シリコンの谷は、いま。 雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。 |
第5回 ネット企業のお仕事って どんなのがあるのですか? 〜ソフトウェアエンジニア編〜 前回までどちらかというと、 シリコンバレーにはどうやってくるんだ? というような話を書いてきましたが、 僕がどんな仕事をしているのか、 あまり書いていなかったように思います。 そこで、今回は僕の職業でもある ソフトウェア・エンジニアがどんな仕事なのか 紹介しようと思います。 僕の場合は、ネット企業でソフトウェア・エンジニアを やっているので、その役割をこんな風に考えています。 「インターネットを使って世界中の人の生活が より楽しく、便利になるような アイデアに溢れたサービスを作るのが 僕らの仕事です。」 ちょっとカッコつけすぎでしょうか。 でも、楽しくて面白いものを 作ることっていうのが大事なのは本当です。 つまらないものを作ったら 誰も使ってくれませんから。 面白いサービスを作ると一言で言ってしまいましたが、 実際には色々とやらないといけないことがあるんです。 インターネット上のサービスは、 1日に何百万人、何千万人もの人が 利用するという特徴があります。 下手をしたら、東京に住んでいる人の数と 同じぐらいの人が毎日使ってくれるのです。 インターネットを使った 無料のメールのサービスを例に考えてみましょう。 1人の人が1日平均1通のメールを出したとします。 でも、ユーザーが1000万人いると、 1日1000万通のメールを処理しないといけません。 もし平均10通だったら、 1日1億通のメールを処理しなければなりません。 朝、会社に出勤したら まずはメールをチェックするという人も 多いのではないかと思います。 たとえば3人に1人が 朝メールをチェックするとしたら、 300万人以上の人たちが 一斉にサービスを利用するということになります。 もちろん、たとえば、ですよ。 現実には使ってくれる人は 世界中に住んでいますから、 利用が集中する時間帯というのは 多少ばらつくのですが、 逆に24時間ひっきりなしに利用されるので、 シリコンバレー時間の夜はサービスはお休みと いうわけには行きません。 同時にたくさんの人が使っても遅くならないこと、 たくさんのメールが滞りなく送れること、 1年365日24時間営業できること、 そういった問題を解決しなければ アイデアが良くても みんなに使ってもらえるサービスにはなりません。 このようなサービスは、 そういった要求を満たすために、 何百台ものコンピューターを使って作られています。 普通はその何百台かのコンピューターを 色々な役割に分けて使います。 一部のコンピューターに仕事が集中して 遅くならないよう うまい具合に仕事の分散ができるような 役割分担の方法を考えたり、 それぞれの役割に何台のコンピューターを 割り当てればコンピュータを無駄遣いしないで 済むかなどを考えなければなりません。 アイデアを思いついたところから、 大勢の人が毎日使う実際のサービスを実現するには、 こういった様々なことを考えて システムを設計しなければいけないんです。 一旦、システムが出来上がったら、 「わーい、完成、おめでとー」といって スイッチオンすれば 後は勝手に動いてくれるというように 都合よくは行きません。 インターネットのサービスは日々改良して いかなければならないのです。 他社との競争もありますから、 サービスが開始してからも、 日々新機能を追加していかなければなりません。 また、人気が出ちゃったりすると、 予想以上のペースでユーザーが増え、 システムの処理能力が追いつかなく なったりすることもあります。 こういった場合には設計の見直しも必要です。 (設計がヘボくてなっちゃうこともあります) あーでもない、こーでもないとみんなで頭をひねり、 「こういう機能があったら絶対面白い!」 というようなアイデアを出し合ったり、 時にはトラブルの対応に夜中に 叩き起こされたりしながらも、 日々進化してゆくサービスを支えるのが ソフトウェア・エンジニアというわけです。 コンピューターを動かすプログラムを作るという 作業は、エンジニアの仕事の一部ですが、 他にもサービス全体が どう構成されるかの設計をしたり、 様々な問題の解決策を考えたりすることが できなければ、この仕事は務まりません。 そんなことから、プログラマーという呼び方は あまり使われないのでしょう。 インターネットビジネスのアイデアを 形にするには効率よく、しかも安定して動く 大規模なサービスを作らなければなりません。 しかし、こういった大規模なサービス作りは、 ノウハウが少ないので、エンジニアの 職人的な経験と勘がものをいいます。 そういう訳で、シリコンバレーでは どこの会社にいっても、エンジニアが とても大切にされているなと実感します。 エンジニアはシリコンバレーの花形の職業なのかな と思います。 「君はどんな仕事をしているの?」 と聞かれて、 「インターネット関連の会社で、 エンジニアやってます」 というと、 「いいなぁ、かっこいいねー」 といわれたりします。 つくづくエンジニアを職業にするにはいい環境です。 今回はソフトウェア・エンジニアという 仕事を取り上げて見ましたが、 もちろんネット企業が ソフトウェア・エンジニアだけで 動いているわけではありません。 次回は、ネット企業のエンジニア以外の お仕事について紹介します。 上田ガク |
2003-09-26-FRI
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