谷川俊太郎さんの答え  あなたがここに書いてきた繊細な心理に まったく共感しない人、それが偽善者です。 人は誰でも多かれ少なかれ どこかで偽善者になってしまうものだと ぼくは考えています。 自分の中の偽善的な心理をごまかさずにみつめた上で、 人のためになることをすればいいのではないでしょうか。 大切なのは行動ですから。 他人のために何かすることが、 そのまま自分のためになるのだということが 心底腑に落ちて、 自分と他人の区別が気にならなくなると、 偽善はきっと消え去るんでしょうね。 質問 二  私は、学校の友達によく 「やさしいね」って言われます。 でも、困っている人がいて手伝おうとか、 みんながやりたがらない仕事をやろうとか思うときに、 心のどこかで 「これをしたらみんながやさしい人だ、って  思ってくれるかな」 と考えてしまいます。 ときには、心のどこかどころじゃなくて、 それを目的にしてることもあります。 人を手伝ったり仕事をしたりして、 「ありがとう」って言ってもらえると すごくうれしいし、 役に立てたと思うと「やってよかった」とも思います。 純粋にそれだけを思うときもあるし、 計算しているときもあります。 一度計算してしまうと、 どれだけそう考えないようにしても その考えが心の中から消えません。  私は「偽善者」というものがよくわかりません。 だけど、自分はなりたくないと思います。 「偽善者」ってどういう人のことを言うんだと、 谷川さんは思われますか?  (せっけん 十五歳) 読者のみなさんからいただいた質問に、 詩人の谷川俊太郎さんから 答えが届きました。 「春休み」の期間中、全11回、連載します。 平日毎日ひとつずつ おたのしみください。