おいしい店とのつきあい方。
サカキシンイチロウの秘密のノート。



クリスマスにふさわしい店って
どういう店なんでしょうか?

クリスマスっていうとみんな
「フランス料理」とか
「イタリア料理」とかを思い浮かべるようです。
西洋のお祭り感が強いから、やっぱり西洋料理で、
ということになっちゃうのかもしれないけれど、
本来のクリスマスの意味は
「大切な人とシアワセを分け合う」
ということになるのだから、
シアワセになれる場所であればどこでも大丈夫なんです。
例えば、雪の降る夜の日本料理店のお座敷。
例えば、男性ばかりのグループで囲む中国料理店の円卓。
十分に楽しく、十分にシアワセなクリスマスの食卓です。
逆にフランス料理のレストランのように
クリスマスにふさわしそうに思えるレストランでも、
利用しちゃいけない店ってあるんでしょうか。
実はあります。
かなりの数、あるんで要注意です。

シャンパンの銘柄と価格帯をチェック!

まずクリスマスにふさわしくない店といえば、
「お酒が高くて品揃えが悪い」店です。
なにしろ一週間分の楽しみを
この日一日で味わわなくては勿体無い、そんな日です。
だから「美味しくて楽しいお酒が気軽に飲める」のは
大切な条件。
どうすればわかるでしょう、
お酒が高くなく的確な品揃えであるのかが。
電話でワインリストのあれこれを、
根掘り葉掘り聞くようなコトは出来ませんし、
しちゃいけません。
この際のポイントは一つだけ。
シャンパンが揃っているか。
そしてそれが手の出る価格帯で揃っているか、
ということです。
電話で聞いてみましょう。
「せっかくのクリスマスディナーなので
 シャンパンをあけたいと思うのですが、
 どんな銘柄が幾らくらいで揃っているんでしょう?」
お奨めのシャンパンが
「1本6000円から8000円」で揃っている。
合格です。
しかもヴィンテージの取って置きのシャンパンが
「何本かございます、少々、値がはりますが」。
ますますよろしい。
「なんでしたらグラスでもご用意できますので
 お気軽にお申し付けくださいね」
完璧です。
中国料理店でもシャンパンを取り揃えているところが
かなりあります。
あるいは和食の店でも見事なワインリストを
持っている店もあります。
そうした店は普通の人が思いつかない、
楽しいクリスマスを過ごすことが出来る
優秀な店である可能性がとても高いのです。

そしてクリスマスのメニューをチェック!

次にクリスマス用のメニューが一つだけ、
それ以外の料理はご用意できませんという店。
これは絶対に駄目。
結婚披露宴に出ているわけじゃないんですから。
たっぷり時間をかけて注文をして、
それぞれが食べたいものを食べ、
そのシアワセを分け合うくらいの余裕と贅沢こそが
クリスマスにはふさわしいと思いませんか?
それから、クリスマスメニューと
それ以外の時期のメニューの値段が違いすぎるのも
アウトです。
クリスマスがその店に行くときの初めての機会になる、
というのは本当はとても危険なんですネ。
本来、良い店であればあるほど、
クリスマス一日の状態でそのお店を判断してしまうと、
本当の魅力を知らないまま
「高くて特別な料理だけのせわしない店」
という変な印象を刷り込んでしまいます。
だから、出来ればおなじみの店で。
そうでなくても一度くらいは行ったことがある店で。
それが無理なら、普段はどんな料理の店なのか、
ちょっと聞いてその店の雰囲気をイメージしてから
予約するくらいの工夫が必要でしょう。

シャンパンもある、メニューも幾つかの選択肢があって、
でも「6時から8時までの2時間だけの
お席のご用意となりますがよろしいですか?」
といわれたとします。そんなときは、
「いえ、それなら結構です」と断る勇気が大切です。
みんながおんなじ時間に食事をスタートして、
おんなじ時間に食事を終える?
これでは素晴らしい料理が提供されるはずもないですし、
なにより心配りに満ち溢れたサービスを
楽しめるわけもありません。
そればかりか下手をすると、お店にいるお客様が
ほとんど同じタイミングで一斉にプレゼント交換する、
まるで儀式めいた場面に
つき合わされるようなことになったりもします。
注意しましょう。

多忙をきわめるあなたの、
クリスマスの素敵な過ごし方は‥‥?

クリスマスの予約はいつもより入念に。
でも、なかには当日にならないと予定がつかない、
という人もいます。
今年のように週末とはいえ、
仕事の関係でそんなに前から入念な準備が出来ない、
予約も出来ないということもあるでしょう。
急に予定がぽっかりあいて、
クリスマスを祝いたいのだけれど、
気のきいたレストランは予約で一杯。
どうしよう、というような状況です。
ボクはそんなとき、とりあえず
ホテルのロビーに行くことにしています。
クリスマスというこの時期に、一番クリスマスらしく
きらびやかでシアワセなムードに
満ち溢れている場所といえば、
シティーホテルのロビーです。
大きなクリスマスツリーがドンと置いてあって、
そこだけ日本じゃなくて
ヨーロッパとかアメリカとかのような雰囲気がある。
ロビーの従業員の人たちも
どことなくシアワセな空気をまとっていて、
ロビー全体が軽やかなのだけれど
荘厳なムードに包まれている。
それだけでジョーカー1枚分くらいの
つまり1週間ぶんくらいの(前回の記事を参照!)
贅沢さを味わえます。
で、そのホテルの中で空いているレストランを
どこでもいいから使うことにしています。
コーヒーショップ。
中国料理のレストラン、
あるいは寿司レストランでもかまいません。
クリスマスバイキングとか、
クリスマスディナーショーとか
イベントなんかをやってない、
どちらかというとそこだけポッカリ、
クリスマス気分から忘れ去られたような
静かな店をワザワザ探して、
そこで食事をすることにしているんです。
運がよければお店の人も空気も、
みんな独り占めのような贅沢を味わえる。
しんみりとして厳かな気分のクリスマスもいいものです。

クリスマスの日、予約した店で
どう振る舞いましょうか?

ところで、クリスマスの当日、
注意しなくちゃいけないことは何でしょう?
記憶に残る素敵なお客様になるには
どうすればいいのでしょう?

まず予約した時間ピッタリに、
遅れず騒がずレストランに現れること。
クリスマスはお客様の立場で考えると
「一年で一番、ユックリした時間を楽しむ日」です。
ところがレストランの人たちにとっては
「一年で一番、せわしなく忙しい日」であるということ。
つまりクリスマスのレストラン、
あるいはレストランを取り囲む空間には
二つのまったく違った時間が流れている、
ということをまず頭の中に置いておきましょう。
パーティー、あるいはフォーマルなレストランを
訪れる際の気配りの一つとして、
「約束した時間のちょっと後にベルを鳴らすこと」
というのがあります。
準備が整っていないホスト役を
慌てふためかさないように、
ちょっと余裕を持って早くついたら
入り口の前でぶらぶらして
時間をつぶすくらいの心配りをもって、
といわれるのですが、
ことクリスマスのレストランについては
そうした配慮は無用です。

だって、クリスマスです。
しかも今年のクリスマスは週末で、
無粋な話をすれば月末決済日にもあたる日です。
道路は混みます。
へんてこりんな場所を待ち合わせ場所に選んだら、
お互いがめぐり合うのにさえ
時間がかかるようなことが起こるでしょう。
遅れてやってくる人、続出の日。
それがクリスマスとレストランの人は
半ばあきらめている、それが現実です。
だからこそあなただけは時間通りに。
ドアを開け、いつもよりも余分に賑やかで
華やいだ雰囲気の中にお店の人を見つけたら、
目と目を合わしてこういってみましょう。
「予約しておりましたサカキです。‥‥メリークリスマス」
大変で苦労が多いクリスマスという日にあって、
印象に残るお客様になれるはずです。

そのときあなたはどんな装いでそこに立っているでしょう。

クリスマスディナー、なにを着る?

まずは、お洒落をしましょう。
着飾るのでなくて、お洒落。
寒い季節です、どうしてもコートや
厚手のジャケットが必要になる。
そうした季節にお店の人は
どうやってあなたを待っているかというと、
部屋を十分に暖めて今年一年のシアワセなことを振り返り、
それをお客様同士が分け合う場所にふさわしい、
春の始まりのような空気でお店を満たして待っています。
だから贅沢でかさばるばかりの
毛皮のコートのようなものを
着込んでゆくのはやめましょう。
食事を楽しむために必要も何も無いものを
身につけてゆくことを「着飾る」というのです。
見場(みば)はいいのだけれど、
北風と太陽の逸話をそのままなぞって演じてしまうような、
厚手のジャケットを着てゆくのもやめましょう。
周りの人たちまで暑苦しい思いをさせてしまう
場違いな装いをすることを、
これまた「着飾る」というのです。
お店の人の邪魔になるばかり、
あるいはあなたの邪魔になるばかりです。

この時期のお洒落のポイントは「胸から上のアクセント」。
クリスマスのテーブルはいつもに比べて華やかです。
花が飾られていたり、
磨き上げられたナイフフォークがずらっと並んでいたり、
あるいはとっておきのクリスタルのワイングラスが
そそり立っていたりする、そ
れがクリスマスというものです。
テーブルの上ばかりが豪華で立派で、
本当の主役であるはずの
ワタシ達がくすんでしまわないように、
胸から上をちょっとゴージャス。
場合によってはクリスマスならではのような
アクセントをつけてみる。
そんな感じ。
まあ頭からクリスマスツリーをはやして
華やかさを演出してみました、とまでくるとそれは仮装。
仮装はハロウィンにしましょう。

そして実際にテーブルに付き、
食事を始めたら楽しい話題で盛り上がる。
同じテーブルを囲む人たちを会話でもてなす。
笑顔と楽しそうな笑い声がこの大切な日にはふさわしく、
そのシアワセな空気が隣のテーブルにも伝わって
隣のテーブルもにこやかになり、
そしてその空気がまたその隣に伝わって、
とそんなシアワセでレストラン全体が満たされるなら、
今年のクリスマスは最高のクリスマス。
メリークリスマス、です。

illustration = ポー・ワング

2004-12-16-THU


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