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虚実1:99
総武線猿紀行

総武線猿紀行第214回
「え、その場面ホント?
 『ラストサムライ』を2倍楽しもう!」
〜佐伯先生と新春・武士の勉強〜その1

明けましておめでとうございます!
さて、新撰組など、武士ものが話題を集める今日この頃、
昨年の映画界の話題のひとつはなんといっても
「ラストサムライ」ハリウッドが、
史上初めてといっていいぐらい、
大規模に真正面から歴史上の日本を舞台に映画を撮った
意欲作です。
ハリウッドらしいゴージャスな画面で日本人を見ると、
いやはや、なんともカッコいい。渡辺謙。
しかし、ときどき「あれ?こんなこと本当にあったっけ?」
というような場面に多く遭遇します。
たとえば、捕虜であるオルグレンが
「サケモッテコイ」と騒いだり、
天皇陛下に外人であるオルグレンが、
敵とも味方ともわからない状態でガンガン会ったり。
ひょっとしたらかなりメチャクチャな部分が多い?
しかし、日本人であるみなさんも、
一体どこがおかしくてどこが正しいのか?
いまいち良くわからないでしょう。

僕の兄、佐伯真一、は国文学者をやっておりまして、
平家物語の専門ですが、昨年夏にNHK BOOKSから
「戦場の精神史〜武士道という幻影」
という本を出しました。
帯に「サムライは嘘つきだ!」と書かれています。
この本によれば、「ラストサムライ」だけではなく、
僕たちが時代劇などの映像などで、
なんとなく史実と信じてきた様々な武士に対する
数々の「常識」も、実は「?」だったりするらしいのです。
古典研究を踏まえ、細かく論証されたこの本を側に置き、
DVDでも借りて、「ラストサムライ」を
笑いながらもう一度見直してみませんか?
新春、新しいジャパネスクなひとときを貴方に‥‥。


先生、こんにちわ。

「こんにちわ」

まず、総評なんですが、どこが一番可笑しかったですか?

「後半の合戦シーンが可笑しいですね。
 主人公率いる反朝廷側が、
 刀ばっかり使って戦ってるんだけど、
 なんで鉄砲使わないんでしょう。
 この舞台は明治維新初期ですが、
 戦国時代だって鉄砲使ってるんですよ」


なるほど〜。刀で戦うという設定がおかしいのか。
でも、それがとにかくサムライっぽさを演出しますから。
鉄砲でズドーン! じゃ
お話にならないかもしれませんからね。
ということになると、もう、はなから、
この映画を支える骨格からして
グラグラしてきてしまいました。

それでは映画を見ていくことにしましょう。
まず、印象的な、幻想的な森の中の戦いから。
ここで主人公である、朝廷側の軍訓練士の
ネイサン・オールグレン(トム・クルーズ)と
勝元(渡辺謙)が初めて会って戦います。
鉄砲を装備して待ち受ける朝廷軍、
霧の中から突然現れる勝元率いる騎馬軍団。
鉄砲で隊列を組んだ朝廷側のオールグレンは、
そこで勝元側の行う、切腹などの武士の作法を
目の当たりにして衝撃を受けます。

「日本で森の中で馬や鉄砲が使えるところってないよね」

あ、そうか!

「鬱蒼とした日本の森じゃ、
 とてもじゃないけど馬を走らせられない。
 それから鉄砲を撃ったら、
 木に跳ね返って自爆してしまう。
 だから危険で森では戦わないんですよ。
 森を避けて平地などに
 戦いを持ち込もうとするわけです。」


確かに、ニュージーランドで撮られたという、
あの壮大な森。植生からしてもう日本じゃない。
そこからして違和感がなんとなくあったのだが、
そうか、そういう戦い自体が
日本に存在してなかったわけですね。

「そうですね」

第一回のまとめ
「戦国時代から日本の戦は鉄砲が主流」
「日本では、森では馬や鉄砲で戦わない!」

残念! ギリ!

それでは佐伯先生の著書
「戦場の精神史」を読んでみましょう。
244ページ

現在、『武士道』は、
武士の潔癖な倫理・道徳というような意味あいで
用いられることが多い。
しかし『国史大辞典』で『武士道』の項を見れば、
その最初に、
「『武士道』が武士の徳を指す言葉として
 一般的に用いられることになったのは明治以降である」
と記されている。
実は『武士道』のそうした用法は近代のものだというのが、
歴史学の通説なのである。」


ふ〜ん、武士道って、徳を指す言葉としては、
明治以降の言葉だったんですか? これは超意外ですよ。
でも明治になったら武士がいなくなったわけですよね。
武士がいなくなってから武士道って言葉が
潔癖な倫理・道徳として使われるようになった?
ジョン・レノンが死んでから、
平和の使者になって広まるのに似てる?(すみません)

と、謝ったら、さっそく先生から
意義申し立てがありました。
「ジョン・レノンは生きてるうちから
 反戦・平和のイメージがあったけど
 (ビートルズ全体としてそうだと思うけど。
  ジョージ・ハリスンも)、
 日本の武士は、実際に合戦をしている時代には、
 明治以降の「武士道」のイメージとは
 対極の存在だった‥‥」

再びすみません!
さて、その説明については、
連載を続けているうちに明らかにしていきましょう!


佐伯真一先生
1953年生まれ
専門は中世文学
同志社大学文学部卒
東京大学大学院文学研究科博士課程終了。
著書に「平家物語遡源」(若草書房)他




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2005-01-03-MON
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