よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。




今日の、ひとことパン!セ

どうやら良(よ)い仕事を している人というのは、 つねに二面性(にめんせい)がある ということのようです。 しかもその二面性(にめんせい)は、 まったく正反対に思える。 開き直るということと、 あきらめないことは矛盾(むじゆん)しないのか? 妥協(だきよう)してはいけないけど 意固地(いこじ)にならないって?

玄田有史『14歳からの仕事道(しごとみち)』より

「やりたいことが見つからない」
「自分に向いている仕事がわからない」
……うん、それでいいんです、
というところから、
この本ははじまりました。
玄田有史さんは言います。
働くって、
「やりたい仕事」を見つける以前に、
ワケのわからない不安にふりまわされたり、
思うようにいかなくて、
できれば直面したくなかった
自分の弱さに打ちのめされたりすること、
かもしれない。
でも、悩みながらでも、手探りしつつ、
とにかく歩き続けてみることでしか、
出会えないことが、たしかにある。それは、
あなたの世界をひろげてくれる、
見たこともない風景や、知らない誰かだったり、
「ここまで、こうやって歩いてきたんだな」っていう、
ささやかだけれど、自分だけの誇りだったりする。
なにより、いちばんたいせつなのは、
「ちゃんといいかげんに生きる」ことなんだ。

そのことを、知恵として、
カラダにきざんでいるおとながいる。
まじめ、だけじゃない。肩の力を抜く、だけでもない。
働くことのリアルは、「ちゃんと」と「いいかげん」の
あいだにある。矛盾をおそれずに、率直に、
そのことを伝えたいと願っているおとなは、
玄田さんをはじめ、あなたのそばに、きっといます。

(編集担当 坂本裕美)





その8
「よそにないものをつくる」という気迫。
糸井 ひと昔前だと、
活字のなかに込められていることそのものが
きっと「ごちそう」だったと思うんですが、
それがいまは、そうじゃない。

この世のあらゆるものには、
「そのまま停まっているもの」と
「停まってないもの」があります。
停まっているものを見逃さずに、
「それじゃ、つまんないでしょう」
と言うのが、
この本のデザインを担当した
祖父江慎さんという人なんですね。
清水 停まってるものに対して気づく、
ということと同時に、もしかしたら、
「自分自身も飽きないように」
という気持ちもあるのかもしれませんねー(笑)。
糸井 きっと、そうでしょうね。
毎日おなじことをずっとやるというのは
不健康なことですから。
誰かのために、というより、自分のために、
「ここを、ええい、こうしてやれ!」
と、なることは、ありますよ。
祖父江さんは、そうやって
自分に正直であることを基本にしているから、
見る人、読む人に、効いていくんだろうね。

それに、このシリーズは
表紙の製本方法も、ちょっとかわってる。
清水 これ、いまではちょっと珍しいんですけど、
「フランス装」っていうんですよ。
当初は、とっつきやすいようにと、
やわらかめのハードカバーを
提案していたんですが。
糸井 誰が言い出したんですか?
祖父江さん?
清水 いいえ、これは出版社(理論社)から
「造本でも特色を出してほしい。
 たとえばフランス装とか!」
という要望があったんです。
フランス装ができる製本所は
あまりたくさんはないし、
限られているので、割高。
本の強度や時間的な問題についても
心配でしたので、
価格をおさえ、かつ
コンスタントにシリーズを出していくことを
考えると、ちょっとどうでしょうか、と
思わず問い直しました(笑)。
糸井 ふつうは出版社なり営業が、
クギを刺すところを(笑)、編集の清水さんが。
それは、みんなが、やる気だったんですね。
清水 そう(笑)、理論社、やる気だったんです。
天晴れ! ですよね。
糸井 単純に、よそにないものをつくろうという
「気迫」ですよ。
出版社も、デザインも、装丁も、印刷も、製本も、
著者も、編集の清水さんたちも、
みんな、きっとそうだったんだ。
清水 たぶんそうですね。
うれしいな〜(笑)。
糸井 そりゃもう、
ほんっっっっとに!大事なことだと思うよ。
そうじゃなきゃ、ほかにもあるものとして
埋もれちゃうことになるんです。
それだからこそ、
「よりみちパン!セ」のことは
みんながちょっとずつでも
知っていたりするわけでしょう。
「ほかにはない感」が、漂っているよ、
このシリーズには。

(ふたりのはなしは、つづきます)

2006-01-26-THU




(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun