BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第22回 オトナ語実践編:その2 ■■■

前回より実践編へ突入したオトナ語であるが、
さっそくたくさんのメールが届いた。
全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。

まずは前回のおさらいから。
実践編として以下の問題を提示した。


  実践問題その1 

 7月末日に、納品する予定だったものが、
 どうやら半分しか納品できません。
 すべてを納品できるのは、8月中旬になりそうです。
 納品先は、株式会社オトナ。先方の担当者は渡辺本部長。
 「大丈夫なんだろうね?」と再三質問されていたのですが、
 あなたは「絶対大丈夫です」と答えていました。
 しかし、どうやら無理です。
 先方に、その旨、伝えなければなりません。
 さあ、諸先輩方はどのように伝えますか?

 

さて、全国の諸先輩方から、これぞ模範解答、
といえるものがいくつも寄せられた。
全文掲載すると長くなってしまうため、
わかりやすい提示として、
全国から寄せられた謝罪を部分的により抜き、
そこに込められたテクニックを解説してみたい。

「さて、先日発注いただいたチラシの件ですが、
 7月末全納が難しい状況でございます。
 こちらの都合を申し述べさせていただきますと、
 7月末に半納、残りを8月中旬に納品と
 させていただければと思います。」
 (提供者:kushi)

■超クール。あまりにも冷静な語り口に、
 怒ってはみっともないと思えるほど。
 途中に組み込まれた
 「申し述べさせていただきますと」の
 オトナ具合が絶妙である。

「大変申し訳ないのですが、予定通り納品できるのは
 半分程度になってしまう見通しです。
 8月中旬には、全部を完全な形で納品できるのですが、
 どうかそれでご容赦いただけませんでしょうか。」
 (提供者:MAMAMA)

■注目すべきは「見通し」であろう。
 つまり、「無理です」とは言ってないのである。
 ほんとうは「無理」なのに、
 「無理そうです」と告げる。しかしながら、
 返す刀で全納する時期を「8月中旬」と明言。
 自己矛盾を封じ込める傑作といえよう。

「大変申し訳ございません。
 納期(7月末日)に全サーバの納品が
 不可能なことが判明いたしました。
 先行して、25台は納品できるのですが、
 あと半数が諸般の事情により8月中旬になります。」
 (提供者:もぞ)

■「先行して」に注目である。
 そもそも納期は「7月末日」なのだから、
 25台は約束どおりの納品なのである。
 ところが、文中ではそれを「先行」とすり替える。
 後半の「諸般の事情により」もニクイ。

「要点を申し上げますと、
 7月末納品だった商品でございますが、
 関係部署に漏らさず手を尽くしまして、
 全納品数の半数をようやく
 確保させていただくことができました。」
 (提供者:jijiぃ)

■おお! いつの間にか手柄になっている!
 これぞすり替えマジック!
 むろん、この前後にお詫びはあるわけであるが、
 キモの部分には謝罪のイメージをあえて払拭。
 「関係部署に漏らさず手を尽くして」いただいて
 どうもありがとうと言いたくなる。

「現在の進捗状況を申し上げますと、
 商品の半数はお約束どおり
 7月末日納品で社内工程も順調に進んでおりますが、
 残り半分につきましては、
 8月中旬納品にならざるを得ない状況であることが
 判明いたしました。」
 (提供者:manabu0033)

■前半と後半のドラスティックな変化が白眉。
 半分は「社内行程も順調に進んで」いるのに、
 残りは8月に「ならざるを得ない状況」!
 両者をつなぐのは共通する冷静なトーン。
 さらりと使った「進捗状況」も見逃せない。

「先ほど、弊社工場製造部門より連絡が入りまして、
 ○○の出荷検査にて、
 大量の不具合が発見されたとのことです。
 詳細は追ってご連絡致しますが、
 現時点の状況では、7月末にお納めできる数量は、
 半数ほどになってしまいます。」
 (提供者:ASinJP)

■こちらは速報性をアピール。
 いままさに現場でアクシデントが起きていると、
 とにかく問題は納品時期よりも
 アクシデントのほうなのだと、
 おまえはのんびりメシ食ってるかもしれんが
 こっちは大騒ぎなんだと、無鉄砲に主張。
 「現時点の状況」という絶妙な日本語のよじれ具合も
 慌ただしさをアピールする武器のひとつだ。

「で、残り半分は8月中旬頃の納品としか
 イマイマわかっていなくてですね、
 ただこれバッファを取って、
 最悪の場合ということですので、
 ひょっとしたら若干早まる可能性はあるんですけど、
 1週間も早まる、ということには
 なりそうにないんです。」
 (提供者:マキコ)

■わけがわからない! 
 先方の怒りを煙に巻くオトナテクニック!
 こちらは電話での説明を想定。
 最悪、ひょっとしたら、若干、
 可能性はある、なりそうにない、
 と畳みかける高等技術。
 要するにいいんだか悪いんだか
 よくわからない。さすがの渡辺本部長も
 「……頼むよ、ひとつ」とうなったとか。

「弊社への台湾工場からの部材納期につきまして
 部材の生産を行っております台湾の工場から、
 先般アジア地域において猛威を振るいました
 SARSの影響により部材生産に遅れを生じ、
 弊社へ納期迄の部材完納が
 不可能である旨の連絡が参りました。」
 (提供者:kokoro)

■いったいぜんたい悪いのはどこなのか!?
 弊社なのか台湾なのかSARSなのか部材なのか?
 よもや部材が悪いということはなかろうけれど
 ひょっとしたら部材が悪いのかもしれないとすら
 思わせる息継ぎ無用のオトナ語ラッシュ!
 とにかく不可能なことはよくわかる。

「全てこちらのミスです。
 7月末に200ケース、残りは2週間以内に
 必ず納品致します!」
 (提供者:佐伯)

■こちらも電話での説明を想定。
 ポイントは「2週間以内」である。
 「8月中旬」というのと「2週間以内」では
 印象が著しく違う。

「はい、8月中旬には、
 全部納品できる見込みでございまして、
 もうこれは絶対大丈夫でございます。
 その間も、2週間まったく音沙汰なし
 というわけではございませんで、
 例えば、一週間ごとに
 4分の1ずつ納品させていただくですとか、
 いろいろと努力させていただくことも
 ご提案申し上げることがございます
 かもしれませんので……」
 (提供者:ひろひろ)

■こちらも電話バージョン。
 「一週間ごとに4分の1ずつ納品」と、
 じつに具体的な提案をしながらも、
 最後が「かもしれません」とは!
 まちがいなく、後日、
 「言った言わないの問題」になりそうである。

「えっ、トラブルの内容ですか、
 ええと工程の自動検査機の納入が遅れておりまして、
 はい、暫定工程ということで
 全数目視確認で対応することで、
 保証させていただきたいのですが、はい。
 で、目視検査ですと、どうしても、
 自動機の倍以上はサイクルタイムが
 掛かってしまいまして、はい。」
 (提供者:吉澤)

■内容をかいつまんで説明すると、
「製品を調べる機械がまだ届いてないから、
 いっこいっこ目で確かめてるんだよ」
 ということである。

その他、多くの投稿、どうもありがとうございました。
ほかに提示されたテクニックとしては、
「第一報で8月下旬と知らせておいて、
 のちに中旬へと戻す」
「就業時間前から何度も電話して
 先方の机にメモを残す」などがありました。
また、ほとんどのみなさんが、
「一報入れたあと直接先方へうかがって謝罪する」ことを
前提にしていらしゃったことを報告しておきます。
お疲れ様です。お世話様です。

それではテンポよく次回の問題を発表!
つぎの問題はシンプルに行きますよ。
ひとことで答えてもらいます!


  実践問題その2 

 あなたは、渡辺本部長に向かって
 金曜日夕方の会議が長引いています。
 どうやら結論は出ません。
 あなたには約束があります。
 同じような話がループしています。
 会議を終わりへ向けるひと言をお願いします。

 

この実践問題の受付は終了いたしました。
 たくさんの投稿、ありがとうございました!


■■■ オトナの基本用語:その22 ■■■

雪崩
(提供者:natsuki)
■うずたかく積まれた書類が
 その重みに耐えきれず崩れること。
 平素あまりにも当たり前に使っている言葉であるが、
 言われてみれば辞書に机上を想定した説明はなく、
 学生の机に書類が積まれることも考えにくいため
 じつはオトナ語ではないだろうか、と。

夜の部
(提供者:まつも、けにぶに)
■接待など、酒の席を指す。
 接待を切り盛りする人は、
 夜の部担当、などと呼ばれたりもする。
 「渡辺本部長、今日はもうお帰りですか?」
 「いやいや、これから夜の部だよお。まったく」
 などと言いつつ、まんざらでもない様子。

ブー
(提供者:広橋、ちよのすけ、さーまん)
■これまたローカルかと思いきや、複数の投稿あり。
 要するに、部長のことであり、名前の下につける。
 「岡田部長」→「岡田ブー」なのである。
 一説によれば、部長を示す「B」から派生したとか。
 「岡田部長」→「岡田B」→「岡田ブー」
 ひいては「おかブー」などと呼ばれる。
 投稿者はいずれも女性であり、
 ひょっとしたらOLの使用する隠語なのかもしれぬ。

……何階ですか?
(提供者:13orek)
■オトナは、エレベーターのなかで
 半端な知り合いとふたりきりになったとき、
 その重い空気を打ち破るために
 四十八通りもの切り出しかたを身につけているのだ!
 エレベーターのドアが閉まり、沈黙が訪れるその前に。
 「……何階ですか?」
 違うフロアーのよく知らない人と乗り合わせたときは
 とくに重宝するフレーズである。

近くまで来たものですから
(提供者:Shinko)
■と、言いつつ、近くまで来たから寄ったわけではない。
 周到に準備し、なんなら少し暇を潰し、
 タイミングを見計らって来たのである。
 きっとその人は用件を隠し持っているのだ。

基本用語のほうも、これまでどおり募集します。
あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語基本」としてください。
「これはもう出てたっけ?」というものでも
気にせず自由に気軽にメールしてください!
ちなみにネタの説明文は
こちらで書き起こしておりますので、
適当に書いていただくだけでかまいません。


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、アシスタントです。
前回、みなさまのパソコンに単語登録されている
オトナ語を募集したところ、
じつにたくさんのメールが届きました。
金曜日にたっぷりお知らせいたしますので
今回はそのさわりとして少々掲載いたします。


●          ●
入力:いじょう
変換:以上よろしくお願い致します。

入力:おそれ
変換:恐れ入りますが、よろしくお願い致します。

やはり、メールの文章で
頻繁に利用する文章を登録しています。
(提供者:はなこのいま)


●          ●
パソコンの変換登録に設定している言葉です

→お世話になります

→難航しております

→よろしくお願いいたします

あとは「い(頭文字1文字)」で自分の名前フルネーム
漢字変換一発ででないので・・・
組織に所属していたころは、組織名の
頭文字1文字で組織名。
(提供者:やえ)


●          ●
私の端末で登録されているフレーズで、
もっとも重宝しているものを
一つ御報告差し上げます。

かくにん
 →何卒ご確認下さいますよう、
  宜しくお願い申し上げます。

これ、メールにファイルを添付するときは
必ず使いますから。
便利便利。
(提供者:いしー)

そのほか、あっと驚くような登録が
多数寄せられました。
金曜日をお楽しみに!
本日はこのあたりで失礼させていただきます。


あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
そのほか、当コーナーへの感想や、
オフィスからの自由なお便り待ってます!
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-07-16-WED

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