諏訪 |
浜松で、こぐれさんや小泉さんに
チャレンジしていただいた露地栽培は、
農業のプロの方にも
十分対応できる内容ですけど、
プランターを使った野菜づくりも、
永田農法の特長を活かした、
とても現実的で、本質的な方法なんです。
プランターの土壌作りを説明する永田先生
野菜づくりをやってみたいなと思っても
都心に住んでいたら、近くに畑はないし、
郊外でも市民農園の競争率は高いといいます。
また自宅から耕作地まで遠かったりすると
日々のメンテナンスが大変です。
だれでも露地のある市民農園で
野菜づくりにチャレンジできるものでは
ないと思うんです。
ところが、プランターなどをつかった、
鉢植えの野菜づくりならば、
誰でもその気になれば
小さなスペースでできるわけです。
トマトの苗を植えます
この番組では、
プランターでの野菜作りも収録しています。
これは新宿のビル街にある、
とある会社のベランダを借りて行いました。
新宿のビルに谷間にあるオフィスビルで
プランター野菜を育てました
永田農法は、「プランターでの家庭菜園」に
すごく向いているんですね。
ほとんどの市民農園では、
それまでの使用者がいっぱい堆肥をいれてますから、
すでに黒々とした肥えた土になっているんです。
この「肥えた土」が、逆にじゃまなんです。
ところがプランターの場合は、
何も栄養の入っていない火山礫や軽石や赤玉
といった土を買ってくれば、
栄養価ゼロの土が用意できますよね。
そこに薄めた液体肥料をかけるだけでいいんです。
水がたまらないように浮かせるのです
しかも、水のコントロールが簡単でしょう。
いくらマルチシートをかけておいても、
露地栽培の場合は、多少でも雨水を吸収します。
しかし、屋根のあるプランターだったら、
雨水がかかることがない。
プランター栽培の場合は、
人間が、植物の状態をみて水やりをするわけです。
水やりのときに、液体肥料を
ちょっと足してやるだけです。
水や肥料を最低限にコントロールする永田農法では、
こういう条件は非常にありがたいことなんです。
新宿のビルでも、浜松の永田農園と同様に、
5月の下旬からスタートして、
10日に1回のペースで撮影をしていきました。
今年は空梅雨で猛暑でもありましたし、
ビルにかこまれた新宿のど真ん中という環境です。
温度計をみると、高いときは60度くらいにまで
気温があがるんですよ。
午前中でこれくらいの温度なんです
今回、この新宿の菜園では、
とにかく暑さを相当心配してたんですけどね。
こういう場合は、水の少なすぎがありえますから。
暑いときは、水だけは朝か夕方に
しっかり与えていただいていたので、
基本的にはほとんど枯れずに育ちました。
暑さでトマトはちょっと実なりが遅かったけど。
元々、トマトは涼しいところで育つものですからね。
一般のご家庭のベランダの方が、
この場所に比べたら、
格段にいい環境でしょうから、
もっと簡単にできるはずです。
夏は、あそこより過酷な環境を探す方が
日本では難しいでしょう(笑)。
今年の猛暑に耐えて実りました
洗濯物を干すときだとか
朝起きたときにベランダに出るじゃないですか。
それくらいの頻度で面倒をみるだけで
大成功するんじゃないかと思います。 |
ほぼ日 |
水を遮断するためにハウスを作る必要もなく、
農園にわざわざ出向く手間もなく、
野菜作りができるというわけですね。 |
諏訪 |
そうです。
手間といえば、
意外とびっくりしたことなんですが、
虫でした。
新宿のあんな所でも虫が多いんですよね。
都会のビル街で育てても
あんなに虫がたくさんつくというのは、
今回初めて知りました。
実際、新宿では
虫の影響で葉大根は全滅したんですよ。
アブラムシもいっちょまえに、
ナスとかキュウリにもびっちりついてましたから。
虫の管理というのは都会でも大変なんだな、
という初めての体験をしました。
新宿での収穫 |
ほぼ日 |
都会で蚊にさされるということは、
あまりないじゃないですか。
でも、いるんですねぇ。 |
諏訪 |
どっからとんでくるのかな。
うまいものをかぎ分けてきているんでしょうね。 |
ほぼ日 |
自宅のプランターでつくった野菜も、
露地栽培と遜色のないものがつくれる、
そう考えていいんですか。
新宿育ちの野菜たち |
諏訪 |
ええ、食べてみたら確信できますよね。
ナスやトマトといった
実をつける野菜だけでなく、
台所に窓でもあって明るい所さえあれば、
コリアンダーとか三つ葉、青じそ、
バジルみたいハーブ類も上手にできますよ。
それこそ、手のひらサイズの
「いちごのパック容器」みたいなものに穴をあけて、
永田先生がやっているように、
赤玉だとかの栄養のない土をいれて、
液肥を水で薄めて
一週間に1回かけてやればいいんです。
永田農法というのは一坪農園でもできるし
手のひら農園でもできるわけです。 |
ほぼ日 |
大規模でも小規模でも、超小規模でも、
野菜づくりが始められるわけですね。 |
諏訪 |
だから番組作りとしては難しかったんです。
2ヶ月にわたって収録したものを
35分にまとめるということもそうですが、
『趣味の園芸』というような、
ごく一般の方がたのしむ
テキスト番組の要素もいれたいですし。
こういう風にやれば永田農法の野菜が作れる、
ということが、確実に伝わらなくてはならないし。
それは、ま、プロの方も含めて
見てくれるわけなんでね。
一方でこぐれさんや小泉さんや、
新宿のビルで野菜作りに挑戦してくださった人の
喜怒哀楽も描かなければ
ならないということもある。
よくばりな企画でしたねぇ。
新宿で野菜作りに協力してくれたみなさんと
諏訪さん |
ほぼ日 |
番組を観る人は、
超初心者から超プロまでですものね。
これって「農業番組」じゃあないんですよね。 |
諏訪 |
ええ、こぐれさんや小泉さんが、
収穫した永田野菜を使って、
おいしく料理をつくってくれましたけど、
料理番組でもないんですね。
たぶん、今までないんですよ、こんな番組は。
とにかく野菜づくりに興味だけあって、
「いつか機会があったらつくってみたい!」
と思ってた人に特に観て欲しいですね。
できれば、来年の春からは、
これをレギュラー番組にしていきたいと思ってます。
そうすれば自分で野菜をつくっていく人が
日本中に増えていくでしょう。
そして、どんどん休耕地に緑が
戻っていくでしょうしね。
それが個人レベルだけでなく、
学校とか、幼稚園だとか、老人ホームだとか、
農や食に関心のある企業とかに広がっていって、
大きな動きになっていけば、
日本の野菜の自給率もあがりますよね。
しかも、新鮮で、安全で、
おいしいものが食べられる。
「育てること」への学びのチャンスもあります。
そういうことが
あちこちでおこると面白いなぁと思いますねぇ。 |