おだやかで謙虚、鈴木先生を知るだれもが
そう思うにちがいありません。
でも、カバーの撮影のためにカメラのファインダーを
のぞいていたら、迫力あるんです。
笑っているけど、その目に。手に汗かきました。
いや、迫力というか、ただごとでない、
人間の色気というものに。
しかも半端でない勉強家で読書家。
「パン!セ」の書き手で、いままでの既刊すべてを
読破された方は、鈴木先生ただひとりです。
知らない世界を知るヨロコビですよ、と。
そして、なぜか!? というほどの
おそるべきジャストタイミングで繰り出される、
天然を感じるユーモア。
「なぜそのようにそこはかとなくおかしみが…」と
失礼顧みずお聞きすると、
「壊れてるんですね」とひとこと。
おだやかさもすごみも謙虚さも、
天然感のあるおかしみも、
先生のなかに長いことかけて積み上げられ、
壊され、またそこから積み上げ、壊し壊され、
そんな繰り返しのなかから
立ち上ってこざるを得ない色気も、
いまの「日本」への、独自の批評のありようも。
鈴木先生の人生そのものであり、
また、お原稿そのものでした。
刊行前の最後のラストスパートで、
先生のアパートあて、ご在宅の確認のうえ、
バイク便をお出しした私。
ほどなく、バイク便のライダーの
おにいちゃんから電話あり。
「あの、お留守のようですが、
どうしたらいいでしょうか?」
「(おかしいな、近くまでお出かけかな)
……ポストとかありませんか?」
「ポストはないようです」
「ああ(へんなものを
投げこまれたりするからかな?)……」
「しっかりガムテープでドアばりしてはダメですか?」
「(ドアに傷つけたり、
汚しちゃったりしたらいけないな……)
ガムテではったりしていいようなドアでしょうか?」
「あ、鈴木さまのお玄関のドアには、ご自分の名刺が
ガムテばりされていらっしゃるようなので、
ぜんっぜんだいじょうぶ! ではないかと。」
「お願いします……」
名刺をガムテばり。
なんてかっこいい表札なんだ!
(ちなみに本当はポストはあるそうです)
パン!セの執筆者である森達也さんが言いました。
「鈴木さんは人間国宝にしないとね」
私も強くそう思います。
老若男女すべての人に、なにはなくとも、
ぜったいに読んでほしい1冊です。
続刊もありますので,乞う、ご期待!!!
(編集担当/清水檀&坂本裕美)
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