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第13回 オトナの基本用語:その13 ■■■
今日も当コーナーにはたくさんのメールが届いている。
メールには、署名と呼ばれる、
自分の名前や会社名などを記す場所があり、
その署名をつけたままでメールしてくださる方も多いため、
自然といろんな会社名が目に入る。
いやはやさまざまな会社、団体からメールが届いている。
誰もが知っているような有名企業、
遠く離れた市町村の役場、
知り合いの勤めるメーカー、
商社、銀行、出版社、ショップ、外資系……。
さまざまな組織に属するさまざまなビジネスマンが、
さまざまなオトナ語を提供してくださっている。
そう、いわば、ここに出会う我々は、
企業の垣根を超えてオトナ語の旗のもとに集まる
「同僚」だといえるのである。
なんとも頼もしい話ではないか!
全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
たとえあなたと私が初対面でも
お世話になっております。
たとえあなたが元気いっぱいでも
お疲れさまです。
たとえあなたと会ったのが深夜でも
おはようございます。
どなた様か存じませんが
お世話様です。
社会に飛び交う謎めいたオトナ語を紹介する当コーナー、
社内で「いかにオトナ語を駆使したメールが書けるか」
という妙な遊びが流行りだしたとの報告もあります。
合い言葉は「なるはや? 午後イチ? ペンディング?」
謎めいたオトナ語を叡智の光で照らせ。
噛みしめたあなたの唇を軽やかに撫でる一陣の風、
それがすなわち「オトナ語の謎」!
素材のシズル感をフラットにしつつ
手探り状態でお車を回しながら、
手前どものにんげんが参上いたします。
オレは聖徳太子じゃないんだから
取り込み中の方も、おしりまでご笑覧くださいませ。
(提供者:Yoshihiko)
■ひとりのお客さんがその店でいくらくらい
お金を使うか、ということ。
「駅からも近く、かなりの客単価が見込めます」
「客単価が低いんだから、集客がんばらなきゃ」
客と金の両軸に同等の重みを見いだすあたりが
かなりドライであり、
カッコいいオトナ語に含まれるのではないだろうか。
(提供者:おかだ)
■オトナは、食事を意味する「メシ」の前に
さまざまな二文字をつけて
それがどんな食事であるかを示す。
「ハヤメシ」といえば早めにメシに行くことか、
急いでメシを食うことであり、
「オソメシ」ならその逆。
「ウチメシ」は打ち合わせしながらの食事か、
打ち合わせのあとに食事。
「サクメシ」はサクッと食事することであり、
特殊な例では、外国人と食事する
「ヨコメシ」があるという。
略すことに意味があるのかと
オトナに訊くことはタブーだ。
(提供者:佐々木)
■出先で、自分の名刺を忘れてきたことに気づいた。
もちろんオトナは自分のミスを告白したりしない。
「ただいま名刺を切らしておりまして……」
ひょっとしたらこれ、
100パーセントの確率に近いかも?
(提供者:はな)
■いっぱいいっぱいであることの別の言いかた。
「アップアップ」「パッツンパッツン」など
許容量の限界を示す言葉には
さまざまなバリエーションがあるが、
老若男女を問わず愛用されている
永遠の定番商品が「パンクする」である。
「ただいまパンク寸前の状態でして」などと
丁寧な言い回しにも仕込むことができる。
(提供者:ながせ)
■ええと、長い針が6のところで、
短い針が3と4のあいだにあるから……
などと悩むわけではない。
終了する時間などが予測できない様子。
(提供者:ぷー)
■オトナの世界においては
「よし、これで決定!」となっても
そこから二転三転することがままあり、
ほんとうにそれが
最終的な決定なのかどうかがわかりづらい。
そこで編み出された言葉のひとつが
「本決まり」である。もちろん「本決まり」が
ほんとうに「本決まり」であるかどうかは
誰にも保証ができない。
「じゃあ、もう、これ、本決まりですね」
「たぶん本決まりですが、
もう一度チェックさせてください」
「じゃあ本決まりじゃないじゃないですか!」
「仮に本決まりとします」
ネバーエンディングストーリー。
(提供者:な)
■にんげつ、と読む。
仕事の量を推し量るときの独特の単位。
ひとりが1ヶ月かかる場合を1人月とする。
3人で1ヶ月かかる仕事と、
ひとりが3ヶ月かかる仕事は
ともに「3人月」だということになる。
当コーナーは、ほんとうに役に立つことでも有名だ。
(提供者:Tomomi)
■工場などで、ひとつの生産の工程をそう呼ぶ。
ある品物を生産するために、
その生産にまつわる設備を準備することを
「ラインを確保する」などという。
また、人物どうしの太い絆、命令系統を称することも。
「ということで、天下統一の件は、
信長・秀吉ラインで仕上げてもらいましょうか」
(提供者:potatto)
■留意してください、注意しておいてください、
知っておいてください、ちょっと助けてください、
などのこまごまとしたニュアンスが
いっしょくたになって、発せられる。
「明智光秀が何かたくらんでいるようですが
私からどうこういうわけには参りませんので
そのあたり、お含みおきください」
(提供者:ぐり〜ん)
■なんらかの衝突が起こったとき
事態の泥沼化を避けるために
あえて損をする側を引き受けたり
妥協したりする場合がある。
そういった状態をオトナは
「オトナになる」と表現するのだ。
「まあ、たしかに小早川秀秋が
東軍に寝返ったのはルール違反だけどさ、
ここはひとつオトナになろうや。な?」
(提供者:ももこぶた)
■あ〜、それはあまり、よろしくないね。
このあたりはとくによろしくない。
つまり、どうにも、よろしくないね。
あと、こっちのこれも、よろしくない。
なんだか、やっぱり、よろしくないねえ。
(提供者:はちのすけ)
■社会に出たら、太っている人に向かって
「太っている」と言ってはいけない。
あくまで「恰幅のよい」と表現すべし。
ちなみに「貫禄が出る」という表現もよく使う。
「あの、先月一度お会いした方なんですが、
小柄で、恰幅のよい、貫禄のある……」
「ああ、渡辺本部長ですね」
(提供者:みずまる)
■たとえ、どれほど複雑な退社理由があろうとも
たいてい「一身上の都合」と表現される。
結婚して辞めるときも「一身上の都合」
売上をくすねてバレて解雇されたときも「一身上の都合」
な〜んとな〜く、退社するときも「一身上の都合」
(提供者:しお)
■○部分には適当な数字が入り、
「○階にいる連中」を広く指す。
社長室や役員室がワンフロアーに集まっている場合、
決定した方針などを説明するとき
「これ、8階の意向だからね」などと言う。
(提供者:りえぞー)
■選手、先制、大明神などに続く謎の呼び名、
それが「御大」である。
「あ、それ、御大に訊いたらすぐにわかるよ」
(提供者:monika)
■先方は女性が訪ねていくと上機嫌になり、
あまり無理を言わないという傾向がある。
だからこそ、新人のオンナノコを抜擢したわけだが、
さすがに彼女は最初の訪問を前にして緊張している。
そこで経験豊かな上司が彼女にひとことアドバイス。
「大丈夫だよ、オンナノコには優しいから」
(提供者:ぴんはし)
■飛び込みの営業マンは、
挨拶もそこそこにこう言うという。
残念ながらほとんどの場合、
社長に取り次いでもらうことはない。
(提供者:潮)
■火消し部隊が到着する以前、
火を噴くプロジェクトは爆弾を抱えており、
たいへんなことになっており、
それを知らずに任されてしまった人は
地雷を踏んだのちに火だるまになるわけであるが、
火消し部隊がようやく鎮圧した企画は
たいていにおいて「凍結」することになる。
それでは本日はこのあたりで失礼させていただきます。
「ナベ」問題、「鈴木は3人おりますが」問題については
明日、アシスタントのほうから発表させていただきます。
みなさまからのメールをお待ち申し上げております。 |