■■■
第10回 オトナの基本用語:その10 ■■■
このコーナーがきっかけで、
社内に「ほぼ日」読者がけっこういたことを
知ったとのメールが届いている。
そういえば、隣席の同僚が暇つぶしに
どこのサイトを眺めているかなんて
意外にわからないものだ。
職場の円滑なコミュニケーションに協力できたなら
コーナー担当者としても意義深い。
あるいは、職場ぐるみで公然と
「オトナ語」に取り組んでいる部署もあるという。
それで仕事になるのかなどと言うつもりはないが
「第8回で上司の投稿が採用されて悔しいので
掲載してください!」というのは
オトナとしてどうかと思うぞ。
全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
たとえあなたと私が初対面でも
お世話になっております。
たとえあなたが元気いっぱいでも
お疲れさまです。
たとえあなたと会ったのが深夜でも
おはようございます。
社会に飛び交う謎めいたオトナ語を紹介する当コーナー、
月曜日の昼休みは、みなさんバタバタしているため、
夕方ごろにぼちぼちアクセスする人も多いようです。
合い言葉は「なるはや? 朝イチ? アポを取る?」
謎めいたオトナ語を叡智の光で照らせ。
月末を控えるオフィスの喧噪に吹き込む一陣の風、
それがすなわち「オトナ語の謎」
ジャブの応酬を繰り広げる選手を横目でにらみつつ、
ありバージョンとなしバージョンを用意しながら
手前どものにんげんが参上いたします。
お使いだてして申し訳ありませんが
うまいことやって、おしりまでご笑覧くださいませ。
(提供者:ヒューマン)
■ひながた、と読む。手本。見本。フォーマット。
何かの作業をする前に、つくっておき、
それに習って作業を進めると効率がよい。
新社会人は「たたき台」などと混同しがち。
「こちらをたたき台として雛形にしますので
あとはそこへ落とし込んでいただければ」
がんばれ新社会人。
(提供者:ようちん)
■事前に意見や情報を集めておくこと。
対象者を絞り、意見をつのったうえで
それを書類などにまとめるのが
ヒアリングの最上級だが、
学生時代の知り合いなどに電話をかけて
「あのさあ、今度さあ」というのも
広義にヒアリングだったりする。
(提供者:そろり)
■そのまま訳して「歓迎します」と受け取ってOK。
「いやもう、ウチとしてはウェルカムですが」
「そうなったらなったでウェルカムですし」
おもしろいこと言うなあ、オトナは。
(提供者:セイチン)
■カレンダー上の日付ではなく、
会社が営業している日で数えるときの日数。
土日が休みの会社で、
金曜日から翌営業日、といえば月曜日。
「入金確認後、翌営業日に発送します」
と言われても慌てないのがオトナだ。
(提供者:ごう)
■手当すること。手をかしておぎなうこと。
などと言うと定義がむつかしくなるが、
要するに「やりっぱなしにすんなよ」という
ニュアンスでよく使われる。
(提供者:Youichi)
■その料金を支払うことを
我が社が引き受けるということ。
ビジネス上の話ではなく、
飲み会や接待のときなどによく使われる。
「ここはウチがもちましょう」
「いえいえ、ここはウチがもちます」
「いやいやいや、ほんと、ウチが」
「いえいえいえ、ここはひとつ」
電車の中で、ひとつ空いた席を譲り合っている
おばちゃんたちの会話によく似ている。
「奥さん、空いたわよ、どーぞどーぞ!」
「いえいえ私はすぐ降りますからどーぞどーぞ!」
(提供者:長谷川)
■オトナは個人的主張を
巧みに不特定多数の声にすり替える。
つまり、「消費者には届きにくいと思います」
ではなく、「消費者には届きにくいと思われます」
これによって、なんとなく説得力が増すから不思議だ。
レポートや日報を提出する際も重宝するぞ。
加えろ!「たぶんオレだけじゃないぜ」ニュアンス!
(提供者:guano)
■オトナはどんどん言い換えるのだ。
「とりあえず」も、「いまんとこ」も、
「しかたがないので」も、「まあ仮に」も、
「暫定的」と言い換えて乗り切るのだ。
ここで注意すべきことは、
そのように無理矢理説得力を持たせることは
発言者だけでなく、その発言を
聞く側のためにもなるということだ。
「とりあえずそうしときます」と言われるよりも
「暫定的な決定と受け止めてください」
と言われたほうが上司も落ち着くのさ。
(提供者:ぎんざえもん)
■公の場で詰問することを指すが、
上司が部下を問いつめることはこの限りではない。
ニュアンスとしては、部下が上司を詰問する、
あるいは、対等な関係の当事者どうしが
激しくやり合うことを指す。
「本田さん、渡辺本部長にかみついたんだって?」
むろん、ほんとにかみついたりはしない。
(提供者:Welsh Corgi)
■マストは「やるべき」ことで、
ウォントは「やってほしい」こと。
「次回のおでんにおいて、
だいこんはマストですけど
ちくわぶはウォントです」
「いまのあなたにとって、
結婚はマストなの? ウォントなの?」
「ヨットにおいて、シュノーケルはウォントですが
マストはマストです」
ああ、またヨットの話を書いてしまった……。
(提供者:ジャンルカ)
■とにかく会って、なんとか糸口を、という意志の現れ。
営業マンの無鉄砲な勢いがそう言わせることもあるし、
「この人とこの人を会わせておくことが
両社にとって著しくプラスになる」という
クレバーな動機がそれを言わせることもある。
(提供者:くろ)
■「何度も」と言い換えられなくはないが、
発言に意識的にトゲを含ませるときにこれを使う。
「再三再四、ご返却をお願いしておりますが」
「再三再四の催促にもかかわらず」
ビジネスとは無関係だが、
ひとり暮らしの貧乏学生の家にも
こういったことを書かれた通知がよく来る。
(提供者:ひっきー)
■比喩のようだが比喩ではなく、
そのものズバリ「酒の席での話」であり、
要するに酒が入ってるときの話は
信用できねえということ。
困るのは、ウチの上司と先方の上司が
酒の席で意気投合するようなケースであり、
どこからどこまでがほんとうなのか
当の本人もよくわかっていないから始末がわるい。
(提供者:か〜め)
■オトナが「おみやげ」という場合2種類ある。
ひとつはほんとうに「先方へ持参するもの」
営業が「A社に挨拶にいくがおみやげはないか?」
という場合、それは
「A社が喜ぶようなデータや企画はないか」ということ。
たまに、ほんとにお菓子だったりする。
もうひとつは「先方からの課題、宿題」を指す。
取引先から帰ってきた上司が
「おみやげもらってきちゃったよ……」
とうなだれたら、残業決定!
(提供者:Cazy3)
■「やっほー!」のバンザイではなくて、
「お手上げ」「降参」を意味する。
「ここまでやってお客さん入んなかったら、
もうバンザイでしょ」などと使う。
(提供者:Cazy3)
■バンザイは「お手上げ」だが、
バンバンザイは「やっほー!」となるから
オトナの世界はわけがわからない。
「この程度でお客さん入ったらバンバンザイだね!」
「バン」がひとつ増えるだけで天国と地獄。
(提供者:やっさん)
■「作業がずいぶん遅れています」の意味。
オトナは物事を婉曲的に表現することに長けている。
「その時間までにはなんとか仕上げたいと思います」
という、苦肉のメッセージなのだが、
「何時ごろにできるんですか?」のひとことで
あっさり切り替えされてしまう性質を持つ。
(提供者:ナオコ)
■あの、ここの写真って
差し替えるんじゃなかったでしたっけ?
ええと、先方の確認をとってから
動くんじゃなかったでしたっけ?
赤を青にするんじゃなかったでしたっけ?
田中さんじゃなくて鈴木さんじゃなかったでしたっけ?
この話、なくなったんじゃなかったでしたっけ?
……もう、書いててよくわからなくなるよ。
(提供者:すぎゃ)
■オトナは「NO」とは言わないものだ。
言わないかわりに別の表現を使うのだ。
「そこまで請け負うのはちょっと……」
「さすがに全部やり直すのはちょっと……」
「私、日本酒はちょっと……」
「私、渡辺本部長はちょっと……」
「多すぎるのはちょっと……」
「少なすぎるのはちょっと……」
(提供者:けーすけ39才)
■おいおいほんとかよマジかよ、の意味で使う。
「とりあえず、ウチに返品されるようですので」
「でた! けっきょくオレらがやんのかよー」
「ようやく日程のほうが確定しましたのでお伝えします」
「でた! なんで3日しかないのよー」
「明日、ちょっと私お休みをいただきますので」
「でた! 有休?」
いったい何が出たというのだろうか?
(提供者:よ〜じ)
■火消し部隊が到着する以前、
火を噴くプロジェクトは爆弾を抱えており、
たいへんなことになっており、
それを知らずにその件を任されてしまうことを
「地雷を踏む」という。
(提供者:ユズ)
■これをオトナ語に加えるかどうかは
議論の分かれるところであるが、
ずばり、「渡辺姓の人」。
じゃあ、あだ名が全部入っちゃうじゃないか
とも思われるが、その分かれ目は、
会社に入る以前はそう呼ばれなかったものの
会社に入るとおしなべてそう呼ばれてしまうという
あたりであり、どっちにしても判断がむつかしいが
とりあえず手当たりしだいに
「ヤマさん」や「グッちゃん」や「にしもっちゃん」を
送られてきても困るぞ。
あ、でも「にしもっちゃん」はビミョ〜。
本日はこのあたりで失礼させていただきます。
蒸し暑い日々が続きますが、
今週もがんばっていきましょう。マジで。
さあ、午後もがんばれ、仕事仕事! |