのアクションゲーム。 それを僕はどれくらいプレイしていないだろうか。 いうまでもなくそのタイプのゲームの元祖は 『スーパーマリオブラザーズ』で、 『ピクミン2』にそのにおいを感じることは いわば必然であるのかもしれない。 昔はよかったということを、 僕はちっとも思わない。 昔も、いまも、同じように、 楽しいゲームとそうでないゲームがある。 ただそれだけのことだと思っている。 『ピクミン2』は横スクロールじゃない。 けれど、『マリオ』と同じような、 進むむつかしさとたのしさを持ち合わせていて、 達成する自分を誇らしく思える構造を持っている。 昔、すべてのゲームが3Dになると聞いたとき、 「なんだかよくわかんねえな」と僕は思った。 『ピクミン2』のやりかけの洞窟をクリアーしたあと、 僕はあのころの自分に『ピクミン2』を見せたら、 パチンと指を鳴らすような明快さでもって 納得してもらえるのではないかとちょっと思った。 さて、借金の9割を返してしまった。 意外にそのハードルは低そうだ。 プレイするゲームにおいて、 僕は「極めること」をあまり重んじないのだけれど、 『ピクミン2』は完全クリアーを 目指してもいいかなと思い始めています。 2004-08-05-THU
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