BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第60回 オトナ語専門用語編:その10 ■■■

たいして意味なんてないのだろうけれど、
なんだか十回ずつの区切りってうれしいもんだ。
いつの間にやら「60回」!

全国のオフィスや現場でがんばる諸先輩方、
いつもいつもお世話になっております。
こんなに長く続くとは思いませんでした。

さあ、専門用語編も残すところあと2回。
今回もテーマから振り返ってみよう。

 オトナ語専門用語編テーマ 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!
※募集は終了しました。

それじゃまず旅行業界の専門用語から。
そういやぼちぼち年末年始のチケットとか
意識し始めなきゃいけないころ?

【旅行業界:発券担当者とセールス担当者の会話】
A「この間HLがHKで落ちてきたKEのLAX行き、
  もうチケッティングでいいの?」
B「もうファイナル取ったんで切っちゃってください!
  ついでにエクセス20でMCOもお願いします!」
A「チケットイシューしちゃったら
  ノンレフだけどほんとにいいの?
  こんなブッキングに限って発券後に
  フラキャンとかスケチェンになるんだよねえ」

▼現代語訳▼
A「この間キャンセル待ちから席が取れてきた
  大韓航空のロサンゼルス行き、
  もう航空券発行していいのですか?」
B「お客様と最終確認済んでいますので、
  航空券発行お願いします。
  その際に超過荷物20KGの別途料金分も
  合わせて発行してください」
A「発券後は払い戻し不可のチケットですが、
  本当にいいのですね?
  こんな面倒な予約に限って、
  フライトキャンセルとか
  スケジュールチェンジとかになるんですよね」
(提供者:ミッフィー)

■いやあ、見事な専門用語会話だわ。
 横文字やアルファベットの略語が入ってくると
 ほんとにちんぷんかんぷん。
 「フラキャン」と「スケチェン」だけは
 なんとか推測できたぞ。


【飲食業界:厨房にて】
「もう弟いるんでしょ。んじゃ兄貴から使って」

▼現代語訳▼
「もう既に新しく仕込んだ食材が出来ていますよね。
 では、間違えないように
 前に仕込んだ古い方から使ってください」
(提供者:赤井マサタカ)

■思いっきりローカルな専門用語かもしれないが、
 投稿に添えられていた報告によれば、
 冷蔵庫のなかのタッパーのふたには
 でかでかと「兄貴」「弟」と書かれているそうである。
 愉快な職場だと思う。


【ビルメンテナンス業界:仕事の指示】
「今日7階はエレホをハクってかけ直し。
 裏のはまだ持ちそうだから
 バフかけて、のばしちゃえばいいや。
 でもヒールマーク目立ってたからこそげ落としてから。
 8階のフロアは、テナントさんが
 バキュームかけないでキジョウだけでいいって。
 B1はポリ回して、屋上は水撒いた後トンボでかっぱぎ。
 他は通常でお願いします」

▼現代語訳▼
「7階のエレベーターホールの床は
 一旦剥離剤でワックスを落としてからかけ直しです。
 非常階段のワックスは状態が良いので、
 ワックス伸ばしを使って薄くすれば
 キレイになると思います。
 しかし、ヒールの跡が目立っていたので、
 そこはモップで落としてからにして下さい。
 8階の室内はテナントの方からの要望で、
 掃除機はかけずに、
 机の上を拭くだけで構わないということです。
 地下1階はポリッシャーをかけて下さい。
 屋上は水を撒いた後に、
 水切りで水気をきちんと取って下さい。
 後は変更なしです。宜しくお願いします」
(提供者:Ms.Aoyama)

■伝わってくるのはまさに現場の空気。
 にしても、「ヒールマーク」ってのは
 ついつい覚えておきたくなる専門用語だなあ。
「踵が床と強くこすれたときにできる靴跡。
 特に黒のハイヒールやピンヒールがつくる」
 というのがその意味である。
 覚えておいて損はない。得もないが。


【お役所業界:市民課の新人トレーニング】
新人「すみません、この方ないんですけど」
A 「じゃカイゲンか除籍見て! わかる?」
新人「わかりません」
A 「社員窓口だから、
   渡辺部長に教えてもらって。渡辺さーん!」
渡辺「もう1回ジュウキ叩いてあったらカイゲン、
   なかったら除籍見て。あった?」
新人「ありました! 普通に焼いていいんですか?」
渡辺「普通でいいけど、それピラピラついてるから
   ピラピラも忘れないでね」
B 「キミ、○○さんやってるの?じゃこれガッチャン」
新人「は、はい! あ、渡辺さん、この焼いたやつ
   普通にガッチャンしていいんですか?」
渡辺「OK! じゃ確認したら出して!」
新人「○○様ー!」
C 「○○さんケイジでタカです!」

▼現代語訳▼
新人「すみません、この戸籍謄本申請書のお客様の
   戸籍が見当たらないのですけど」
A 「では旧様式の改製原戸籍に入っている方か、
   除籍されているのでしょう。
   改製原戸籍簿か除籍簿を見てください。
   謄本の制作方法はわかりますか?」
新人「改製原や除籍はまだわかりません」
A 「職員はみな窓口で
   受付・相談業務を行っていますから、
   大変なベテランのパートの
   渡辺さんに教わってください。渡辺さーん!」
渡辺「もう一度住民基本台帳で
   お客様の検索をして、該当があれば改製原戸籍簿、
   なければ除籍簿を見て下さい。ありましたか?」
新人「ありました! 通常の戸籍同様に
   専用コピー機で印刷してもいいのですか?」
渡辺「結構です。しかし、その戸籍には
   欄が足りなくなったために
   付け足された欄が上から貼ってありますので、
   その追加分の欄も忘れずにコピーして貼り、
   その部分に公印を割り印して下さい」
B 「キミ、○○さんの戸籍謄本を作成しているのかい?
   ではこの書類も同時に申請されたものですから、
   その謄本とあわせてお出ししてください」
新人「はい、わかりました! あぁ、渡辺さん、
   この印刷済みの謄本は複数枚にわたるものですが、
   通常の謄本と同様に
   専用パンチで綴じてもいいのですか?」
渡辺「大変結構です。職員であるあなたが
   申請書と照合して不備がないことを確認したら、
   お出しして下さい」
新人「○○様ー!」
C 「○○さんは待ち時間の間、
   軽自動車税の手続きで税務課に行っておられます」
(提供者:アンメルツ)

■現代語訳とくらべながら何度も読み返すと
 味わい深いやり取りである。
 しかしながらこれは、
 新人さんがイチから覚えるとしたら
 たいへんな作業であるように思う。
 ところが添えられた報告によれば、
 毎日こういった感じでこなしていると、
 たいてい1週間くらいで基本は身につくのだとか。
 びっくり人間大集合である。
 もうひとつお役所関係の投稿を紹介しよう。


【お役所業界:予算要求の季節】
「何、この要求調書。
 経常はネットベースで20パーセントカットって
 お達し来てたでしょ!
 あーあ、こんな調子じゃ臨投の要求、
 また突っ返されるぞ‥‥」

▼現代語訳▼
「何ですか、この予算を要求する書類は。
 毎年決まって必要な経常的経費の要求は、
 事業をすることでもらえる国庫補助金などの
 特定財源を除いて税金などの一般財源を
 いくら使わなければいけないかという額について
 前年度よりも20パーセント削減しなさいと
 通知が来ていましたでしょう。
 こんな要求をしていたのでは、
 建設事業や来年限りの事業である
 臨時的投資的経費の要求を持っていっても、
 財政課が受け取ってくれないと思いますよ」
(提供者:baba)

■部外者には意味不明な専門用語ではあるが、
 その裏側にはなんと多くの情報を含んでいることか。
 ちょっとした暗記物のテキストとしても
 使えそうな例文である。
 なお、予算請求の水増しが懸念される件に関しては、
 当コーナーの本意ではないので
 触れないことにする。


【半導体業界:先輩と後輩の会話】
後輩「これは、ドライエッチするんですか?」
先輩「いや、ウェットエッチで」

▼現代語訳▼
後輩「この試料を加工したいのですが、
   液体を用いずに、気体やプラズマを用いる方法で、
   削るのでしょうか?」
先輩「いや、酸などの液体を用いる方法で、
   削ることにしよう」
(提供者:けるん)

■んまあ! エッチですって! ふ、ふしだらな!
 お母さん、お母さん、落ち着いてください。
 今回は登場しないっていう約束じゃないですか。
 だってアナタ! ドライなエッチだなんて!
 いえいえ、そういう話ではないのです。
 科学的な検査や分析を行う材料を腐食させることを
 エッチ(etch)もしくはエッチング(etching)と
 呼ぶのです。液体を使わない腐食がドライです。
 それにしたって! ウェットなエッチだなんて!
 ドライはまだしもウェットだなんて!
 まあまあ、お母さん、落ち着いてください。
 息子さんはよくやってくださってますよ。


【アナログ半導体業界編:確認】
「おい、このトラ、首吊ってサチってるゾ。
 DC見たか?」

▼現代語訳▼
「このトランジスタはベース電位が上昇して
 コレクタ電位が下がって飽和領域に入ってしまい
 正常に動作しなくなっています。
 コンピュータシミュレーションして
 動作点を確かめましたか?」
(提供者:し)

■ひいいいいっ! 虎が首つり自殺!
 いえいえ、お母さん、そうではないのです。
 虎じゃなくて、「トランジスタ」の話です。
 でも、でも、虎がっ!
 トランジスタの話ですよ、お母さん。


【スタジオ:撮影現場にて】
「これ笑っちゃっていいですか?」

▼現代語訳▼
「もう撮影が済んだのようなので、
 これらは片づけてしまってもよろしいでしょうか?」
(提供者:ルナルナ)

■あーはっはっは! うわっはっはっは!
 お母さんお母さん、落ち着いてください。
 笑うというのは「片づける」ことなんです。
 どわっはっはっは! がっはっはっは!
 しっかりしてください、お母さん。
 スタイリストの娘さんはよくやってくださってますよ。


【八百屋:ある日の発注風景】
「シンベツ、ハナ、レンソ、マルジュー、桃太郎を各2杯。
 あと軟弱、何かおもしろいもんある?」

▼現代語訳▼
「新キャベツ、カリフラワー、ほうれん草、
 さつま芋、桃太郎トマトを各2ケース。
 あと菜っ葉類でお買い得品ありますか?」
(提供者:ぴゃ〜)

■ふんふん、なるほどね。これはわかりやすいわね。
 お、お母さん、これは、わかるんですか。
 常識よ。「新キャベツ」は「シンベツ」だし、
 「ほうれんそう」は「レンソ」に決まってるわ。
 ちなみに「桃太郎」はトマトの種類のひとつで、
 果肉がしっかりしてるから店持ちするのが特長なの。
 お、お母さん、いったいどうしたんですか!
 あらヤダ常識よ、これくらい。

本日はこのあたりで失礼いたします!
いよいよ次回が専門用語編の最終回!
駆け込み投稿、大歓迎ですよ〜。

 募集中! オトナ語専門用語 

お勤めする職場、業界に、特有の言葉はありませんか?
そこでは当たり前のように使われているものの
一般社会では絶対に通用しない言葉はありませんか?
そのような言葉を、現代語訳とともに紹介します。
以下のフォーマットを参考にして、身のまわりにある
「冷静に考えたらなんだこりゃ?」な言葉を
どしどしお送りください!

〜投稿例〜
【出版業界:上司の机にて】
「この写真、眠いからピン来てるやつに差し替えて。
 キャプはトルツメして、
 キャッチだけキンアカにしとこうか。
 戻し、いつ? 今日マジケツ? 引っ張れよぉ」

▼現代語訳▼
「この少しぼけた写真をピントの合ったものに変更し、
 写真の下に添えた文章は削除して、
 見出しの文字を『マゼンタ100パーセント、
 イエロー100パーセント』にしましょう。
 印刷所に校正を届ける締切はいつですか?
 今日が絶対的な締切だというのはほんとうですか?
 印刷所と交渉して締切を延ばしてもらいましょう」
(提供者:ソフト)


あてさきはpostman@1101.comです。
表題は「オトナ語専門」としてください。
よろしくお願いいたします!!
※募集は終了しました。


■■■ アシスタントよりご報告申し上げます。 ■■■

こんにちは、関西生まれの美人アシスタントです。
こちらはオフィスからの自由なメールを
募集、掲載していくコーナーです。



アシスタントさんの報告のところに
小学生の話があり、あっ、おんなじだけど
ちょい違う‥‥でも、ソウソウ、ソウですわ〜。
我が家の娘と私の場合‥‥。

母「今日の宿題は何?」
娘「ヒトベンとオンドク。カード書いてネ!!」
母「はい、はい‥‥と」

ヒトベン=一人勉強といって、
     毎日2ページ位の自主学習
オンドク=主に教科書を1単元位、
     声を出して読む。音読です。
カード =音読終了後に親のサインをもらいます。
     毎日‥‥。

その外にケイドリ(計算ドリル)や漢字ワーク、
リコーダーの練習等々
日々、宿題の山と格闘しています。
立派なり今時の小学生!!
(提供者:なっちゃんのママ)

小学生もなかなかやること多いのう。
せやけど、「オンドク」は、そのまんまやんけ!
っちゅーツッコミは
一応礼儀として入れさせてもらうけど、
誰がその短縮形言いだすんやろうなあ。
まさか先生が言いだすんかなあ。
あたしらの若いころは、
そんなん言うたら先生にしばかれたで。
耳たたかれて、耳が「キーン」いうたもんや。
そんな口きく小学生が、立派かどうかは知らんけど、
人がごはん食べてるときに「ヒトベン」はないで。
それだけは言うといたって。
ほな、ディナーを続けさせてもらうわ。



いつもお世話になっております。
ほぼ日スタッフの皆様お疲れさまです。

オトナ語をお伝えしたいというわけではないのですが、
スーパーでの不審者を知らせる隠語案内放送の話で
>店内に「高島町のハラダ様」が
 ほんとうにいた場合はどうなるのだろう?
と書かれてましたよね。
私はオフィス街にある店で働いているのですが、
うちの店でも不審者などを発見して警備の方を呼ぶ時に
「〇〇1丁目からお越しの××(警備の方の名前)様」
という感じで呼び出します。
ただ意外と警備の方を
呼び出す機会ってのは多くありまして、
1日最低1回はこの放送が流れるのですが、
以前、毎日のように来店するおじさんから
「〇〇1丁目にそんなに人はすんでないっ!!」
とお叱りを受けたことがありました。
そのクレームを受けた時は
「確かにオフィス街だから
 民家はまったくと言っていいほどないけども‥‥」
とハニワ顔になってしまいました。

疑問とは微妙に違うのですが、
思い出したのでメールしました。
これからも毎日昼休みのお供に
更新楽しみにしています。
(提供者:伝票整理)

そんなことでお叱りを受けるって、
あんたも大変な商売やなあ。
あたしやったら、
「毎日毎日、店内放送なんかしっかり聞くな!」
て言い返してるとこやわ。
あんたもハニワ顔になることなんかないねんで。
言いたいことは言うていこ。志村けんさんばりに、
「イッチョメ、イッチョメ、ワーオ。
 イッチョメ、イッチョメ、ワーオ」
くらい言うていこ。なんやわかれへんわ。
ディナー食べたら眠なってきたわ。
ぐーぐー‥‥ハッ! 失礼しました!
みなさんからの投稿、お待ちしております!


オフィスからのふつうのおたより、
当コーナーへのふつうの感想なども
お待ちしております!
あてさきはpostman@1101.comです。
こちらのほうの表題は
ふつうに「オトナ語」でけっこうです。
みなさまからのメールが
新たなテーマをつくるのです!

2003-10-22-WED

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