谷川俊太郎さんの答え 意識してかわいくしゃべったり 行動したりするのを見ても、 ぼくはかわいいと思いません。 かわいさはその人の人となりから 自然に生まれるものですから、 わざとらしいかわいさは かえって気持ち悪い。 ライオンでも犬でもアザラシでも 動物の子どもがかわいいのは、 敵に攻撃されないためだという説がありますが、 自然なかわいさは たしかに生きていく上でプラスですよね。 お年寄りがかわいく思えることがあるのも、 若い人にお年寄りを大事にしたいという気持が わくからかもしれない。 でもかわいさは、 たとえば誠実さとか、 考え深さとか、 豊かな感受性などとくらべると そんなに大切だとは思えません。 あなたもあと十年もすると、 かわいさよりも 行動の強さ、美しさ、エレガンスのほうが 自分にふさわしいと思うように なるのではありませんか。 でもこれらはかわいさと違って 自然に生まれるものではなく、 意識して自分でつくってゆくものだと思いますが。 いまは「女は度胸、男は愛嬌」の時代だから、 かわいければ男子にウケるというのも疑わしいね。 質問 九 私は中学生の最後の年になって、 高校生という名の台に乗っかる前に ひとつ、越えたい壁というか枠というか、 問題があります。 私は、かわいくくしゃみしたり、 かわいく団扇をあおいだり、 とっさに呼ばれたときにかわいく反応したり、 とにかく「かわいく」行動することが できません。 でも、行動とかがかわいい人のほうが、 男子にウケがいい気がするし、なんだか、 いつもかわいい人がうらやましいです。 自分以外の人を見ていると、 それが才能のようにも見えてきて。 でも、本当に大切かどうかわからないことを ウジウジ考え続ける自分もちょっと嫌なのです。 谷川さんくらい年を重ねると、 「かわいく」行動することは 人生の中でどれくらいの大きさか教えてください。 (まだ、若輩者。 十五歳)
夏休みこども特別企画(UNDER AGE 15の巻) 谷川俊太郎質問箱 なんもん・ぐもん・うけつけます。