オトナ語の謎。 オレ的にはアグリーできかねるんだよね。 |
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第50回 オトナ語発展編:その13 ■■■ 全国のオフィスでがんばる諸先輩方、 お世話になっております。 早いもので、「オトナ語の謎。」も 連載第50回を迎えることができました! ありがとう、おめでとう、ありがとう! 見切り発車の垂直立ち上げでゴーした当コーナー。 殺到するメールに現場が火を噴くこともあったけれど、 諸先輩方のお力添えにより 今現在はバンバンザイということになっているとの声が 手前どもにも聞こえてきております。 さあ、50回の今回は、 オトナ語発展編の最終回! 全国から寄せられた珠玉の名作投稿を えいやっとまとめて紹介していこう。 ちなみに、そのお題は以下のようなものでした。
本日は駆け込み投稿も多かったため、 どんどん作品を紹介していきます。 まずは糸井重里作詞によるこの曲から! 『春咲小紅』 いつもお世話になり、ありがとうございます。 かねてより提携案をご提示いただいておりました、 コラボ商品案「春咲小紅」に関する 弊社のミニミニ企画をご覧に入れたいと存じます。 ぜひ一度ご足労を賜りたいとの弊社上職の意向により、 とりいそぎご連絡申し上げます。 小職も担当者といたしまして、 このたびのご案内の運びとなりましたこと、 ふわふわと舞い上がるような喜びに耐えません。 なかなかイクザクトに花咲く方向のご回答ができず、 ながらくお待たせいたしました。 さぞや指折り数えて お待ちかねのこととご推察申し上げます。 お返事させていただきましたのは ウイン-ウインの方向です。 (添付ファイルをご確認くださいませ。) 本文中に、赤入れをさせていただいた箇所がございます。 詳しくは次回のミーティングの際に 小職よりご説明いたします。 手前味噌で恐縮ではございますが、 今日はなんだか小奇麗にまとまったと自負しております。 ご多忙中とは存じますが、ご来社の日程等合わせまして、 ご検討およびご連絡を賜りますよう、 よろしくお願いいたします。 (提供者:さとさと) ■ほぅらはぁるさぁきこぉべぇにぃ〜。 あいかわらずの職人芸。 「見に見に見に来てね」を「ミニミニ企画」に、 「いつ咲くかしら」を「イクザクト」に、 「私に会えばわかります」を 「詳しくは次回のミーティングの際に 小職よりご説明いたします」に変換。 見事、小奇麗にまとまっております。 『ひと夏の経験』 いつも一方ならぬご愛顧を賜りまして ありがとうございます。 この夏に御社とお取引をさせて頂きまして 当社営業成績は今までにない成長を遂げさせて頂きました。 この度はその特別なご厚情に対し 御社のためだけにあたためておりました 当社の特別プランをご提供致したいと考えております。 どうぞご笑納下さいませ。 このプランは全世界の女性全ての最重要案件でありまして 今後御社の業績に貢献できうるものと考えております。 ただしこれは当社企画者の胸の内にございまして ご送付出来かねますので 近々のうちに担当自らお届けにあがらせて頂きます。 また当プランはその性質上、 一度しかご提供できませんので、万障お繰り合わせの上、 お心づもりをなさってお待ち下さいますよう 何卒宜しくお願い致します。 なおこのプランは極秘案件にて ご提供の際にはご担当のみの立ち会いとさせて頂きます。 (提供者:はなな) ■こちらも見事な出来映えです。 極秘案件にて担当のみの立ち会いというあたりが わけもなくドキドキします。 つぎは若干新しめの曲から。 『未来予想図‖』 (株)中村運送様 平素は大変お世話になっております。 弊社が上場してから3年目の春となりました。 開始当初はバイクによる輸送だけでしたが、 現在は大型車両を用いた夜間輸送まで行って頂きまして 大変助かっている次第でございます。 配送完了後の『ア・リ・ガ・ト・ウ』というサインは ロゴこそ変わりましたが、 お客様には相変わらず好評であります。 さて、次の4四半期における 発注見通しを提出させて頂きます。 弊社がこうした好業績を出していられるのも、 すべては御社の協力のおかげでございます。 裏を返しますと今後の業績も御社との 協力体制の下での事であると考えております。 これからも末永いお付き合いをよろしくお願い致します。 株式会社 ドリームネット・ヨシダ (提供者:juvenile_J) ■下請けさんとの関係も良好のようです。 中長期的な見通しをたててみたところ 思ったとおりにかなえられていくのです。 つぎは、常連「ぬばたまの」さんが 満を持して大作を生み出した! 『うさぎとかめ(その壱)』 三営業日前のことだった。 午後イチで届いた書類の山をやっつけている カメの前で内線電話が鳴った。 「ね、カメ選手。三分ほど、いいかな?」 声の主は渡辺本部長であった。 よりによってゴトウビにつかまってしまうとは。 内心舌打ちをするカメに 渡辺本部長はにこやかに話しかけた。 「先日のアレ、経費で落とせるかなあ」 「アレですか? 私の口からはなんとも申し上げられませんが‥‥」 「ま、それはそれとして。 カメ先生、今度の火曜日、体空いてる?」 「とおっしゃいますと?」 「いや、これは8階の意向なんだけど。 ここはカメ大明神でいこう、と」 渡辺本部長は近々に行われる マラソン大会について一気にまくし立てた。 「‥‥あの、出場人事を いったんペンディングしていただくわけには?」 「難しいねえ。先方にはすでに返答済みなんだわ」 「‥‥これ、業務命令ですか?」 「ま、そう受け取ってもらっても差し支えないかな」 かくして、カメはマラソン大会の スタートラインに立つことになった。 (提供者:ぬばたまの) ■んんん、気になるところで終わっているけれど? なんと、この作品は連作なのです。 というわけでこの続きはまたあとで! とりあえず昔話から一発行ってみましょう。 『裸の王様』 渡辺本部長「おい。ところでほら、 例のプレゼン資料はまだか?」 本田「はい。こちらのヘロンビジネスコンサルティングの 志田手氏にご協力いただいて順調に進捗してます。 これなんですけどね。 それが、いい具合に上がってきてるんですよ」 渡辺「ほう・・・って、これは?・・・ん・・・?」 志田「はっ、ではここは私からご説明申しあげます。 なにしろご存知のとおり、 プレゼンのコアとなるソースを マサチュ−セッツ工科大学の 比較応用ネイキッド学のキング教授の論文に 求めてるというベースがございまして。 これを安易に日本語にすると、 逆にこちらの目指すべきデザインと 異なるところで了解される リスクが高くなるかと存じます。 たしか先方は、英語に堪能な方ばかりとか‥‥。 ここは、その環境を味方にして、 敢えて英語で!と‥‥。 まあ、御社も課長以上の方には高度な英語力が 要求されている組織だと社長にお聞きしたので、 プレゼンも渡辺本部長自ら行っていただければ 問題ないと当チームで勝手に 判断させていただきました。 まあ、英語力のある方なら、英語のままの方が ニュアンスが伝わることは一目瞭然。 本部長も当然おわかりになっていただけるかと」 渡辺「う、うーむ。なるほど、なるほど‥‥ これは‥‥うーん。悪かない。うん悪くないぞ。 いや、うーん。なかなかどうして‥‥ なあ本田君!課長の君はどう思う?」 (提供者:jimmy) ■うーーん、ペーソス! 「王様は英語が苦手だ!」と叫ぶ 純真な子どもが登場しないかぎり、 渡辺本部長は裸のままで プレゼンの現場に赴かなくてはならないのだろう。 さ、続いては短いやつ行きましょう! 『へぇ〜 (トリビアの泉より)』 その件につきましては、手前の勉強不足故 これまで全く存じませんで誠に不面目至極でございますが、 この度初めて知りましてまさに目から鱗が落ちる思いがし、 ただ今非常に感心いたしておるところでございます。 (提供者:アンダルシアの猫) ■「へぇ〜」の意味を伝えるだけでも オトナはこのようにもってまわることができる。 そのくせ「時間がない!」と年中言っている。 『あっしにはかかわりのねえことでござんす (『木枯らし紋次郎』より)』 「担当部署にお回しします」 (提供者:さとさと) ■渋いセリフもオトナにかかればこのとおり。 せめて一発で担当部署に回しておくれ。 『同情するなら金をくれ! (ドラマ『家なき子』より)』 「事情をお察しいただけるのでしたら、 今、契約していただけませんか!」 (提供者:さとさと) ■うははははは。でもほんとは言えないんだろうなあ。 「さとさと」さん、お世話になっております。 続いては夏目漱石の名作の冒頭部分をオトナ語で。 『我輩は猫である』 はじめまして、 わたくし株式会社サマーアイの猫と申します。 あ、お名刺ですか。ありがとうございます。 申し訳ございません、 こちら、あいにく切らしておりまして。 (NUNO) ■短っ! けど、うまい! さあ、つぎは「ぬばたまの」さんの大作、 その第2話をお届けします。 マラソンレースに出ることになった亀さんは その後どうなったのか?! 『うさぎとかめ(その弐)』 カメはスタートラインに立った。 対戦相手はウサギである。 スキルの点でウサギに分があるのは 誰の目にも明らかだった。 ヨーイ、ドンで飛び出したウサギは 瞬く間にカメを引き離し 丘のふもとにたどりついた。ところが。 「いやあ、出先まで追いかけまして申し訳ありません」 ほっと一息つくまもなくウサギは クライアントにつかまってしまった。 そう、ウサギは失念していたが、 本日はゴトウビなのである。 その事実をウサギは丘を登りながら 痛いほど知る羽目になった。 「ちょっと近くまで通りかかったので ご挨拶だけでもと思いまして」 「あ、ウサギさん。今よろしいですか? 先日のアレですけどね」 「再三再四申し訳ありません。 例の件、火を噴いちゃいまして」 「仮にフィックスしておいた件ですが その後の進捗状況はいかがでしょう?」 次から次へと襲い掛かってくる クライアントたちの相手をしつつ ウサギはなんとか丘の中腹までたどり着いた。 「すみませんが只今取り込み中でして 帰社後にお返事させていただきます」 最後のクライアントに伝えると、 ウサギはその場にへたり込み そのまま眠り込んでしまった。 その間、カメはただひたすら歩き続けていた。 そしてその間、カメの周囲では渡辺本部長の配下の者達が カメに襲い掛かろうとする クライアントたちの相手をしていた。 業務命令を出した以上、 部下の失態は上司の責任で最大限防ぐ必要がある。 ここはウルトラCの垂直発進でコトにあたらねばならない。 火の粉は払え。ボヤは消せ。火達磨になる前に対処せよ。 渡辺本部長の指令の下、 火消し部隊は見事にその役割を果たした。 こうしてカメはウサギよりも早く ゴールにたどり着くこととなった。 (提供者:ぬばたまの) ■いやあ、オトナ語満載の『ウサギとカメ』! ところが話はここで終わらないのです。 このあとの第3話で涙の完結! そのまえに一発紹介しましょうか。 ええと、なになに? パソコンソフトが強制終了しちゃった? 『強制終了』 大変恐縮ですが、さきほどの操作に不都合がございまして 誠に勝手ながらこのプログラムを 終了させていただくことをお知らせいたします。 なお、誠に申し訳ないのですが それ以前に保存されなかった分のデータにつきましては 当方では責任を負いかねますので なにとぞご了承ください。 データはどうなるんだって‥‥ いや、ぶっちゃけた話、 あの、ほんとに申し上げづらいんですが 保存されなかった分に関しましては 一旦白紙に戻るということでして‥‥ え? そんなのない? そうですよね、そうですよね。 私どもといたしましてもできることなら なんとかと思うのですが、 物理的に難しいこともありますし なにぶん上マターですので 現場の人間としてはいかんともしがたく 手の打ちようがないんですよ。 うーん、何とか取り計らってと言われましてもねぇ‥‥ こちらとしては、これでゴーするよりないわけでして。 でなければ煮詰まるどころかほかの所まで 飛び火して焦げ付くばかりだっていう声も聞こえてくるし。 復旧の際はできる限りのお手伝いを させていただくということで ここはひとつ泣いていただけませんでしょうか。 平にご容赦! その代わりといっちゃなんですが 今度、チョコレートパフェでも。 (提供者:ふいづ) ■なんだこりゃあ。 オトナ語を使って強制終了を告げる パソコンソフトはイヤだ! つぎは種田山頭火の名句をオトナ語で表現します。 『分け入っても分け入っても青い山』 客 「すみません、営業2課の青山課長は いらっしゃいますでしょうか」 受付「はい、青山は応接室で お待ち申し上げておりますので、 3階までおあがりください。 こちらのエレベーターを使われましても、 そちらのほうから エスカレーターに乗っていただきましても、 青山のおります応接のほうにつきますので」 (提供者:RS) ■いやはや、そんな解釈もありますか。 つぎはサリンジャーの名作をオトナ語で! 『ライ麦畑でつかまえて』 「えー質疑応答の時間は設けてございますが、 デーヴィッド・カパーフィールド式の ご質問はご容赦願います」 (提供者:夢遊人) ■いやあ、ホールディンもすっかりオトナになったなあ。 ていうか、これほどオトナ語との ミスマッチを感じる題材もないかもしれない。 つぎは発展編のラストに寄せたこんな投稿。 『エンディングまで泣くんじゃない。 (『MOTHER』のコピーより)』 このようなことをお願いいたしますのは お客様に多大な努力を強いることと なることが予想されます故、 こちらとしても大変心苦しいのでございますが、 どうか終幕を迎えますまでは 落涙を控えていただきますよう、 よろしくお願い申し上げます。 (提供者:アンダルシアの猫) ■いやあ、どんなフレーズも へりくだるとおんなじに聞こえちゃうなあ。 さあ、『ウサギとカメ』のその後はどうなった? なぜか涙の完結編! 『うさぎとかめ(その参)』 長いレースは終わった。 だが、渡辺本部長の戦いは終わっていなかった。 歩き疲れたカメに「今日はNRでよい」と指示を出すと、 渡辺本部長は大会本部テントの役員来賓席に向かった。 「お、ナベさん。いいレースだったねぇ」 「おかげさまで‥‥」 「渡辺さん、お手柄でしたなぁ」 「なにをおっしゃいますやら‥‥」 「いい部下をお持ちで」 「いやいやいやいや‥‥」 切らさぬよう通常の倍用意しておいた名刺の在庫が 底をつきかけた頃、ようやく挨拶回りが終わった。 このあと帰社して本日のレースのレポートを作成し 本社宛に送付して、 部下の時間外手当の一括請求を行なわなければならない。 皮肉なことに渡辺本部長自身には 役職付ゆえ手当てが出ないのだが。 えびのように丸まった腰を伸ばして 渡辺本部長は立ち上がった。そして。 「お、おまえら、こんなところで何してるんだ!」 そこにはこのレースにかかわった 渡辺本部長の部下が全員集まっていた。 「渡辺本部長、 ひとりで全部抱え込んでちゃいけませんよ」 「これは全員野球のプロジェクトだとおっしゃったの、 渡辺本部長でしょ」 「本社宛のレポート、形にしておきました。 目を通してくださいね」 渡辺本部長は言葉を失った。 部下に向かって深々と頭を下げた。 「もう、渡辺本部長。お顔を上げてくださいよ」 にじんだ視界の中にカメの姿があった。 直帰のはずのカメもまたそこにいた。 「さ、夜の部、夜の部。 例の店、押さえておきましたから」 (提供者:ぬばたまの) ■おおっ、最後の最後で 渡辺本部長がヒーローに! このまま「発展編」を終わっても美しいのだが、 ひねり上手な投稿者のみなさんに敬意を表して 最後にこんなものを添えておこう。 『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。 (『ハムレット』より)』 公男は上着から一通の封筒を取り出し、 そっと、渡辺本部長の机上に差し出した。 ──「進退伺」 (提供者:さとさと) ■というわけで、おあとがよろしいようで。 月曜日に始まる新展開のコーナーで またお会いしましょう! また参加してくださいねー。
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2003-09-24-WED
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