SHIRU
まっ白いカミ。

じべたに食べ物が!

65枚目: 「"写真が語る20世紀 目撃者"レポート」

 

激しい夕立の降った7月21日。
もうだいぶ前になりますけど…渋谷bunkamuraで
「写真が語る20世紀 目撃者」をみてきました。
歴史的な瞬間をとらえた数々の写真を集めて
一世紀の歴史を振り返るという企画展です。

100年の昔。既に石造りで綺麗な街並みのパリに
鉄筋のエッフェル塔が徐々に立っていく連続写真。
ロンドンのテムズ川。「子供の水泳レッスン」と
説明のある写真は子供を釣っているのかと思いました。
鉄棒の先にロープをつけ、その先に子供を結んで
テムズ川に沈めているのです。
確かに足は着かない川でしょうけれど…
カナヅチの身には目を背けたくなる写真です。

でもそんな楽しげな写真はすぐにおしまい。
一次大戦のあたりからは暗い写真の連続。
戦争、革命、分裂、内乱…人が徒に死んでばかり。
路上で公開処刑(私刑)が行われていたり
サーベルを喉元に突きつけられていたり…。
ここ100年の歴史って戦争ばかりです。
(その前もなんでしょうけれど)

死んだ兵士の手からこぼれ落ちている娘や妻の写真。
山積みの頭蓋骨。
…でもこういう悲劇的な映像は
どれだけ残酷でも退屈です。
だって、分かり切っている事ですもの。
どこの人でも虐殺された死体は痛々しいし、
残された家族は悲しいだろうし。
兵士1人1人に妻や家族がいるのは…。
わざわざ家族写真を握りしめている死体写真を見なくたって
想像がつくじゃんと思うのです。

そうして写真を見ていると
なんで戦争なんて面倒だし疲れる事が起こるのか
心情的に全く理解できなくて戸惑います。
いま、徴兵が日本であっても
年金の支払いみたいにみんな無視して、
赤紙だって紙ヒコーキか何かに。ゴミ箱ポイじゃないかと…。
私はそんな無気力で自己中心的な
若人の1人としてこの覇気の無さを誇りに思います。

展覧会は終わってしまって
カードも売ってなかったので
言葉だけじゃぜんぜん伝えられないのが残念ですが…
(朝日新聞社から図録が出版されていたと思います。)

さきほど書いた頭蓋骨が山積みの写真。
その残酷さより私が面白いと思うのは
頭蓋骨をピラミッド状に積み上げる人がいる事だったり
湾岸戦争で真っ赤に燃える砂漠をバックに
水を求めてうろうろするラクダの黒いシルエット。

どんな悲劇的な状況でも
それを特殊なものとして切り離さないで
日常として、時代や国を超えて
体感させてくれる写真が面白かったです。

たとえば…

「ん、ドイツの攻撃?なんでもないよ。」とばかりに
澄ました顔でミルク缶を抱えて廃墟のロンドンの中を
飄々とまるでいつもの朝のようにミルク配達するお兄さん。

水陸乗用車で川を渡っていながらも
悠然と葉巻をくわえたチャーチルさん。

それと名前は忘れましたが
これもイギリスですが。伯爵の図書館。
ドイツのロケット攻撃で天井に大穴があいて
梁も焼け落ち…とんでもない惨状の図書館なのに
伯爵御本人でしょうか、恰幅の良い老紳士がコートを着て
ポケットに手を突っ込みながら本棚に向かって
読む本を物色しています。

この写真が一番好きでした。
難しい字で諧謔…っていうんですか。

負けず嫌いでどんな時でも無理して強がって
虚勢を張っている姿って大好きです。
どんなに心が歪まされそうな重い出来事でも
笑ってからかえる軽さってかっこいいと思いました。

 

 

シル (shylph@ma4.justnet.ne.jp)

from 『深夜特急ヒンデンブルク号』

1999-08-15-SUN

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