読みなおす土曜。
2003/07/26
今週の一言

毎週土曜日はレビューの日!
・・・ということで、「ほぼ日」に登場した
あんな言葉やこんな言葉を、ご紹介します。
興味があったら、モトのページも読んでね。

今週は、いろいろな行動には、きちんと
それを裏づける目的があるんだという話を、
2つ、どちらも長めにおとどけしましょう。

【トッティの賢さ】

好感度沸騰中なのが
フランチェスコ・トッティです。
彼の出した本が出版界に
「信じられない大騒ぎ」を
起こしたのです。

イタリアでは、
本は10万部売れたら大ヒット、
ベスト・セラーということに
なっています。
トッティが、
そう時間をかけたとも思えない、
たぶん数週間で書いてしまった本は
売れに売れて
43万部を突破しています。
大騒ぎになって当然でしょう。
さて、どんな本だと思いますか?

答えの前に、まずは、トッティが
イタリアではどう思われているかを
お話しいたしましょう。
彼はサッカー選手としては、
もちろん抜群の人気です。
上手いし、かっこいいしね。
でも、あいつはサッカーのことしか
知らないぜ、というのが
皮肉屋さんたちの言い分です。
(やっかみ半分にね)
教養がないんだよ、平均以下だね、
とさんざんなのです。

だから、イタリアでは、
彼についての「笑い話」を
つぎつぎに作って
大笑いするというのが、
わりと自然なこととなっています。

「あいつは標準語は話せないぜ。
 ローマっ子だからな。
 わけわからないローマン語しか
 話せないんだよ」

といった具合。
トッティについての笑い話は、
「サッカー以外ではおバカさん」
というものばかりです。

「トッティの恋人、
 ヒラリーが彼に言いました。
 『愛しいフランチェスコ、
  みんなが笑い話であなたを
  からかっているというのに、
  あなた、平気なの?
  なにか反撃しないの?
  あなた、脳みそが
  あるんでしょう?』
 これに答えてトッティが言うには
 『えー? 僕の頭の中って、
  別のものが入ってるんだ』」

どうです、笑えましたか?
「トッティは、おバカさん」と
言われていることを
先に書いておいたから、
笑えたかな・・・。
イタリア人はこんなことを言いあって
大笑いしているんですよ。

で、こんなに
おバカにされてしまったトッティは、
じつは賢いんですねえ、これが。
逆手にとって、というべきか、
彼はそんな笑い話を
集められるだけ集めて、
一冊の本にしてしまいました。
これが
「信じられない大騒ぎ」とまで
言われる売り上げを達成した、
「トッティの本」なのです。

そのタイトルも、すばり、
Tutte le barzelette su Totti:
raccolte da me.
『トッティ自選集:
 僕に関する笑い話のすべて』

くり返します、
彼はおバカさんでは
決してありません。
それどころか、サッカー選手として
大金を稼ぐことばかりが
人生のすべてではないことを、
よく知っている賢い男です。
彼は、この本の売り上げ金の中から
著作権として受け取った
すべてのお金を、寄付したのです。
最初から寄付するつもりで、
この本を出したのでしょう。

「僕をバカにしてもいいよ。
 でも、ただ黙って
 バカにされていても
 つまんないから
 好い事のために
 ちょっと利用させてもらったよ」

というところでしょうか。
かっこいいでしょう?!

彼が受け取って、
すぐに寄付したお金は、すでに
25万ユーロ(約3300万円)。
トッティは、その大金を、
ぽーんと寄付してしまったんです。
本当にかっこいい!

(※「フランコさんのイタリア通信」から
 トッティの出版の動きを抜粋しました)



【増量トレーニングの理由】

自分は去年の10月頃から
ずーっと増量の為の
プログラムで動いていました。
(ちなみに100キロから
 108キロまで増やしました)
はじめの頃は、まず食う(栄養)のは
毎日鶏肉2キロがノルマ。
練習はスパーリングと、
ヘビーウェイトトレーニング。
限界ギリギリ。
そして、寝る(休養)。
どんなに忙しいときでも
必ず昼寝(30分以内)を入れる。
と言うのを半年以上続けました。
当時、これらのバランスが
少しでも崩れたら、体重は
すぐに落ちてしまってました。
つまり、やり続けなければ
いけないと言う事。
これって結構大変なんですよねー。

まず、食うですけれど、
鶏肉2キロってたいがいでしょ?
もちろん一回で
食ってたわけじゃないですよ。
一日何回にも分けてです。
でも、それにしても
2キロでしたからねー。
気が狂いそうになりました。
でも、そんな無茶も
内臓が頑丈だったので
無事クリアできたんでしょうな。
両親、先祖に感謝です。
ちなみに一番迷惑かけてたのは
カミさんでしたね。
「買い物が重いって」って
毎日言ってましたから。

次に練習ですね。
これが一番
大変な所だったんですけど
同時に体の変化を楽しみながら
自分はやっていました。
なんせ、もともと
100キロだった人間が
108キロになるんですから、
その変化は見た目にも
明らかでしたからね。
で、どうなっていったかって言うと
前よりどんどん
動けるようになっていきました。
面白いでしょ?
重くなったのに
動きやすくなっていくんです。
体重を増やすためには
ヘビーウェイトで
ウェイトトレーニングを
しないといけません。
でも、余計な肉をつけてしまっては
何の意味もないので、
自分は最初からできる限り
動きの練習(スパーリング)を
入れながら
ウェイトをやっていったんです。
だから、時間はかかったけど、
動きのスピードや柔軟性は失わずに
増量することができました。
ただ、自分は
ウェイトトレーニングの
動き自体は
格闘技には関係ないと思っています。
例えば、
寝技で押さえ込まれた状態から
相手を返そうと
腕を突っ張る動きは、
一見ベンチプレスと
同じ動きに見えますけど、
実際やってみると全然違います。
そりゃそうですよね。
相手の体重がかかる位置ってのは
いつも変化してるわけですから。
つまり、どの方向にでも連続して
強い力が出せなければ
意味がないのです。
それに対してしてベンチプレスは
同じ軌道で力を出さないと
ウェイトは上に上がってくれません。
逆のことを
しなければいけないんです。
でも、それをヘビーウェイトで
やることによって、
その重さを支えるために
体幹(胴回り)の力が強くなります。
これは、相手からの衝撃を
受け止めたり返したり、
また自分が攻撃をするときに
返されないように
安定させる力を出すときに
役立ちます。
ヘビー級の選手には
なくてはならない物ですよね。
だから、自分は今回
ウェイトトレーニングは
体重(筋量)を増やすためと、
体幹の力をつけるため、
と言う風に
目的を絞ってやっていきました。
それプラス
動きやすくなっていったんで、
これは成功と言えるでしょう。

(※「高阪TK剛じぶんレポート」から、
 最近のトレーニングの目的を抜粋です)



今週のこぼれ話

担当編集者からのこぼれ話や
裏話をお伝えいたしまーす。

【大村憲司さんのこと】

矢野顕子さんのライブアルバムに
“グッド・イーブニング・トウキョウ”
というCDがあります。
キーボードに坂本龍一さん、
ベースに小原礼さん、
ドラムスに高橋幸宏さん、
ギターに窪田晴男さん、
アコースティックギターに
吉川忠英さんが参加した
きら星のような
アルバムなんですけれど
アンコールの、最後の一曲で、
大村憲司さんがゲスト参加しています。

ぼく(武井)は、
矢野さんのこのライブを
大学生のときに見ています。
それまでぼくにとって
大村さんというのは、
darlingが言っていたのと同じで
「好きなミュージシャンのステージで
 よく見るギタリストの一人」
だったのですが
矢野さんが、
大村さんを紹介したことばに
深い愛情と、
強い尊敬と、堅い友情が
ふくまれているのを感じてから、
大村憲司さんがちょっと
特別なギタリストになりました。

そのアルバムの中で、
矢野さんはこんなふうに、
大村さんを紹介しています。

「きょう、ここへ
 集ってくださったみなさんは、
 ほんとうにしあわせです。
 わたしたちが
 心から敬愛するギタリスト、
 大村憲司!」

割れんばかりの大歓声のなか、
『また会おね』という曲の
イントロが始まります。
そこでの大村さんの
ギター・プレイについては
とてもぼくのちからでは、
文章にすることができません。
CDを聞くと、その時代、
その時間に、その(特別な)
ミュージシャンたちが紡いだ、
ぜったいにもう二度と
聞くことができない音が
濃密に詰まっています。

今回の特集は、
大村さんのエッセンスともいうべき
4枚のソロアルバムが、CD化されて
再発されるのをお知らせしたくて
企画したものです。
今週更新した沼澤尚さんをはじめ、
宮沢和史さん、大貫妙子さん、
高橋幸宏さんたちが、
忙しい時間をさいて、
大村憲司さんについて、
すばらしい言葉を
たくさん寄せてくださいました。
来週も引き続き、
どんどん更新する予定です。
ぜひ、読んでください!

ひとりでも多くの人が
「大村憲司という存在」に
気づいてくださったら、
ほんとうにうれしいです。

ちなみに矢野さんのアルバムは
現在も入手可能です。


"グッド・イーブニング・トウキョウ"
1988.5.21 RELEASE ミディ

(担当者 シェフ武井)


【『キリクと魔女』の「声」もいい!】

8月8日(金)に、
「映画『キリクと魔女』を
 真夏の深夜に観る会」

開催するにあたって、
「まず自分たちが観よう!」と
企画者として当り前のことを言いながら
「ほぼ日」乗組員の何名かは、
既に試写を見てきました。

そこで、ちょっと
興味深い現象があったのです。
試写から帰ってくると、みんな、
映画の中の色んな場面の
「モノマネ」を始める始める!
そこらここらで、
『キリクと魔女』が
演じられていました。

絵も、音楽も、セリフも、
抜群に素晴らしいのですが、
「声」や「言い方」も、
すごく印象に残るんです。
(この映画は、日本語吹き替えです)
昨日掲載された原稿で、
darlingが話していたように、
高畑勲監督が、声の出し方にまで、
すごく細かい演出を施された結果、
観た人の耳にそれが残って、
みんながついマネしたくなるものに
仕上がっているんですね。
セリフも独特ですし。

キリク役は、
『千と千尋の神隠し』で
坊の声を演じた神木隆之介くん、
魔女のカラバ役は、浅野温子さんで、
もう、ぴったりと、はまっています。
「声」にも注目の
フランスアニメーション映画です。
来週、月曜から
参加申し込みを開始します
ので、
どんどんご応募、お待ちしていまーす!
(担当者 通天閣あかり)


【舞台の迫力・ライブ録音】

宮崎駿監督が初めて
音楽CDをプロデュースしたことでも話題の
上條恒彦さんのアルバム
「お母さんの写真」。
このアルバムに収録されている
「見果てぬ夢」は
上條さんが出演されている
ミュージカル
「ラ・マンチャの男」の
代表曲のひとつです。

今回、このアルバムの中で一曲だけが
三鷹の森ジブリ美術館で
ライブ録音されました。

私の中の上條さんは
テレビなどでときどき目にする
「やさしい渋い声のおじさま」でした。
(実際にアルバムの打ち合わせで
 お目にかかったときもそういう印象でした)
しかし!ステージに登場した上條さんは
私の印象が
吹き飛んでしまう迫力がありました。
3m近くある木の杖を片手に、
ひざまづき、
「己の魂以外に、己のものと思うなかれ。」と
静かにセリフを語りはじめただけで
空気がはりつめていくのです。
そして、ゆっくりと立ちあがり、
アコースティックギター2本の伴奏とともに
からだ全体を使って歌いはじめました。
吹き抜けの美術館ホールに歌声が
響きわたる大熱唱です。
割れんばかりの拍手の中に、
darlingに負けずに
手が赤くジンジンするまでたたいた
私の拍手の音も入っているはずです。
活躍の中心を舞台に置いている方の
激しい一面を感じる時間でした。
(担当者 アロハ・トミタ)

2003-07-26-SAT


戻る