2008年が明けました。
みなさま、正月気分が抜けつつあるような
お気持ちでおられるでしょうか。
そんな「ちょっと日常に戻っちゃったかな?」
というときこそ、
このコーナーを味わってください。
今年も変わらず、毎週日曜に
みうらじゅんさんによる
「県」を語る旅がつづきます。
ある意味まじめに、一歩一歩やっていきます。
みなさま、今年もよろしくお願いいたします。
鹿児島県 論争も対決も、くり返す美学。
みうら (県くじを引く)
これは、わりと丸い県ですね?
ほぼ日 いや、丸くないです、ギザギザしてます。
鹿児島県です。
みうら ‥‥そんなとこまで
にぶってきましたか、ぼくは。
ほぼ日 いやいや。
みうら 鹿児島県で忘れちゃならないは、
明治維新についての記念館が
あるってことですよ。
ほぼ日 ええと、「維新ふるさと館」ですね。
みうら そこは、もう
驚くほどすごい記念館です。
これまでみなさんに、ぼくは
いろんな蝋人形館や記念館に行った自慢を
してきました。
実際、記念館には、しらみつぶしで行ってます。
なぜなら将来的に、
「自分が記念館を建てなきゃなんない」
ということを念頭に置いて生きているからです。
そうするとね、
他人の記念館が
気になってしょうがない
んですよ。
ほぼ日 はははは。
みうら ふつうに生きていたら、他人の記念館のことは
あんまり気にならないでしょ?
でも、「自分が将来建てるなら」ということを
考えながら巡ってみてくださいよ。
「あ、ここの記念館、よくできてるな!」
「ここ、取り入れていこう!」
と思うようになり、抜群に旅が楽しくなります。
ほぼ日 なるほど。
みうら 鹿児島県にある、その記念館は
明治維新の偉業についての展示が
ストーリー形式で展開するんですが、
「朝生(あさなま)」みたいな状態の
ステージが出てきます。
ほぼ日 朝まで生テレビ‥‥?
みうら 自分は「朝生」のスタジオにいる、
あの観客のような気持ちになって、
それを見ます。
「それは薩長藩が
 まずいでごわす!」

なんていう声が聞こえてきて
壇上のいろんなところから、グゥゥゥーンと、
西郷どんとか、坂本龍馬さんとかが
上がってきます。
ほぼ日 せり上がってくるんですか。
みうら そうです。
「それは、
 どげんしたとですか!」

などという声とともに、ロボットの人形が
ブゥイイーンと上がってくるんです。
それは驚くほどの論争なわけですよ。
もう田原総一朗さんだって、
仕切れないくらいの論争です。
「それは、薩長藩が
 なんとかで!」

‥‥あの、あんまりネタを知らないんで、
うまく伝えられないのが歯がゆいんですが。
ほぼ日 はははは。
みうら ほかに誰がいたっけな‥‥、
薩長藩しか知らないんですが、
まぁとにかく
「それは、
 どげんしたとですか!」

とか
「これではいかんばい!」
みたいな九州弁で、
いろんな人がいろんなところから上がってきて、
言い終わった人は、沈みます。
ほぼ日 沈むんですか。
みうら メインの人がひとりで上がって
ピンスポを浴びるシステムです。
ラストは全員がグィーーーンと上がり、
勢ぞろいされまして、それはもう、
涙が出るくらい、感動します。
ほぼ日 でも‥‥その、
実際に、そういう論争があった
わけじゃないですよね。
みうら いやもう、ぼくは「あった」と思ってます。
あのころは、いろんな人が下からせり上がって
会議されてたんじゃないかと思うくらいの
リアルな再現です。
ほぼ日 そんなに語気荒く。
みうら そうですよ。
「池田屋、なんとかで
 ごわすか!」
ほぼ日 はははは。
みうら かなり少ない語彙の中から言ってるだけ、
になっていますが、
ここはもう、おすすめです。
さほど薩長に興味がない方も、
──まぁ、興味というものは、あってもなくても
まずは自分で「興味がある」と
決めればいいんですが、
しかし、それを見れば好きになります、
薩長というものが。
ほぼ日 薩長が。
みうら いまは「薩長、すごいよ」という
言い方をしますね。
すごいですよ。
ほぼ日 ‥‥‥‥。
みうら あとね、奄美大島も、
鹿児島県なんですよ。
ほぼ日 あ、そうですね。
みうら 奄美大島では、
ハブとマングースのショーが見られます。
ひところぼくは、
「ハブとマングース」と聞けば
せっせと出かけていった人間です。
ほぼ日 そうなんですか。
みうら ハブとマングースの闘いについては
ある時期からもう
「ドロー試合だ」ということになり、
どんどん試合数も減っていきました。
彼らはいま、五分五分です。
ハブを駆除するために
外国からマングースを呼んだのに
マングースも繁殖して多くなっちゃって
「もう、こりゃ意味ない」ってことになりました。
ほぼ日 なるほど。
みうら しかし、五分五分と決まっても、奄美大島では
ハブとマングースのショーがあります。
透明なステージに下敷きのような仕切りがあって
それがパーンと開くと、闘いがはじまります。
でも、何回もやってるから、彼らも
わかってるわけですよ。
ぼくが見たショーは、朝の回でした。
きっと朝昼夜の「3まわし」を
何年もやってるわけです。
たぶん、出演者もずっと同じ
ハブとマングースでしょう、
きっと楽屋も一緒なんですよ。
ほぼ日 ははは。
みうら 見てればわかるんです。
楽屋も一緒、四六時中一緒ですよ。
そんなのが透明な下敷き一枚で、
「ファイト」って言われても、やれないですよ。
でも、ここは人も見てるし
「ちょっとひと噛みいっとくか」
くらいな感じです。
見てればわかるんです、
一応、噛むんですよ。
ほぼ日 ははは。
みうら 一応噛んで、係の人も
「ファイト」とか言って
一応盛り上げていく。
しかし、マングースの陣地ではもう
ふんが落ちてる始末なんですよ。
ほぼ日 うはははは。
みうら 闘いの途中にふんなんてしていたら
ふつうはやられるじゃないですか。
それが、悠々としています。
「3まわし」の営業の、
考えた挙句の試合だな、
非常に感じ入りました。
ほぼ日 それはプロですね。
みうら そうそう、鹿児島県には
「白くま」と呼ばれるかき氷がありますよね?
あれのどこをもって「白くま」と呼ぶのか、
ぼくは研究が足らず、わかりません。
これまでお腹をこわすくらい現地で注文して
食べてきたのに、いまだにわからない。
白いのは、わかった。
でも、それじゃ「白」じゃないですか。
「くま」の部分がないんです。
ほぼ日 はい。
みうら 氷の上に乗っているあずきが鼻ってことかな?
と思ったけど、
それじゃ鼻が多すぎるんだわ。
ほぼ日 そうですね。
みうら まぁ、ぼくはこれまで、シロクマの姿を
そんなにじっくりと見たことがないので
なんとも言えないんですけど、
「白くま」たる所以があると思うんです、絶対。
ほぼ日 白い以外に。
みうら

みなさんが、鹿児島県に行かれて
白くまを注文されて、
「この角度からみたここが白くまに見える」
という報告をお待ちします。

ほぼ日 お待ちします。
今回のお話をノーカットでごらんになりたい方は
下の動画でおたのしみください。

日本中いろんな記念館がありますが、
鹿児島県の「維新ふるさと館」は
みうらさんの記念館ベスト10に
入るんだそうです。
鹿児島県を訪れるときにはぜひ
その語気の荒そうな
明治維新のみなさんのやりとりを
体験したいものです。
また来週、次の県に移ります。
2008-01-06-SUN
みうらじゅんさん&安斎肇さんが
結成した「勝手に観光協会」作の
すばらしい鹿児島県ご当地ソング
「ヘルシー音頭」を
どうぞお聞きください。