その8
「よそにないものをつくる」という気迫。
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糸井 |
ひと昔前だと、
活字のなかに込められていることそのものが
きっと「ごちそう」だったと思うんですが、
それがいまは、そうじゃない。
この世のあらゆるものには、
「そのまま停まっているもの」と
「停まってないもの」があります。
停まっているものを見逃さずに、
「それじゃ、つまんないでしょう」
と言うのが、
この本のデザインを担当した
祖父江慎さんという人なんですね。
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清水 |
停まってるものに対して気づく、
ということと同時に、もしかしたら、
「自分自身も飽きないように」
という気持ちもあるのかもしれませんねー(笑)。
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糸井 |
きっと、そうでしょうね。
毎日おなじことをずっとやるというのは
不健康なことですから。
誰かのために、というより、自分のために、
「ここを、ええい、こうしてやれ!」
と、なることは、ありますよ。
祖父江さんは、そうやって
自分に正直であることを基本にしているから、
見る人、読む人に、効いていくんだろうね。
それに、このシリーズは
表紙の製本方法も、ちょっとかわってる。
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清水 |
これ、いまではちょっと珍しいんですけど、
「フランス装」っていうんですよ。
当初は、とっつきやすいようにと、
やわらかめのハードカバーを
提案していたんですが。
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糸井 |
誰が言い出したんですか?
祖父江さん?
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清水 |
いいえ、これは出版社(理論社)から
「造本でも特色を出してほしい。
たとえばフランス装とか!」
という要望があったんです。
フランス装ができる製本所は
あまりたくさんはないし、
限られているので、割高。
本の強度や時間的な問題についても
心配でしたので、
価格をおさえ、かつ
コンスタントにシリーズを出していくことを
考えると、ちょっとどうでしょうか、と
思わず問い直しました(笑)。
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糸井 |
ふつうは出版社なり営業が、
クギを刺すところを(笑)、編集の清水さんが。
それは、みんなが、やる気だったんですね。
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清水 |
そう(笑)、理論社、やる気だったんです。
天晴れ! ですよね。
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糸井 |
単純に、よそにないものをつくろうという
「気迫」ですよ。
出版社も、デザインも、装丁も、印刷も、製本も、
著者も、編集の清水さんたちも、
みんな、きっとそうだったんだ。
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清水 |
たぶんそうですね。
うれしいな〜(笑)。
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糸井 |
そりゃもう、
ほんっっっっとに!大事なことだと思うよ。
そうじゃなきゃ、ほかにもあるものとして
埋もれちゃうことになるんです。
それだからこそ、
「よりみちパン!セ」のことは
みんながちょっとずつでも
知っていたりするわけでしょう。
「ほかにはない感」が、漂っているよ、
このシリーズには。
(ふたりのはなしは、つづきます)
2006-01-26-THU
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