さて、3時間ほどの晩餐のあと。
お店からほとんどのお客様がお店から姿を消した頃合で、
ボクはマダムにお詫びかたがた、聞いてみました。
お店のみなさんに喜んでいただこうと、思ったことで、
逆にご迷惑をかけてしまったみたいで、ごめんなさい。
もし、何かお土産をもってくるとしたら、
どんなものがいいんでしょうか?
そう聞いてみたのです。
答えは簡単。
レストランで売っているモノや、
仕入れられるモノを持ってくるのは賢くないわね。
ワタシたちは、サカキさんより
食材を仕入れるコトには慣れている。
知識もあるし、良い物を仕入れるルートも持っているから。
できればワタシたちが欲しくて、
でもなかなか手に入れることが出来ないものを
お土産にいただけるとうれしいわ。
素敵なレストランのお話。
どこかで食べた、おいしかったお料理や食材のお話。
なにしろ、ワタシたちは他のレストランが
にぎわっているときには、
こうして働いていなくちゃいけないから。
ワタシたちがどんなに仕入れようと思っても、
それは仕入れるわけにはいかないでしょう?
それに、多分、サカキさんの方が仕入れ上手だと思うもの。
楽しい話。
なるほど、納得。
したたか、反省。
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閉店間際。
ご主人のシェフが厨房の中から、出てきます。
ワイン片手にくつろいで、
片手に透明のガラスのジャーをひとつもって、
ニコニコしながらボクのテーブルにやってくる。
テーブルの上にそのジャーをストン。
中にはホワイトアスパラガスがギッシリ詰まってました。
これ、サカキさんからもらったホワイトアスパラガス。
とても元気で若いアスパラだったから、
ピクルスでも作ってみようと思ってネ。
いただいたお礼のおすそ分け。
まだ作ったばかりだから、
あさってあたりが一番おいしくなると思うよ。
ちょっと我慢してネ‥‥、って。
それと一緒に、厨房の中から一皿とどく。
ホワイトアスパラガスを茹でてさまして、
それにアンチョビマヨネーズをトロンと垂らした前菜風。
それをつまみに、ワインを飲んで、
みんなでいろんな話をはじめる。
今まで食べた中で一番おいしかったパスタの話。
次のシーズン、作りたくてうずうずしている
秋の料理のおいしい話。
ボクがこの前行った、出来たばかりの
イタリアンレストランで感じたさまざま。
いろんな話で、夜中近くまで盛り上がる。
で、そのとき飲んだワインがとてつもなくおいしくて、
これ、高いんですか?
って、何気なく聞いたのですね。
シェフが言う。
いや、これはイタリアでは
そこそこ知れたワインなんだけど、
日本ではまだ引き受け先があんまりなくてね。
だからワザワザ、取り寄せてもらってるの。
来月、何ケースか届くはずなんだけど、
なんだったら一箱、お譲りしましょうか?
‥‥って。
値段を聞くと、確かにビックリするほど安く、それで一箱。
譲ってもらって、それはそのまま
お店のセラーにおいてもらった。
ボトルキープならぬ、ケースキープでありますね。
究極の友達付き合いをさせてもらった、そのきっかけが、
ちょっと恥ずかしい失敗だったというこの話。
もう10年以上も前のことであります。
なつかしい。
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今でもそのお店の人たちとは、よい、お付き合い。
素敵なお店やたのしい料理をどこかで見つけると、
あの人たちに会いに行かなきゃ、
ってそんな具合に思ったりする。
ときおり、野菜があまったから、持って行く‥‥、とか、
すばらしいチーズが手に入りそうなんだけど、
一緒に買わない? とかって、誘ってくれて、
そのたび、恐縮したりする。
お礼に、情報ばかりじゃ申し訳ない。
それで、海苔であったり、
沖縄でもなかなか取れない黒糖だったり。
イタリアンレストランでは絶対仕入れて、
使いそうにない、おいしいものを見つけて、
おすそわけする、そんな関係。
お互いの役に立とうと思う関係。
それが長続きする、素敵な友達関係なんだなぁ‥‥。
って、そんな具合に思ったりするのであります。
いかがでしょう。 |