PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙4 「ERについて」その2

ERで中心になって働いているのは
Emergency medicine(救急医学)の人たちですが、
ここは医学生にとって人気のある科のひとつです。

医学生が自分の専攻を決める際に
重要視する要素のひとつとして、
トレーニングが終わった後のライフスタイルがあります。

内科や外科の場合だと、どんなに偉くなっても
月に数回の当直があります。
外科だと手術があるので
家にいるというわけにはいきませんが、
わたしの病院の内科の場合は、当直といったって
夜間病院内にいる必要はなくて、病院内で働いてる
レジデントやフェロー(レジデントを終えた後の
トレーニングを受けている人たち。ドラマの
「ER」でいうとジョージ・クルーニーの立場です。)
からの連絡を電話で受けて指示を出すだけですから、
ポケットベルをオンにしておけば、
あとはゆっくり自宅で過ごせます。

日本の内科の当直と比べれば、うんと楽なのですが、
拘束されていることには違いないので、
ライフスタイル重要視派には大きなマイナスポイントです。

救急科の場合には、
ERにいるときだけが、仕事の時間です。
1日12時間、週4日というのが
一般的なERのシフトだそうで、
それ以外は自由に時間が使えます。

わたしもERのローテーションの時には、
3連休をもらったりして、結構楽しみました。

ERの患者さんは基本的には「一見さん」で、
継続性がないのが特徴ですが、
この継続性の好き嫌いが、
ERの好き嫌いの分かれ道のひとつとなるみたいです。

極端な例をあげると、
目の前の問題を手早く片付けるのが好きな人はER向き。
何で、こんなことになったんだ、と
その後の経過まで見届けるのが好きな人は
内科向きって感じかなあというのが、
わたしの印象です。

ERのひとたちが本領を発揮するのは、
患者さんが一刻一秒を争うような状態にあるときです。

ドラマの「ER」で、
さっきまで機嫌よく話していたおばあさんの血圧が
急に下がったり、意識がなくなったりして
みんなが駈け寄って治療しまくるシーンが
よくありますよね。
あのときに行なってることは
ACLS(Advanced Cardiac Life Support)
といって、アメリカの心臓病学会が出している
ガイドラインに添った治療です。

次回はこのACLSについてお伝えしようと思います。
では、みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

1999-05-09-SUN

BACK
戻る