オトナ語の謎。 オレ的にはアグリーできかねるんだよね。 |
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第56回 オトナ語専門用語編:その6 ■■■ 送られてくるメールにしばしば書かれているのが 「私たちはふつうに使っているので これが投稿するに値するものかどうか よくわからないのですが送ってみます」 といった一文である。 ところが読んでみるとどうしてどうして。 十分に現代日本語を逸脱した おかしなおかしなフレーズがつづられている。 そういった特異な専門用語を 本日もたっぷりご堪能いただきたい。 まずはテーマの紹介から。
そんな専門用語があるのかと驚く以前に、 そんな業界もあるのかと感心できるのが 当コーナーのもうひとつの特長。 最初はこんな業界からの投稿です。 【石材業界:墓石の納品ミスを電話で伝える】 「今日来た尺2、 亀腹水垂れで頼んだんだけど、普通で来てるよ。 それに竿は玉入ってるし、色合ってないし。 山良くないの? これ座布団つくから才数17くらいかな? 遅れる分、才単価勉強して着値でいくらかな?」 ▼現代語訳▼ 「今日届いた36cm角の墓石は、 上台は亀腹仕上げ中台は水垂れ仕上げの 高級型で頼んだはずですけど、 加工をしない四角いままの形で納品されました。 石塔の上の部分には、 石の柄に異物が入ったような模様がありますし、 柄の入り方が全体に均一ではありませんが、 採掘場で悪い層にあたっているのではないですか? この石塔にはスリン(飾り部材)が追加されてますから 全体の体積は約0.38立方メートルですね。 納品ミスで遅れる訳ですから、 1才(1尺立方体)あたりの単価を下げていただいて、 運送費も含めた金額を教えてください」 (提供者:わかだんな) ■石材業界とは恐れ入った。 墓石の納品ミスなんてのもあるわけだ。 「竿」や「座布団」など、イキな専門用語が並ぶが、 白眉はなんといっても「山良くないの?」であろう。 ちなみに「才」は「切」と表現することもあるとか。 【製薬会社:営業どうしの会話】 「明日のカテマネどこが来るの?」 「えっと、ワシ、ゾウ、ウロコと、 あとピョンちゃんも来るって言ってたな」 ▼現代語訳▼ 「明日のカテゴリーマネージメント (業界の研修会みたいなもの)には どのメーカーの方が来られますか?」 「そうですね、大正製薬、佐藤製薬、 武田薬品と、エスエス製薬からも 来られると聞いています」 (提供者:サラ) ■うはははは。会社のマークや キャラクターで呼んでるわけですね。 ところで、武田薬品がなぜ「ウロコ」かというと 会社のマーク(○のなかに▲)が 「一つ鱗」という家紋と同じところから きているのだそうです。 こういう独特の会社の呼び名、 ほかの業界にもありそうだなあ。 【外食ファストフード:先輩と後輩の会話】 A「オマエ明日、いくつ?」 B「明日はロングっすね」 A「ロングかぁー、ハチニーニー?」 B「いや、ハチゼロっす」 A「うわキツイなぁー」 B「でもSMなんか、パッパーっすから」 A「え、マジで? 今月そんな穴あきだっけ?」 B「ホラ、中間の時期じゃないっすか」 A「あーあー、なるほど。 しかしパッパーはキツいだろ。ちなみに何本?」 B「4本っす」 A「んー、もう1本ほしいな」 B「いや昼・夕は大丈夫だと思うんですけどね、 深夜が1本、ニーサンなんですよ」 A「えー、それ痛いな。あとはニアガリ? 鉄板と油だけやろっかな‥‥」 B「いやゴアガリっす。 ピーク過ぎちゃえば後はなんとかイケるでしょ」 A「そっかぁ、まあ今回は泣いてもらうか‥‥」 ▼現代語訳▼ A「あなたは明日、何時から何時までの勤務ですか?」 B「明日は長時間勤務です」 A「長時間勤務といいますと、 8時から22時までですか?」 B「いえ、8時から0時までです」 A「それは辛いですね」 B「でも店長は8時から翌朝8時までですから」 A「本当ですか? 今月はそんなに働く人が少ないのですか?」 B「中間テストの時期なので、 アルバイトの学生が休みをとっているのです」 A「なるほど、しかし 8時から翌朝8時までの勤務は辛いですね。 ちなみに明日は何人で店を運営するのですか?」 B「4人です」 A「もう1人ほしいですね」 B「いえ、8時から22時の間は 4人でも問題ないと思われるのですが、 22時からの時間帯が、23時で1人帰ってしまって、 23時以降は3人になってしまいます」 A「それは辛いですね。あと1人は2時で帰りますか? 鉄板磨きと油取りの清掃作業だけでも やったほうが良いでしょうか?」 B「いえ、もう1人は5時に帰ります。 一番忙しい時間帯が過ぎてしまえば 後は大丈夫でしょう」 A「そうですか。 では今回は店長に頑張ってもらいましょう」 (提供者:達) ■うわあ、店長、たいへんだ。 なんせパッパーだからね。 人数を「本」で数えたりするのが 冷静になるとおもしろい。 24時間営業の店のシフトをやりくりするみなさま、 ご苦労さまです。 【バイオ研究関連:夕刻のドウテイの依頼】 A「こっちのドウテイお願いできる?」 B「この時間から? どれ? うっわあ、このコたち全部? 身が持たないなぁ」 ▼現代語訳▼ A「こちらの微生物について、 それがどの属のどの種のどの変種なのかを 顕微鏡などを使って調べ、はっきりさせてください」 B「終業時刻の迫ったこんな時間から調べろだなんて、 本当に面倒なことをおっしゃいますね。 で、どれを調べたらよいのですか? ここにあるもの全部ですか? 時間的にも体力的にも かなり大変な作業になりそうですね」 (提供者:ぬばたまの) ■んまあ、なんてはしたない! いえいえ、お母さん。そういう話ではないのです。 「ドウテイ」は「同定」と書き、 仲間分けをするという意味なのです。 それにしたってアナタ、ドウテイだなんて! まあまあお母さん、落ち着いてください。 娘さんはよくやってくださってますよ。 【銀行:営業終了後、課長に向かって】 「か、課長、だっ‥‥だいてくださいっ! あぁ、もうダメ、は、はやく〜ぅ」 ▼現代語訳▼ 「課長。急がせてしまい大変申し訳有りませんが 手形交換所への輸送車が出発してしまいます。 代金取立て手形持ち出し伝票への 内容点検・確認および検印を至急お願いいたします。 このままでは、交換所の持ち込み時限に 間に合わない事態が懸念されます。 大至急、確認の程お願いいたします」 (提供者:上司はわたし) ■んまあ、なんてはしたない! いえいえ、お母さん。そういう話ではないのです。 「代金取り立て手形」、略して「だいて」なのです。 それにしたってアナタ、「だいてください」だなんて! まあまあお母さん、落ち着いてください。 言うにことかいて「はやく〜ぅ」だなんて! まあまあお母さん、落ち着いてください。 娘さんはよくやってくださってますよ。 それにしたってアナタっ! まあまあ、落ち着いてください。 【医療機器販売代理店・病院からの注文】 「麻薬金庫2台、コカイン5個、 この前お話したタケシ1体お願いします。」 ▼現代語訳▼ 「薬を入れる棚を2台、鼻用噴霧器を5個、 この前お話した小児実習モデル人形の 『タケシ』を1体お願いします」 (提供者:おまめ) ■んまあ、なんて不謹慎な! いえいえ、お母さん。そういう話ではないのです。 病院で使う医療器具を発注しているところなのです。 それにしたってアナタ、ま、麻薬だなんて! まあまあお母さん、落ち着いてください。 ココココ、コカインだなんて! まあまあお母さん、娘さんは‥‥。 タタタタ、タケシだなんて! 人身売買! 落ち着いてください、落ち着いて‥‥。 うーーーん、バターーン。 あっ、お母さん! お母さん! む、娘さんはよくやってくださってますよ! 【新聞業界・夕方6時半の社会部】 デスク「硬派出しするから、急いで軟派受けも出して」 記者 「早版から? 14版にしましょ」 デスク「いや行く。ラテ禁、交換停止」 記者 「14版で軟派落ちは、やですよ」 ▼現代語訳▼ デスク「この特ダネは、社会面ではなく一面に載せるよう、 新聞のレイアウトを担当する 整理部デスクに頼みますから、 君は社会面用の関連記事を別立てでもう1本、 出稿してください」 記者 「夕刊のない地方向けの一番早い版(11版)から 載せるんですか。 情報が他社に漏れる危険があるので、 東京向けの最終版(14版)から入れましょう」 デスク「いや、11版から入れましょう。 もちろん、ラジオやテレビに ニュースフラッシュを流すのは禁止、 という扱いで出稿します。 また、新聞各紙が毎日実施している 早い版の交換も本日は取りやめます」 記者 「でも、東京向けの最終版では、 1面に政治部や外報部から 別のニュースが入ってきて、 結局、僕の記事は 社会面に回されるのではないでしょうか。 この前のように夜中の0時近くになって、 社会面用に書き直しを命じられても困ります。 その時間にはもう、僕はたぶん、 酔っぱらっているでしょう」 (提供者:軟派落ちはキライ) ■おお、新聞業界からも投稿が。 詳しい解説が併記されていたので転載します。 「新聞には、11版から14版まで、 配達される地方までの距離によって 締め切り時間が違います。 遠方に行く11版の締め切りは早く、 東京向けの14版の締め切りは遅いわけです。 だから本気で勝負したいネタを一面に突っ込む時は、 秘密を厳守するため、 最終版まで載せないことも多いんです。 『硬派』は新聞一面、『軟派』は社会面を指し、 社内では『硬派』の方が地位が高いです。 だから、社会面用に書いた記事を一面に載せる時は 『一面出し』あるいは『硬派出し』と言い、 その逆は『軟派落ち』と悔し紛れに言います。 だからこの会話は社会部では日常茶飯事だけど、 政治部、経済部では絶対にありえない会話なのです」 へえええええ。なるほどねー。勉強になるなあ。 ていうか、こんなにウンチクのあるコーナーで いいんでしたっけ? もいっちょ新聞ネタです。 【新聞業界:締め切り間際】 A「シャメンまだある?」 B「あります」 A「アタマの殺人事件の被害者のガンクビ、 とれたっていうけど入る?」 B「カオマルでいいですよね。 すぐ分解にまわします。 あと肩のエトキがきてないです」 A「すぐ送らせるね」 C「すいません、ラテのOL●、 追訂処理で30分遅れるそうです」 A「え、シャメンも遅れてるのに!? これじゃコウハンが団子になって、 刷り出しに間に合わないじゃないか。 またオヤビンに怒られるよ! 最悪、色だけ出して、最後にスミで間に合わない?」 C「あまり変わらないと思います」 ▼現代語訳▼ A「社会面、まだ出力されてませんか?」 B「まだです」 A「トップ記事の事件の被害者の、 顔写真が手に入ったらしいけど、 入るスペースはありますか?」 B「顔を丸く切り抜いた写真なら入ります。 すぐに加工してもらいます。 あと、左上の記事のキャプションが届いていません」 A「すぐに記者に送信させます」 C「すみません、テレビ欄の●時受信分のデータですが、 訂正の追加があって、30分遅くなるそうです」 A「社会面の出力時間も遅れているのに? これじゃ印刷用の版データの出力が 連続して集中してしまうから、 印刷開始予定時間に間に合わないじゃないですか。 また印刷工場の係長に怒られてしまう‥‥。 CMYKの4色データのうち、 Kのデータだけ最後に出す、という方法で 時間短縮できませんか?」 C「あまり変わらないと思います」 (提供者:マオキチ) ■先の投稿と用語は微妙に異なるものの、 一刻を争うなかで特殊な言葉が飛び交う様子は同じ。 テレビ業界もそうだけれど、 修羅場になればなるほど 専門用語が威力を発揮するようである。 【コンピュータ業界:報告】 「重いんで調べたらゾンビがうようよしてたので、 片っ端から殺しときました」 ▼現代語訳▼ 「処理速度が遅いので調査したら、 ゾンビプロセスがたくさん発生していたので、 全てkillしておきました。」 (提供者:マーマー・ヨ) ■なんじゃそりゃ、と思ったけれども、 「ゾンビプロセス」も「kill」も きちんと存在するコンピュータ用語なのだそうです。 ちなみに「ゾンビプロセス」は、 「完了したけれどもシステムが クリーンナップされていないプロセス」だそうで、 「kill」はプロセスを終了させるコマンドだそうです。 なんだか深くはわからないけれども、 そういうことがあるのだなあという認識で いいのではないでしょうか。 思わぬ雑学コーナーの様相を呈してまいりました。 【看護師業界:看護師の母と、 母の影響で医療用語を覚えた娘の会話】 娘「お父さんの胃の内視、どうだった? 大腸はポリープだけでしょ?」 母「うん、それがね、どうもクレブスらしいわ」 娘「あらぁ、キャンサー。 やっぱ、やっといてよかったねぇ。んで、オペは?」 母「まだ小さいから内視で取るってよ。 2週間くらいかな」 娘「内視摘出なら開腹しないだけ楽ね。よかった」 ▼現代語訳▼ 娘「お父さんの胃の内視鏡検査、結果はどうだった? 先に行った大腸の検査は ポリープだけが見つかったよね?」 母「うん、それがね、ガンがあったらしいのよ」 娘「あらぁ、ガン。 心配していたから、検査してよかったわね。 んで、手術はどうするの?」 母「まだガンが小さいので、 内視鏡を使って取るっていうことよ。 退院まで2週間くらいかな」 娘「内視鏡で摘出手術をするなら、 開腹手術より負担が少なくて体も楽ね。よかった」 (提供者:美月まな) ■ご想像のとおり、これ、実話だそうです。 母親はガンをドイツ語で「クレブス」と表現し、 娘は英語で「キャンサー」と表現したことが 興味深かったと投稿者は書いていますが、 お父さんはその後大丈夫だったのでしょうか? 家庭内に飛び交う専門用語、 ほかにもありそうですねー。 【国会関係:会期末の独り言】 「例の法案もガチャンコの後エンカイで、 3時ってとこか。はぁ〜疲れる。 昨日も、もめにもめて看板落ちたの0時前だし‥‥ タクシー代バカになんねーよ! 早く解散してくれー!」 ▼現代語訳▼ 「懸案だった法律案も これから委員会での強行採決の後、 本会議は0時を過ぎるので『延会』の手続を取って、 夜中3時頃には成立するだろう。 昨日も与野党の協議がもめて 予定されていた委員会や本会議が開かれず、 結局0時前まで引っ張って取り止めになった‥‥ タクシー代全部自前だし。 解散したらラクになるのに!」 (提供者:チュウタ) ■わあ、こんな投稿まで。 国会関係者というだけで どういう職の人かわかりませんが、 いろんなところにいろんな言葉があるのだなあ。 各方面からの投稿、お待ちしております。秘密厳守。 続いては、前回掲載した 「トイレ」や「食事」の言い回しについて。 【アパレル卸業界:お昼の会話】 A「ノジ行ってきまーす!」 B「いってらっしゃーい」 ▼現代語訳▼ A「お昼休憩行ってきます」 B「いってらっしゃい」 (提供者:ひらめ) ■店によってさまざまな言いかたがあるようで 非常に興味深い。ちなみにここでは トイレは「アカ」だそうです。 どういう由来があるのだろうか。 【ファミレス:店長とアルバイトの会話】 アルバイト「店長、1分行ってきます」 店長 「ついでに、電話行ってこい」 アルバイト「わかりました」 ▼現代語訳▼ アルバイト「店長、トイレ行ってきます」 店長 「ついでに、食事(休憩)に行ってこい」 アルバイト「わかりました」 (提供者:指揮者) ■このファミレスでは「トイレ」が「1分」です。 「食事」が「電話」というのは微妙な隠語ですねえ。 最後に、もひとつ隠語を紹介。 【書店:店頭での会話】 店員A「赤いファイルをおろしてください」 店員B「どちらのお客様ですか?」 店員A「あちらです」 ▼現代語訳▼ 店員A「万引きです!」 店員B「どいつだ?」 店員A「あいつです」 (提供者:金次@遊び人) ■うはははは。現代語訳のほうが 乱暴な口調になってしまうという珍しい例。 そういや、デパートの店内放送も 店によっていろいろ隠語があるという 噂が昔からありますよね。 各方面からの投稿お待ちしております。秘密厳守。 さあ、連休前ということでたっぷりとお伝えしました。 月曜日は祝日ですのでつぎの更新は水曜日です。 あなたの職場におかしな言葉はありませんか?
■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■ こんにちは、関西生まれの美人アシスタントです。 こちらはオフィスからの自由なメールを 募集、掲載していくコーナーです。
はっはぁ〜、なるほどなあ。 なんや風情あるなあ。 また、おばあちゃんが優しく言わはるから ええんやろなあ。 あかん、しんみりしてきたわ。 おばあちゃんネタよわいねん。 家、帰りたなってきたわ。
まあ、職場の専門用語も部活の専門用語も 成り立ちはいっしょやからね。 けど、「タイジン」や「スリーメン」は わかるにしても、「ホウブ」はどないやねん。 あたしらのころはなかったで。 ゆみゆみもそのへんきっちり言うたりや。 しめるとこはしめとかんとな。 ‥‥コホン、本日も失礼いたしました。 みなさんからの自由なメール、 お待ちしております!
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2003-10-10-FRI
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