PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙110 レジデントの暮らし・7 在庫処分

こんにちは。

6月の終わりがだんだん近づいてきて、
わたしも引越しのことを考えなければいけなくなりました。

わたしは食べ物を買うのがとても好きなので、
いつも冷凍庫や棚の中には
食料品がぎっしり詰まっています。

5月に「もう、牛乳と野菜以外は新たに買っちゃだめ」
と決めてできるだけ、家にあるものを食べ尽くすように
心がけてはいたのですが、
なかなか全部はなくならなくて、
人の手を借りなければだめだ、と気がつきました。

そこで、久しぶりに友達を呼んで、
一緒に食べてもらおう、と計画を立てました。
ちょうど、レジデントの卒業式の日で
みんなが集まっていて声もかけやすく、
人数は15人くらいになりそうだ、
ということがわかりました。

それからは献立づくりです。
菜食主義の子もいるので、気を付けながら、
できるだけ食べ物の在庫が処分できるようなメニュー、
というのは、考えるだけでも、結構楽しいものでした。

でも、わたしのレパートリーは
もともとそんなに広くないので、
結局、いつも作り慣れているおもてなし料理を
全部作る、というのが一番簡単だ、
という結論に達しました。

前日の夜中に、とりあえずデザートだけは作っておこうと
プリンを焼きました。
何かひとつでもできあがっていると、ちょっと安心です。

当日は午前中の外来が終わってから
大急ぎで部屋を片付けて、
料理の支度を始めました。

7時頃から、友達がだんだん集まってきました。

飛び入りで来てくれた人もいて、
1年目のレジデントからスタッフの先生まで、
数えてみたら18人が
それほど広くはないリビングに座り込んで
話をしていました。

それぞれよく知っている人ばかりなので
お酒を飲みながら、話も弾みます。
すっかり忘れていたような、懐かしい話が出たり、
もちろん人の噂話も出たりして、
みんなしゃべりっぱなしです。

ありあわせの材料で作った料理でしたが、
みんな礼儀正しく、「おいしい」と食べてくれたので
途中で作り足したりして、
作ったわたしも、とても楽しい夜になりました。

最後には、引越しでいらなくなる家具を
もらってくれる友達もいて、
本当にすっかり在庫一掃となりました。

翌日からは、引越しの荷物作りです。

わたしはこの3年間で、
フィラデルフィアの街がとても好きになりました。
ですから、この街を離れるのは
名残惜しい気持ちでいっぱいです。

特に、引越し荷物を作ったり、
引越し先の手配をしたりすることに
うんざりした時には、
「もう、引越し中止!ずっとフィラデルフィアにいる」
と言いたくなりましたが、
そういう訳にもいかず、
たくさんの友達の力を借りて
とりあえず、荷物を運び出しました。

次回は、
フィラデルフィアのアパートで過ごした
最後の夜のことについてお伝えしようと思います。

みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-08-10-FRI

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