シェフ
シェフの糠漬け
1 糠漬けがもたらした
ちょっとした生活の変化について。
シェフの糠漬け

まだ暑い夏の終わり、
実家からクール宅配便で送ってもらった、
おばあちゃんの時代からの糠床。
おばあちゃんの言葉を信じるなら
(信じるしかないんだけど)87年ものということになる
このヴィンテージ糠床を、
野田琺瑯の容器に入れて、冷蔵庫にセットしてから、
はやいものでもう3ヶ月がたちました。
冷蔵庫に入れているためか、
糠床がだめになることもなく、
毎日しっかり生きて、
おいしい糠漬けをつくってくれてます。

冷蔵庫のなかの温度は
そう変わるもんじゃないだろうと思うんだけど、
やっぱり外気の影響は大きいらしくて
(あるいは、空気中の微生物の変化かな?)
木枯らしが吹いて以降は
どうも漬かりが遅い感じです。
茄子や蕪だと3日くらい、
大きめのにんじんや大根だと
1週間入れっぱなしでもいいみたい。
そんな冬の始まりでございます。

糠漬けについては、
とくに冒険することがなかったのですが、
それというのも
「いまのままで、じゅうぶんおいしい」からでした。
糠床の味は慣れ親しんだ実家の味だし
毎日食べたい漬物の種類とて、
そんなに変わりはありません。
茄子、きゅうり、大根、蕪、にんじん、
そんなのがローテーションしてれば満足。
あと、ちょっと季節の野菜とか、
旅先で買った地元の野菜が
アクセントとして入る程度でいいです。
自炊歴23年の経験から言いますと
「いつも食べてるものがいちばんおいしい」んです。
(あ、家のごはんの話です。
 外食は、チャレンジしてもいいと思う!)
あるとき、ふと
「キャベツが旨いんだから、
 芽キャベツも旨いんじゃないだろうか」
と、やってみたりしましたが、
しかしながらこれは、
あんがい、いまひとつでした。
苦味が先にたつ、不思議な味になっちゃいました。
そもそも、茹でて食べますもんねえ。
これは失敗でございました。

糠漬けをつくるようになってから
どんどん自炊生活がシンプルになりました。
だって、炊きたてのごはんに漬物があると、
「基本オッケー!」ですもん。
さらにそのシンプルさを加速させたのが「土鍋」の導入で、
これ、「ほぼ日」でつくっている土鍋の
試作品を使いはじめたことがきっかけなんですが、
野菜と肉をてきとうに「くつくつ」と煮ると
かなりおいしいおかずになるんですね。
味付けも、ポン酢とかなら、いらないし。
(ただし、糠漬けも鍋料理も、
 食材がいいものであることは、大事ですが。)
鍋料理って、スープも味わえるので、
みそ汁をつくる回数も減っちゃいました。
まあこれはちょっと一時的に
土鍋を多めに使っている状況にあるからで、
ひとだんらくして、またあたたかくなるころには
多少は変わっているかもしれませんけれど。
それにしても、自炊生活がシンプルに、
かつ、グレードアップしたなあというのが
実感です。これ、糠漬けのおかげです。
そうそう、ごはんも、土鍋で炊いてます。
おこげがうまいんだ、また。漬物に合うし!

年末年始は、ちょっと長めに
家を留守にする予定です。
そのときは、今回の「モギ方式」あるいは
鶴見さんの書いていた「塩たっぷり方式」で
冬眠していてもらおうと思ってます。
旅に出ても、糠床が待ってるって
ちょっといい感じかもしんないです。
では、よい糠漬けライフを!


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