SHIRU
まっ白いカミ。

illust:Shio

61枚目: 「狼と少年」

 

昔、狼が出ると嘘をついていた少年がいました。

退屈な村の人達は、最初。
少年をどこか愛していたのかも知れません。

嘘の度に。自分が若返ったかのように
リアルな興奮で村の大人達は家を飛びでました。

そのうち。大人達は暖かい家から出る事もなくなりました。

少年の嘘があまりにワンパターンで飽き飽きしてしまったのです。

そして少年は。皆様ご存じのように、狼に食べられて死にました。

少年が狼に食べられる所は、とうぜん誰も見ていないわけです。

少年を殺したのは狼か村の大人達か。

いいえ、少年は自分で作り出した狼に自分で食べられたのです。

少年のいっせいちだいの見せ物がなければ、
死んだのは村の大人達の方。

退屈にとり殺されるところでした。

 

 

 

シル
shylph@ma4.justnet.ne.jp

1999-08-02-MON

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