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第40回 雲が光る瞬間を、
追いかけてみよう。


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秋も深まってきて、ますます空も高くなり、
空には様々なかたちをした雲が
流れるように漂っています。
そういった雲のかたちはもちろんのこと、
雲そのものの色にしても、
同じ白でも、夏のそれに比べると
かなり透明感があるように
感じられるようになりました。
晴れた日に、この秋ならではの、
透明度の高い光が満ちあふれている
空を見上げてみると、雲たちが、
強い風が吹いていれば速い速度で、
ゆるやかな風の時はゆっくりとした速度で、
次から次へと、かたちを変えていくのを
見つけることができます。
秋は、雲たちが、もっとも多彩で、
光り輝いているように見える季節なのです。

前回、スティーグリッツの話の中で
雲の写真について触れましたが、
私たちもぜひ、秋の雲を写真でとらえてみましょう。

「瞬間をつかまえる」作業を
繰り返していくと、
いろんな発見ができるようになります。


といっても、じつは、これ、
難しいことでもあるのです。
誰もが知っている「秋の空」を
自分だけの「秋の空」にしようなんて考えるのは、
ちょっと無謀だと言ってもいいかもしれません。
そのうえ構図だの、光の具合だのを考えはじめたら、
それこそ、きりがありませんよね。
ですから、まずは構図や光のことなど気にしないで、
空を見上げて、「わぁ、きれい!」と思う瞬間に、
シャッターを切ってみてください。
ただそれだけで、いいのです。
ただし、1枚撮って「よし、これで撮れた!」と
カメラをしまわないで。
ぜひ、それをしばらく繰り返してみてほしいのです。
そうすると、いろいろな発見や予測が
できるようになってきます。

たとえば、空にふたつの雲があったとします。
ゆっくりと、その変化を見ていると、
時には、それらが重なり合って、
ひとつの雲になる瞬間に出会えるかもしれません。
そして、そこに運良く美しい光が
当たってくれようものなら?
それはもう、それだけで、
いい写真が撮れたようなものですよね。
そのうち、「あの切れ間から、もうすぐ光がさすぞ」
なんていう予測もできるようになるかもしれません。

じつはこれは、
「連続する時間のなかから一瞬をとらえる」という
写真のいちばん基本的な「勘」を育てるための、
いい(そして楽しい)練習にもなると、
ぼくは考えています。
そして、実はこれが一番大切なことなのですが、
その写真を撮ったときに、
その時の印象といっしょに、
自分自身の気持ちの動きも、
しっかりと覚えておいてくださいね。

秋の空も、人の顔も、
変化に富んでいるから。


「瞬間の発見」というのは、
空での話に限ったことではなくて、
ぼくたちの身の回りでもたくさんころがっています。
ですから、秋の空と雲を撮るレッスンで
その感じが何となくでもわかったら、
今度は、身の回りのものごとにも、
その眼差しを向けてみましょう。
すると、そこにも必ず同じように
「あっ!」であったり、
「へぇー!」であったりがあるはずです。
しかも今度は、その中でも
楽しい予測だって出来るようになっているはずです。
赤ちゃんを撮るお母さんの写真が「いい」のも、
お母さんが赤ちゃんをずっと見続けていて、
「こんどはこんな顔をしたよ!」という発見や
「このあとこんな顔をするぞ?」なんて予測を
いつもしているからだと思うのです。

そして、ぼくがいつも面白いなあと思うのは、
そんな写真が撮れたときは、
いつだって、何ともいえない程に
気持ちのいい感じがするのです。
しかも、そんな時の感じは、
感情的にも、いつも以上にとても穏やかで、
どこかで、にんまりしてしまうほどに
晴れやかなものだったりするのです。


秋の光はとても変化に富んでいますので、
その変化をしっかりと見定めながら、
練習だと思って、それでも楽しみながら、
空だって、人の表情だって、
何だって構いませんから、
いつもよりも少しだけ積極的に、
そういった変化を追いかけてみてください。
そしてもしも、そういった変化の中から、
「あっ!」と思える瞬間を見つけることが出来たなら、
それが、光をつかまえた、
いい写真が撮れた、何よりの証なのです。
しかも、それさえ覚えてしまったら、
おそらくどんな時でも、いつだって、
もっともっと、楽しく写真が撮れるはずですよ。



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次回は、
「携帯電話のカメラの楽しい使い方」
というお話をします。お楽しみに。


2006-11-10-FRI
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