受付前日の本日は、ひさびさに訪れた前橋の
『Schwestern Haus(シュヴェステルンハウス)』で
うかがってきたお話をお届けします。


▲到着! ドイツ風の外観がかわいいです。

もぎ おひさしぶりです。
ふじた よろしくおねがいします。
金井さん ようこそいらっしゃいました。
▲左が店主の金井初美さん。
右がいっしょに働いている紀子さん。
(着くなり、我々のために
ザッハトルテを出してくださいました。
切り分けたものではなく、ちいさなホールをまるごと!
とってもおいしそうです)
金井さん どうぞ召し上がってください。
ちいさくなると
味の印象がまたちがうと思いますよ。
もぎ・
ふじた
いただきます。
ふじた おいしい〜。ちいさいぶん、
チョコまでの距離が近いですね。
紀子さん チョコレート好きにはいいでしょう。
もぎ ああ、ぺろっと食べちゃった。
このザッハトルテは、
うちで販売をはじめて何年でしたっけ。
ふじた (調べる)
2003年からなので‥‥
なんと、もう16年が経ちますね。
もぎ このレシピって
発売当初から同じなんですか?
金井さん 基本的には
当時のレシピから変えていないです。
でもチョコレートやあんずジャムなど
材料で手に入らなくなったものもあって、
厳密にいうと多少は変わってます。
その変わったものに合わせて、
前と同じ味に微調整しています。
ふじた ほぼ日で販売する前から、
ザッハトルテはあったんですよね。
金井さん はい。1988年にこのお店をオープンして、
たしかその翌年には
もうザッハトルテをつくってましたね。
紀子さん なんでザッハをやることにしたんだっけ?
金井さん なんでだっけ?(笑)
とにかくつくりたかったんです。
当時、日本でザッハトルテを
つくっているお店ってほとんどなくて、
空輸されてきたものくらいしか
なかったんですよ。
それで、うちがザッハトルテを
出しはじめたんですけど、
あるとき、お客さんに
「本場のものとちがう」と言われたんです。
それは承知の上でつくっていたんだけど、
やっぱり一度は
食べに行ったほうがいいなと思って、
ザッハトルテの本場、
ウィーンに行ってみたんです。
ふじた なるほど。
金井さん で、行ってみたら、
本場のものは、とにかく
ものすごーくあまかった(笑)。
チョコレートのなかにお砂糖をいれて、
バッキバキに硬くしてあるの。
この技術って腕が必要だし、難しいんです。
でも、腕がよくて同じようにつくれたとしても、
これは現地で食べるからおいしいのであって、
日本の風土には合わないかなと思ったんです。
それで、ウィーンはウィーン、
うちはうちでつくろう、と改めて決めました。
うちのはこうだよ、と承知の上で、
オリジナルをつくるんだったらいいかなと。
ふじた 日本人が食べやすい味に仕上げたんですね。
紀子さん いま思えば、
ザッハトルテという名前じゃなくても
よかったんですよねえ。
金井さん ほんとにねえ。
でも、チョコレートケーキというと、
もっとチョコクリームがたっぷりなものを
想像しちゃうでしょうし、
ガトーショコラという人もいるけど、
それだと幅が広すぎて。
ザッハトルテがいちばんわかりやすかった。
だからいまでも、
懐かしいウィーンのあの味を食べたくて‥‥
なんて言われたら、
「すみません、ぜんぜんちがうんです」
って謝らなきゃいけない(笑)。
もぎ・
ふじた
(笑)
ふじた 一昨年と昨年は
新人乗組員の試食会をしたんですけど、
「あまいものは好きだけど、
そんなにたくさんは食べられないかな」
と言っていた乗組員も、食べはじめたら、
「あれ? ホールまるごといけそうかも」
と言うんですよ。
不思議なほど、どんどん食べ続けられる。
それってどうしてなのかな、と
気になっていまして‥‥。
金井さん やっぱり決め手はあんずジャムの酸味ですね。
酸味がアクセントになるから、
食べ飽きないのかも。
ふじた あんずジャム。
たしかに、あんずジャムの味が
濃厚に感じられる
「せなか」部分にたどりついたときの
喜びを語る乗組員も多かったです。
金井さん 酸味ってけっこう重要なんですよね。
それに、まんなか部分の生地にも
苦いココアが入るから、
そんなにあまさを感じずに食べられるのかも。
あとは、それから‥‥。

(立ち上がって、奥になにかを取りに行く)

これ、うちが使っているものなんですけど、
この2種類のチョコレートのうち、
まずこっちの色が濃いほうを
食べてみてください。
もぎ・
ふじた
いただきます。
金井さん あまくないでしょう。
ふじた ‥‥たしかに。
もぎ そんなにあまみを感じない。
金井さん これ単体で食べると、酸味も苦味もあるし、
そんなにおいしいとは感じないんですよね。
じゃあ、こんどは、
こっちの色が薄いほうのチョコレートと
組み合わせて食べてみてもらえますか。
ふじた (食べる)
あ、あまくなって食べやすくなりました。
金井 でしょう。
これは2種類の
「クーベルチュールチョコレート」
というもので、
濃いほうは酸味が効いたクーベルチュール、
薄いほうはミルク系の
クーベルチュールなんです。
これを組み合わせて食べるとおいしくなるし、
この配分が秘訣かもしれません。
最初に口に入ってくる部分に酸味があると、
そこまであまさを感じないんです。
もぎ・
ふじた
へえ〜!
紀子さん ザッハトルテの準備をしていて
これが出てくると、
ちょっとつまんじゃうのよね(笑)。
金井さん そして、この棒状のものは、
コーティング用のやわらかいチョコレートです。
これをまず溶かしてベースにして、
さっきの酸味があるクーベルチュールと、
ミルク系のクーベルチュールをいれて、
バランスを見ながら調整しています。
もぎ 長年担当してきたけど、
これは、今はじめて聞きました。
金井さん ただ、いいなと思うチョコレートが
なかなか手に入らなくなってきまして‥‥。
材料が変わると、それに応じてレシピを
調整しないといけないから、
それもちょっと大変です。
前は板のクーベルを使っていたんですけど、
それもなくなって。
ふじた なるほど。
金井さん あと、このザッハトルテの
特徴的な部分でいえば、
普通はグラニュー糖を使うんですけど、
うちは主に上白糖を使っています。
それから、バターも、
無塩バターじゃなく有塩バター。
いまどき上白糖や
有塩バターを使っているお店って、
あんまりないと思うんですけどね。
もぎ たしかにめずらしいです。
金井さん はじめは無塩も
使ってやってみたんだけど‥‥。

紀子さん いまみたいな
ワイルド感がなかったんですよね。
妙に、はんぱに、品がよかった(笑)。
もぎ (笑)
妙に、はんぱに、品がよかった。
ふじた おもしろいです。
でも、こんなにいろんなひみつを
教えていただいて大丈夫でしょうか。
金井さん いいのいいの。
あえて隠していることって、そんなにないし、
うちがやっている料理教室でも、
何もかもオープンにしているけど、
同じ材料があったって、
同じものをつくれるかどうかはまた別なんです。

(そんな話をしていると、
ちょうど業者さんから
ザッハトルテ用の箱が届きました)
ふじた は〜。こうやって
積み上がっているものを見ると、
なかなか圧巻ですね。
金井さん 一度に頼んでも置き場がないから、
毎週持ってきていただいて。
もぎ それでグラデーション発送を
されてるんですね。
1日だいたい何個くらいつくるんですか?
紀子さん 1日、多くて40個くらいかな。
ふじた それは、何人で‥‥?
金井さん わたしたち2人と、
あともう1人いて、3人体制です。
ふじた たった3人で!
もぎ ほぼ日では、たしか初年度は400個の注文で、
次の年から
「もっとつくれるかも」と
言っていただいたんですよね。
いちばん多いときは、
1000個までつくってくださいましたね。
紀子さん ほぼ日さんで注文をはじめた初期のころは、
ちょっと大変でしたね。
というのも、金井さんが夜に
料理教室をやっていたので、
昼間のうちにザッハトルテを
片付けておかなきゃいけなかった。
箱も積んでおけないから、
発送もその日のうちにして。
ふじた ああ、それは大変そう‥‥。
もぎ 今回も700個お願いしましたけど、
大丈夫そうでしょうか。
金井さん 我々も歳ですからねえ‥‥(笑)。
でも1年にこの季節だけですし、
続けられるかぎり、がんばりますよ。
もぎ・
ふじた
ありがとうございます。
金井さん (ザッハトルテを持ってきて)
そうそう、そして、
これがさきほど完成したザッハトルテです。
ふじた ああ、やっぱりきれい。
このパッケージのなかに
くしゅくしゅっと詰まっている
赤い紙もかわいいですよね。
紀子さん これね、95歳になる金井さんのお母さんが
赤い紙を丸めてくれているんですよ。
かつてはミーちゃんも手伝ってくれてました。
ふじた いいですね。
届いたときにうれしい気持ちになります。
今日はどうもありがとうございました。
もぎ いろいろ聞けてよかったです。
ありがとうございました!

ということで、ことしもザッハトルテ、やります!
注文受付は2019年1月10日(木)ですよ。
700個限定ですので、お早めにどうぞ。

2019-01-08-WED


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