SHIRU
まっ白いカミ。

 

 

62枚目
「オレンジの見る夢」

 

私の曾祖父は降りそそぐ雨粒をヒントに
ハゴロモフーズ式の王冠製造法を発見。
特許を持つ我が家は代々
王家御用達の冠職人。
由緒正しき家柄。
高い鉄塔より金の滴。
はねた瞬間に冷却スプレー。
ところが祖父が犬猿レースで財産を失い
ちょっぴり金の含有量をごまかして死刑。
それからは没落の一途の斜陽族。
母はベランダで内職。
マリファナガーデニングをしてたら
近衛兵に見つかって銃殺。
父は母の形見でトリップしているうち
コーラがこんなに美味しいのは
地球を温暖化させようとするメタポ星人の罠だ!
そんな妄想にとりつかれて
500mlのサービス缶を片手に家を飛び出し
いまや白い家に幽閉の身。
結局、人間なんて1人で生きていくしかない。
私はそう思いながら大通りを歩く。
孤独を共有しているという幻想が
2人の引力。耐えられる唯一の理由。
オレンジの空一杯に描かれた夕焼けは
きっと旅行会社の広告なのだろう。
奥歯にオレンジ色が染みて落とした涙。
痛みに咲き誇る向日葵で占う明日は永遠の晴れ。

 

 

shylph@ma4.justnet.ne.jp
シル

 

1999-08-04-WED

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