ガールズ・フライト!
宇田敦子。宮下マキ。坂本美雨。
御免、糸井重里。

 
第4回 小宮山雄飛さん。


7月12日の
宇田敦子さん、宮下マキさん、坂本美雨さんの
話しあいに、飛び入りで参加してくれたのが、
ホフディランの小宮山雄飛さんです。

「音楽をやっていなかったら、
 デザインを主な仕事にしていたと思います」
という小宮山さんは、
現在、別件で、宇田敦子さんと組んで、
何か「映像もの」をつくっているみたいです。

7月12日のお昼に、
宇田さんと打ちあわせをした小宮山さんは、
その足で、ふらっと来てくださったんですよ。

今回、お届けするのは
小宮山さんと3人のはじめての会話になります。
前回の話しあいと同じ日ですので、
つづきものとして読んでくださいね。

このプロジェクトにはよくある話なんですけど、
やっぱり今回も、出会った最初から、
いきなり「打ちあわせ」になりました!





こちらが、小宮山雄飛さん。
渡辺慎さんとのバンド「ホフディラン」の
ボーカル・キーボード・アレンジなど担当。
96年にメジャーデビュー後、98年に発表の
『欲望』『極楽はどこだ』などで話題に。
アーティストへの楽曲提供やプロデュース、
リミックス、CDジャケットデザインなど、
好きなことを好きなようにしてる人みたい。
最新アルバムに『31st CENTURY ROCKS』、
最新シングルは『MY THING』が出ています。



【直接、当事者どうしでつながると、おもしろい】

小宮山 昼に宇田さんと会うのもはじめてで、
ここにも、突然来たんですけど。
えーと、こういうの、イイですね。
おもしろいです。

いわゆる、
「事務所やレコード会社を通して」
というやりかたでしか、
どうしても何かをできなくなるところが、
音楽関係者には、あるんですけれども、
そうじゃないことをやりたいなあ、
と前々から思っていたと言うか。

だからぼくは、
キヤノンの映像コンテストか何かで
宇田さんの作品を観て、
こないだ突然メール出してみたんです。
「ちょっと、一緒に何かつくりませんか」
みたいな。

直接やりとりしちゃったほうが、
おもしろいと思ったから。



そしたらさっそく
宇田さんからの返事が来て、
今日のお昼に、はじめて会ってみて、
打ちあわせをしてたんですよ?

それもおもしろかったんだけど、
宇田さんが、
「いま作っている作品です」
みたいなものを見せてくれた中に、
なんか、美雨ちゃんの絵が出てきたの。

「あれ? これ美雨ちゃんじゃん」
「いま、彼女と一緒に、
 何かをしようとしているんですけど」
「え? 俺、美雨ちゃんと仲いいよ」
「今日、このあと夕方から会うんですよ。
 ・・・じゃあ、一緒に行きませんか?」
 
そういう急な展開がおもしろかった。
例えば、
ぼくがHIROMIXと組む時もそうですけど、
そういう展開って、最終的には
割といいことにつながることのほうが多いので、
とてもいい経験を
させてもらったくらいのつもりで、
今日は、ここにいたんですけど。

美雨ちゃんと仲がいいというのも、
そうだと思うんですけど、
アーティストどうしが仲よくやっていくのは、
とても大事だと思っているんです。

プロと素人さえも問わないところで、
どんどん人がつながって、
おもしろくなってって、
しかもオトナを巻きこんでいくっていうのは、
いちばんおもしろい状況なんじゃないか、
と思うので、一緒にできることがあれば、
ぜひぼくも、ここで何かやりたいなあ、
と思っていますけれども。



なんていうか、一市民として、
やってみたいような気分がありますね。
「一市民として」というのは、
どういうことかと言いますと・・・。

音の扱いって、すごくむつかしくて、
例えばこの企画が
パソコン上で誰かに楽しんでもらうものになると、
相手がどういう状況で聞いているのかで
ぜんぜん違ってくるじゃないですか。

いまのパソコンだと、
基本的には、スピーカーがあまりよくないですから、
例えば映像とからめばいいとは思いますが、
音楽だけをただコンピュータで配信して、
それをコンピュータの上だけで聴かれても、
それはぼくのやりたくないものなんです。

あくまでも、ぼくがやるなら、
映像だったり企画だったりとリンクして
おもしろい音にしないと、いけないと思います。

ふだんぼくらがやっていることを
そのままインターネットの世界に移行させて
おんなじようにやりたくは、ないんです。
それじゃあ、おもしろくないから。


これまでやったことないような、
何らかの意味のある映像とかと、
音を結びつけられればいいなと思いますね。
だから、「一市民」っていうか。

それじゃあ、3人、がんばってください。
・・・って、俺もやるのか!


【ともだちといるのが等身大】

宮下 わたしは、何かつくられたものとか、
「演出」というものが嫌いなんです。
だから美雨ちゃんを
土台にさせてもらえるなら、ほとんど
演出をしないままで、いいと思っています。

具体的には、どうしよっか?




(↑美雨さんが来る時には、
  すでに小宮山さんがスタンバイ。
  「あはは。なんで雄飛くんがいるの?」
  「そりゃあもう来ますよ、俺も(笑)」)
小宮山 いままで話を聞いた中で、思うのは・・・。
俺のイメージとしては、
「美雨ちゃんは、ともだちが多い」なのね。
常にいろいろなともだちが、
生活に入りこんでるっていう気がすんの。

美雨ちゃんは、家の中で
ひとりで何かをしているというよりも、
「いろいろな人と会って、
 いろいろなところに行っている」
というイメージがあるんですよね。
いろんなバンドのライブ会場に行ってるとか、
誰かとしゃべっているとか、
NYで何かしてるとか。

ふつうに生活していれば、
いろいろな人に、会いますよね。
だから、いやらしく「ゲスト」だとか
そういう気持ちじゃなくって、
美雨ちゃんを撮るなら、ともだちも
うつりこんでいったほうが、
自然じゃないかなあと思いました。
・・・俺のイメージとしてだけですけど。
宮下 それは、わたしが
いちばんやりたいことかもしれない。
小宮山 割といろいろな人と会っていたり、
人のライブにいってみんなと話しているんだけど、
帰るとひとりで泣いている、みたいな。

そういうものが観られたら、いいなと思う。
「みんなといる」とか
「ひとりでいる」とか
どっちか一個を選んじゃわないものなら、
もっと魅力的になるだろうな、と感じました。

美雨ちゃんを主人公として描くとするなら、
その両方があるほうが、リアルだし
等身大の姿だという気がしましたけれども。

東京の町であちこち遊びにいっている
美雨ちゃんっていうのが、
ぼくにはリアルなんです。



割と美雨ちゃんは、
本音と建前って感じじゃなくて、
ふつうにぜんぶを楽しんでるみたいだから、
遊んでいるところに宮下さんが一緒についてって、
何気なく撮っても、いいものが、
出るもんは出るんじゃないかな、
っていう気が、するんです。
宮下 うん。 ともだちと一緒にいるだけじゃなくて、
泣いているところのほうまでいかないと、
わたしは嫌かもしれない。


【裸は、自然なのかな】

小宮山 「等身大」とか「自然」って、何なのかなあ。

例えば、フリーダムみたいなものって、
行き着くと裸みたいなものに
なったりするじゃないですか。

レイブパーティーとかで
裸でイエーイみたいなところに、
もし撮影が行ったとしたら、
それは自然なのかっていうか。
宇田 え?(笑)
宮下 (笑)
小宮山 いや、「たとえ」だけど(笑)。

それをもし撮ったとしたら、
撮っている人と撮られている人の
ふたりのあいだでは、もしかしたら、
すごく自然かもしれないんですが・・・。

でも、そうやって作られた写真集があっても、
それを自分の家とか街角で観ている人は、
裸になってるわけじゃ、ないじゃない?

だとしたら、その映像は
自然じゃないんだよね、きっと。
何を自然で何が自然じゃないかというのは、
相手によるよね。
裸になったとしても、
観ているサイドと裸でいるサイドが
うまく組みあえば、自然かもしれないし。

美雨 なるほどね。
小宮山 たとえばエロ本だと、
観ている人と観られている人が
自然につながるわけじゃん。
美雨 両方の目的意識が(笑)。
小宮山 「ああ、雑誌買った男に、
 家で観られるんだろうな」
と思いながら、写真を撮られるわけで(笑)。

ドキュメンタリー的な写真になるか
どうかはわからないんですけれども、
それがどう観られているのかまで考えると、
観る人との距離がおもしろかったりするよね。
宮下 そうかもしれない。
美雨 うん、わかる。

男の見方と女の見方が違うみたいなことで
思い出したんですけど、
このまえ、メーリングリストで、

(※注:「ガールズ・フライト!」
    の関係者は数人で、会わない間、
    メーリングリストをまわしています)

2作目の宮下さんが、
宮下さんの知りあいを撮影した試作について、
糸井さんから、
「もしかしたら、
 おっぱいの扱いがつまらないかもしれない」
という風なメールの感想が、届きましたよね。
その感じが、わたしは
いまひとつ実感できないんです。



(※これが、ここで話題にしている
  宇田さん宮下さんの試作2作目の一部。
  後日くわしくご紹介しますので、あえて
  小さめの表示に、させていただきました)
小宮山 さっき宇田さんに
その作品を見せてもらったんですけど、
確かに糸井さんがそう思うっていうのは、
わかるところがあるかもしんない。

まあ、男全員がそういう意見を
持っているわけじゃないから
「あのおっぱいは、楽しかった」(笑)
とか、おっぱいひとつとっても、
たぶん、いろんな感想があるとは思うけど。
宇田 (笑)
宮下 おっぱいの何が違うのかなあ。
・・・大きさ?
宇田 (笑)ちがうちがう!
美雨 (笑)「扱いかた」だよ〜。
宮下 (笑)・・・あ、ごめん。
わたし、また脱線してる?
森田 (NHKデジタルスタジアムスタッフ)
女の子が、女の人の裸を撮ると、
「胸なんて意識していないわよ」
って、裸以外のところを見せようとするのかな、
というようなことを、糸井さんは
あのメールで書いていたんじゃないでしょうか。
胸っていうのは、実は女の人にとっても、
もっと、セクシーだったり、
気になる存在だったりするんじゃないのかなあ、
ということをおっしゃりたかったんだと思います。
小宮山 そうなんですよ。
ぽつんと一枚、
胸の見えている写真があるでしょ。
スケベなことを意識していなくても意識していても、
胸が出ていると、どうしても男としては、
ドキッとしてしまうわけじゃない。
この先、何が起こるのか?って。
宇田 あ、そうだ。
あれを家で作ってる時、
確かにうちのおとうさんも
通りがかって「え?」って驚いてた。
それを忘れてた。
小宮山 (笑)いい方向でも悪い方向でも
胸が出れば、男はセクシュアルなことを
意識してしまうわけだから、
その気持ちを満たしたほうがいいのか、
身をかわしたほうがいいのか、
そのどちらかになったほうがよかったかもしれない。
・・・まあ、あくまでも、
男から見て、のことなんですけれども。
宮下 男から見た視点を
裏切りたいという気持ちが、
撮っているわたしには、
無意識にあるかもしれない。
小宮山 裏切られたとしたら、
それも、すごくいいんです、きっと。
「ちきしょう踊らされたなあ」
っていうのがあれば、いいと思う。

ただ、今回は、
裏切られたのかどうなのかもわからなくて、
裸が、ないものにされちゃってたかもしれない。
女の人には、それでいいんでしょうけど。



女の子にとっては、胸も
毎日見るものだし、自然なものですよね。
でも、男は明らかに、特殊な状況でしか、
女の人の裸を見ることはないですから。

そこも、どちらの何が
リアルなのかってことだと思うけど。
宮下 でも、「裸」っていいよねー。
宇田 (笑)
宮下 (笑)・・・え? そういう話じゃないの?
小宮山 (笑)イイですよ。
そりゃ俺も、間違いなく
一票投じさせてもらいます。
「裸賛成」ですよ! ぼくも。
美雨 (笑)


リアルについての話しあいは、
このような感じで進んでいきました。

「事務所やレコード会社を通して、
 というやりかたでしか、
 何かをできなくなるところが、
 音楽関係者には、あるんですけれども、
 そうじゃないことをやりたいなあ、
 と前々から思っていたと言うか」

「直接やりとりしちゃったほうが、
 おもしろいと思った」

「プロと素人さえも問わないところで、
 どんどん人がつながって、
 おもしろくなってって、
 しかもオトナを巻きこんでいくっていうのは、
 いちばんおもしろい状況なんじゃないか、
 と思うので、一緒にできることがあれば、
 ぜひぼくも、ここで何かやりたいなあ」

という小宮山さんの言葉が印象的でした。
誰がどう入ってくるかもわからないまま、
当事者どうしが直接勝手にやりとりをする企画って、
きっと、乱暴でおもしろくなるでしょうから。

こうしているあいだにも、日は経ち、
また違うことが、起きはじめているようですよ。

宇田さん宮下さん美雨さんの3人は、
更なる撮影を経たあとの7月30日に、
もういちど、電話やメールではなく
実際に全員で会う打ちあわせをしています。
その様子は、また今度お届けしましょう。

宇田さんたちの試作品も、
そろそろ紹介したいと考えていますので、
次回の「ガールズ・フライト!」を、
どうぞお楽しみにお待ちくださいね。

2001-07-31-TUE

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