宇田 |
美雨さん、こんにちは。
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美雨 |
どうもこんにちは。
お会いするの、2回目ですね。 |
宮下 |
はい。
こんにちは。 |
宇田 |
宮下さん、
もし美雨ちゃんに見せる写真を持ってきたなら、
それをまず、見せちゃいましょうか。
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宮下 |
うん、そうだね。
これなんですけど・・・。
この写真は、先日わたしがやった
『ハードル』という写真展の作品です。
ひとりの女の子の日常に、
3年くらいずっと近くにいさせてもらって、
撮ったものなんです。
女の人は誰でもそうだと思うけど、
3年経てば、顔もずいぶん変わりますし、
内面の心理の変化も、あるじゃないですか。
そういう変化を描かせてもらっています。
生活を一緒にするとは言っても、
ある種の境界線はいつも超えないようにして、
ちょっと突き放したように
写真を撮るようには、してますね。
わたしからの視点っていうのは、
知りすぎた「なあなあ」のものじゃなくて、
上から見下ろしもしなげれば、
下から見上げもしないような、
常に同じ位置からのものだと思います。
それでできた
『ハードル』という写真展に関しては、
心理の変化を淡々と見せたかったんです。
「自分は平和で平凡で、
毎日が、ただ何となく過ぎていく・・・」
そう思っている人が、世の中には
案外多いのかもしれないんですけど、
でも、誰もがドラマを持っていて、
心理の変化の波みたいなものがある。
誰しもが気づいていない
その「波」を、見せたくて。 |
美雨 |
横顔の写真が、いいですね。
わたしは、人の横顔が好きなんです。
・・・宮下さん、これだけジッと
人の日常をみるのって、どういう気持ちですか? |
宮下 |
好きでやってることではありますけど、
何とも言えない作業かなあ、と思います。
相手の人が落ちこんでいると、
気がつけば自分も落ちこんでいるみたいな。 |
美雨 |
バイオリズムが合っちゃうんだ。
わたしは、違うことでなんですけれども、
日常を他人に見せるということで、
考えさせられることがあって・・・。
自分のホームページに
日記を掲載しているんですけれども、
自分だけのために書いている日記とは、
内容が自然に変わるものなんです。
ホームページの日記には、具体的なともだちの
個人名をあげることはまったくしていなくって、
「何を感じるか」だけを書いていますね。
「歌手や芸能人のプライベート公開」
みたいなことは、したくないですから。
そもそも、人とまったく違う生活を
自分が送っているとは思わないんですよ。
わたしも同年代の人とおなじような
生活を生きているんだけど、
わたしはできれば、その生活の中で
見過ごしがちなものを感じていたい。
自分でも忘れちゃう「感じたもの」を
ホームページに書くようにしています。
そこのところを自分で身をひきしめていないと、
人に不快感を与えたり、
人からの嫉妬を招いたりということに
なりかねないですから。
そうやってふだんわたしがやっていることは、
もしかしたら
「自分の生活を客観的に見る」
という点で、
宮下さんに似ているなあと思いました。 |
宮下 |
わたしはその「客観的」を
写真でやってるみたいです。
わたしは書く人ではないから、
忘れたくないことは写真に撮るんですね。
写真にあがったものを見てはじめて、
「あ、わたしはそこにいたんだな」
って気づく時もあるぐらいです。
それは、自分のしていることについて
バランスをとる作業になっていると思います。
美雨ちゃんは、それを文でやってるんだ?
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宇田 |
美雨ちゃんも宮下さんも、
リアルを表現したいんでしょ?
でも、そのリアルの表現方法が、
おたがいに違うんだね。
えぐっていくことが
リアルだったりもするけど、
例えばわたしの場合は、
感情をひた隠しにすることが
リアルだったりするんですけど。
ただ、3人の共通点としては、
等身大を表現するのが
「リアル」ってことですよね。
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美雨 |
3人に共通するリアルって、何だろう?
個人になると、それぞれの方法で
自分のリアルを追及している
最中でしょうけども・・・。
3人で一緒にやるなら、3人のなかでも
いちばんベーシックな部分が、
今回つながるのかな?
そう思っています。
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宇田 |
わたしも、そうやってつながるとうれしい。
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宮下 |
わたしにとって自然を感じさせるのは、
女の人独特の
「裸になった時のまるみ」であったり、
「体型の変化」だったりするんですよね。
写真をはじめたきっかけが
ヌードを撮りたかったからだというのは、
前に宇田さんと会った時に言いましたけれども、
それは、ウソがないからなんです。
話をすると
ウソくさくなることが多かったとしても、
体や顔の表情だとか体形だとかは、
わたしにとって
「人として生きているんだなあ」
ということを、
唯一感じさせてくれるところというか。
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美雨 |
女の人は、ウソつくのうまいからね。
3人で組む時の「リアル」って、
見る人にとってのリアルなのか、
それとも、自分にとってなのかなあ。
両方なの?
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宇田 |
たぶん、
発表形態が仮にインターネットだとしても
いろいろな人に見てもらうわけだから、
相手の対象をひとつに決めるのは、
たぶん、無理だと思う。
「わたしはわたし」ってやるほうが・・・。
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宮下 |
うん。
「誰に向けてこう作りこむ」というよりは、
「こちら側の思いをこう出す」みたいな。
じゃあ、こっちの3人が「リアル」に関して
バラバラになっちゃうっていうことが、
ないようにすればいいんですよね。
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宇田 |
わたしにとっての「リアル」は・・・。
わたしは、
構造を重視する作りかたをするんです。
「あるイメージが頭に浮かんだ時、
それを人に理解もらう為には
どう構成していくか?」
と、そういう作り方です。
主観的な部分は、
いつもひた隠しにするほうです。
語らないでもわかってくれればいいという。
さっき、美雨ちゃんが、
自分のための日記には
感情はあまり書かないと言ってたところと
つながるのかもしれないけど、
「人って、ひとりでいる時にはそれほど
表情豊かでは、ないんじゃないか?」
と思うんです。
頭や体の中ではいろいろ感じながらも、
無表情で淡々と過ごす、っていうのが、
わたしにとってのリアルかな。
でも、そうやって主観を隠そうとしていると、
実は、自意識過剰である自分に気づかされて、
最後にはこれも主観ということで
おさまりますけど。
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美雨 |
作品に触れた人に
想像力をはたらかせてもらうのって、
そうそう簡単なことじゃないよね。
それはわたしが日々すごく痛感していて。
想像力をはたらかせてもらうには・・・
あ、そこまで考えていたら、
正直言って、
何にも作れないんですけど(笑)。
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宮下 |
そこまで考えたら作れないけど、
でも、一瞬はどこかで考えちゃうよね。
3人でやる時って、どうします?
それぞれのいいところを集めるか、
それとも、まったく新しいことをやるか、
という選択だと思うんですけど・・・。
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美雨 |
誰かが誰か寄りになるんじゃなくて、
みんなで勢いで新しいことをやったほうが、
なんかおもしろいよね、たぶん。
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宮下 |
うん。
あ・・・3人の中で
最低限決めておいたほうが
いいことは、もろもろ、あると思いますけど、
あの、もう、やりはじめちゃわない?
まだ早いですか?
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美雨 |
いいよ、はじめよう。やろうよ。
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宇田 |
うん、やろうよ。
それぞれのやりたいことが
わかったような気もするし、
まだ決められていない気もするけど、
このまま話しあいをしているよりも、
まず「何をする?」ってところに戻ろっか。
宮下さんは、
美雨さんの日常を撮りたいんだよね?
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美雨 |
いっしょに住む?
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宮下 |
(笑)え?
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美雨 |
いま、「一緒に住む」の最後のところに、
ハートマーク、つけてたんだけど(笑)。
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宮下 |
(照れる)
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宇田 |
(笑)いや、いいと思うよ? それも。
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宮下 |
(笑)いま、直球で来たから
どうしようと思ったけど、
それも、できるかもしれないです。
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美雨 |
例えば明日、とりあえず一緒に行動しませんか。
午後からともだちのライブに行くから、
よかったら、ご一緒に。
・・・そういうおつきあいから、
はじめていきましょうか(笑)。
はじめてみないと、
答えも見えてこないもんね。
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宮下 |
うん、ありがとう。
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宇田 |
美雨ちゃんが
そう言ってくれて、すごくよかった。
どうもありがとう。
実は、美雨ちゃんは芸能界の人でもあるから、
どこまでコンタクトを取れるかどうかを、
わたしと宮下さんは心配してたんです。
ここまできちんと話してくれるんなら、
「これだ!」と思ってやれるから。
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