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第17回 オトナの基本用語:その17 ■■■
夢のなかでしゃべっているとき
「これはオトナ語だ!」とひらめいて
思わずその言葉をメモにとった。
しかし、メモをとったのも夢のなかだった。
そんなメールが届いている。
夫が寝言を言っていて、耳を傾けてみると
「すみません、それはですね、要は……」と
オトナ語を駆使した謝罪を行っていた。
そんなメールが届いている。
投稿したいが主婦のためネタに乏しく、
仕事から帰ってきた夫を問いつめて
オトナ語を訊きだした。
そんなメールが届いている。
全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
たとえあなたと私が初対面でも
お世話になっております。
たとえあなたが元気いっぱいでも
お疲れさまです。
たとえあなたと会ったのが深夜でも
おはようございます。
たとえいまが深夜の2時でも
お先に失礼します。
どなた様か存じませんが
お世話様です。
社会に飛び交う謎めいたオトナ語を紹介する当コーナー、
就職活動真っ最中の学生たちが
こっそり読んでいることでも有名です。
合い言葉は「なるはや? 午後イチ? ペンディング?」
謎めいたオトナ語を叡智の光で照らせ。
紙詰まりのコピー機に苦戦するあなたへ吹く一陣の風、
それがすなわち「オトナ語の謎」!
兼ね合いからハケンさんにインセンティブをもたせつつ、
上のオトウサンとシフトしながら
手前どものにんげんが参上いたします。
社内にはいると思うんですが、
いやいやいやいや、おしりまでご笑覧くださいませ。
(提供者:ちっころ)
■ある日、天才発明ビジネスマンは気づいた。
「失敗したコピーの裏は白いじゃないか!
これをメモ用紙がわりに使えばいいじゃないか!」
それを聞いた天才発明ビジネスマンの妻は言った。
「すばらしいわ、アナタ! あと、何か、
内部で使う文書をプリントするのもいいわね!」
そのようにして、「裏紙」という言葉が生まれた。
最初のネタからこんなにトバして大丈夫だろうか?
(提供者:わがし)
■ほとんど同じです、ということ。
「要するに、A案ニアリーイコール、B案だからさ」
「切り口変えても、ニアリーイコールにしかならないよ」
「ひつじニアリーイコール、ヤギっていう意見は
認識不足だといわざるをえないね」
不思議な呪文、ニアリーイコール。
わざわざ英語で、ニアリーイコール。
(提供者:Yoshihiko)
■それにかける費用と、それが及ぼす効果を
くらべること。漢字を見ると納得だが、
使われるときは「ヒヨウタイコウカ」という
ひとまとまりの、妙なイントネーションで
使われることが多く、新社会人などは戸惑う。
「ヒヨウタイコウカを考えると見合わないな」
「もっとヒヨウタイコウカを分析しないと」
ヒヨウタイコウカ。天然記念物ではない。
(提供者:みゆきお姉ちゃん)
■言いわけすること。
「これは言いわけですけどね」とは
口が裂けても言えないが、
「先にエクスキューズしておきますが」とは
言えるからおもしろい。
ちなみに部下をしかりつけるときは
「言いわけすんな!」と日本語になり、
「エクスキューズすんな!」とは
言わないから不思議である。
(提供者:Cazy3)
■いろんな人がいるから、
いろんな意見があって、
それでも結論は出さなきゃいけないし、
世界は平和に回ってほしいから、
ほら、今日もみんなで最大公約数をとろうよ。
いろんな意見が重なっている部分をとろうよ。
だって、平和がなによりなんだもん。
(提供者:Taka)
■処理する、の意味で使う。おもにマイナスのもの。
「そこで出るマイナスはお宅で吸収してよ」
「多少の赤字は出ますけど最終的には吸収できますので」
「そこの経費は最後に吸収する形で」
似た使いかたで「カブる」があるが、こちらは
マイナスをあえて引き受けるというニュアンス。
(提供者:ハナ)
■できあがったところから順次納品していく
という意味であり、なかなか美しい表現である。
たとえ爆弾を抱えた修羅場であろうとも、
「いや、もう、ほんと、申し訳ないです!
すんませんが、できたとこから送りますんで!」
などと汗をかきかき告げるより、
「時間もないことですし、五月雨式に送りますね」
と、さらりと言ってみたいものである。
待たされてるほうはどう思うか知りませんが。
(提供者:sunao、りす、よーこ、ふみ)
■批判的な、という意味もあるが、
おおむね「決定的な」「重大な」の意味で使われる。
「クリティカルな問題ですから慎重に」
「なにぶんクリティカルなアイデアに欠けます」
「それはべつにクリティカルじゃないよね?」
発音したとき気持ちよいのでつい乱発しがち。
(提供者:ももたん、ワカマル、あひる、CUE)
■オトナにとって会社は戦場なのだ。
現場で働く人のことは「兵隊」と呼ぶのだ。
「そっち兵隊足りてる?」
「ちょっと兵隊まわしてくんないかなあ」
オトナにとって会社は戦場なのだ。
(提供者:アンズの友達)
■戦場で働くオトナは非情なのだ。
現場で働く人のことは「駒」扱いなのだ。
「どうにも駒不足でねえ」
「若いけど、駒としては十分戦力になる」
オトナにとって会社は戦場なのだ。
(提供者:しん)
■オトナの働く戦場に、業者の人たちが
一時的に陣取った場合「○○軍団」と呼ばれる。
○○には会社名や業種名が入る。
「第2会議室、撮影軍団がいるから使えないよ」
オトナにとって会社は戦場なのだ。
(提供者:マープ)
■オトナの働く戦場では結果が求められるため
数字が芳しくない部署には、他社もしくは他部署から
助っ人が送り込まれる。いわゆる傭兵。
「あの部署、ほんとにヤバいらしくて
来週から傭兵呼ぶらしいよ?」
オトナにとって会社は戦場なのだ。
(提供者:マープ)
■オトナの働く戦場では結果が求められるため、
数字が著しく芳しくない部署には
他社もしくは他部署から何人も助っ人が送り込まれ、
緊急チームが組まれることもある。いわゆる外人部隊。
「外人部隊に全部任せて平気かなあ」
オトナにとって会社は戦場なのだ。
(提供者:木村)
■オトナにとって会社は戦場であり、
しばしばオトナはミッションを
遂行しなくてはならないのだ。
ミッションを遂行、というと聞こえはいいが
ようするにふつうの業務をやることなのだ。
気分だけでもジェームズ・ボンドなのだ。
(提供者:けーすけ39才)
■後輩に向かって先輩が言うセリフだが、
実際に出世したときに言うことはあまりない。
たんに机が大きくなったとか、
携帯電話が支給されたとか、
名刺の裏に英語の名前が入ったとか、
初めてバイク便を使ったとか、
「領収書ください」とレジで言ったとか、
なんかの間違いでその人宛にお中元が来たとか、
社長の名刺をもらっちゃったとか、
B定食じゃなくてA定食を注文したとか、
有休使って休んだとか、残業断ったとか、
靴がピカピカだとか、パーマをかけたとか、
じつにくだらな〜いレベルで使われる。
(提供者:ソーホー)
■いつまでも学生気分じゃ困るんだよ、キミ!
そこまでマンガみたいに言われることはないにしても
「学生気分の抜けないやつだなあ」くらいの
言われかたをすることはしばしばある。
でもこれ、言われたほうも困るよなあ。
(提供者:アリス)
■若手のなかで前途有望な社員に対して使われる。
「先生」「大明神」の若手版である。
「それぐらいやって当然だろう。
あいつはウチのエースだからな」
(提供者:yama)
■ところが「くん」がつくと、とたんに逆の意味に。
「え? また休みか? はぁ〜、
ウチのエースくんにも困ったもんだなあ……」
(提供者:ごう)
■ダメなやつが3人いる場合、まとめられがち。
しばしば「三バカトリオ」などとも呼ばれる。
「え? また三バカトリオだけマイナスか?
はぁ〜、どうにかならんかな……」
(提供者:まりん)
■あいつはこういうところがほんとうにダメだ。
あの人はなんでああいう言いかたをするのだろう。
同じミスが続くのはこういう問題があるからだ。
数人でそういうふうに誰かを分析したあと、
若干の後ろめたさから誰かがフォローする。
誰か「いい人なんだけどねー……」
一同「いい人なんだけどねえ〜」
(提供者:Cazy3)
■ねえねえ、こーゆーの得意でしょ?
(これやってください)
あそこの会社、こーゆーの得意だから。
(これ、あそこにやってもらおうよ)
こーゆーの得意な人がいるじゃないですか。
(ほかの人に頼んでください)
(提供者:るみ)
■あいかわらず就職氷河期だそうです。
学生のみなさま、この言葉を見て、
いちいち落ち込んでいてはいけません。
つぎへつぎへと向かいましょう。
目にした「ご縁がありましたら」の数だけ、
あなたはオトナへの階段をのぼっているのです。
本日はこのあたりで失礼させていただきます。
例によって投稿をお待ちしております。
「この言葉は出ちゃったカナ?」と思っても
気にせずどんどんメールしちゃいましょう。
それではみなさん、よい週末を。 |