質問五  今は両親とも健在ですが、 生涯を添い遂げるなどという夫はもとより 友と呼べるような人もおりません。 孤独死は確実だと思っています。 孤独死に際しての心構えなどありましたら ご教示下さい。  (無能な事務員 三十六歳)
谷川俊太郎さんの答え  まず「孤独死」というような マスメディアが作ったコトバを ココロから追い出してしまうことですね。 人間はみなひとりで生まれて ひとりで死ぬわけだから、 孤独は死につきものです。 死は万人に平等だと思っていれば、 どんな死に方をしても 人と一緒だと思いませんか? 特別な死なんてないんです。 孤独死は確実だと言うけど、 明日勤め先で大地震で死んだら 孤独死とは言えませんよね。 まだ三十六歳でこれから先、 結婚する気もなく 友人をつくる気もないということのほうが、 ぼくはずっと心配ですね。 自分の未来を自分で先走って決めてしまうのは、 人間として傲慢なんじゃないかな。 「無能な事務員」などという寂しい 自己規定から抜け出して、 もっと野放図に生きることを 楽しむ方法を見つけてほしいなあ。

2008-12-31-WED


illustration: NANAE EDA //(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN