シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第6回
ネット企業のお仕事って
どんなのがあるのですか?
〜ほかにもいろいろあるのです編〜



前回はネット企業のエンジニアの仕事を紹介しましたが、
ほかにも色々な仕事があります。
普通の会社と同様に人事・総務などの裏方さんや、
営業やマーケティングなどもありますが、
今回はそれ以外のちょっと珍しい仕事について
紹介したいと思います。

僕らエンジニアが一番一緒に仕事をすることが
多いのは、「プロデューサー」と
呼ばれる人たちです。テレビ番組のプロデューサーは
とっても偉い感じがするのですが、
シリコンバレーのプロデューサーは上から命令を
出す親分ではなく、実際に手を動かして仕事を
する人たちです。

プロデューサーは、ネット企業が提供するサービスを
どういった方向に進化させていくか、
どんな人をターゲットにするのかなど、
サービスのビジネス面を考えていきます。

前回使った無料メールを例にまた説明してみましょう。
無料のメールサービスが既に始まっていたとして、
次に
「コンピューターウィルス撃退の仕組みを組み込んだら
 みんな助かるに違いない」
と考えるか、
「迷惑メールが届かないようにブロックしちゃえ」
と考えるか、
「年会費を払ってもらったら、広告がつかないようにする」
がいいのか考えたりするのです。

全部はなかなかできませんから、どの方向で行くのか、
そういうことを、使う人の立場やビジネス面から
考えてくれる人たちです。

別の仕事を見てみましょう。

ネットのサービスを作る段階では、
使う人が見ることになる画面を作る必要がありますね。
画面の設計をするのが「UIデザイナー」のお仕事です。
「UI」は、「ユーザー・インターフェース」、
つまり使う人とコンピューターをつなぐ接点のことです。

エンジニアでも画面を作ることはありますが、
やはりデザイナーというだけあって、
彼らの作る画面は、一味違うプロの仕上がりです。

色使いやレイアウトなど見た目の綺麗さだけでなく、
画面上でクリックするところが分かりやすいようにとか、
サービスの中で迷子になりにくいようになど、
使い勝手についても考えて、
画面や画面同士のつながりを考えたりしてくれます。

UIデザイナーには女性が多いのが特徴です。
男性のデザイナーもエンジニアとは
全然ファッションが違います。
「デザイナー」と聞いて想像する
そのままの人だと思っていてOKです。

彼らの机には、デザイン系の小物が
置いてあったりして、ちょっとお洒落にしていることが
多いように思います。


さて、サービスが一旦動き出したら、
24時間止められないという話は前回書きました。
また使うコンピューターの数も膨大です。
使うコンピューターの数が増えれば当然
壊れる数も増えてしまいます。

実際にサービスを提供するコンピューターは、
データセンターと呼ばれる、
インターネットで使うコンピューターばかりが
何千台もおかれた建物に置かれています。

そのデーターセンターは
会社とは別のところにありますから、
そこに新しいコンピューターを設置したり、
壊れたコンピューターを交換したりする
仕事が必要です。この仕事の人たちを
「Ops(オプス)」と呼びます。
オペレーションの略、
つまり運用担当ということです。

大規模サービスとなると、壊れた機械を交換すればいい
というような単純な仕事というわけにはいきません。

コンピューターを繋ぐネットワークを上手に
設計しないと、そこがボトルネックになって
コンピューターの性能が発揮できなくなって
しまったりします。

どれぐらいのコンピューターを買えば、
コストパフォーマンスがよいのか、
どこの業者と契約をするのが
長期的にメリットがあるのかという
コスト管理のことも考えなければいけませんし、
自然災害などがあっても、システムが
動きつづけられるようなバックアップ体制や
素早い復旧の計画も立てておかなければなりません。

ほかにも実際にサービスが動き始めると、
ありとあらゆる問題が出てきます。
理論上はうまく動くものでも、
物理的な制約で考えたほど
うまくいかないこともよくあるのです。

こういった問題を解決するには、
オペレーションの人たちの協力が
不可欠です。

なかなかこういった職業にスポットライトが
当たることはありませんから、
あまり知られていないのかなと思いましたが、
ご存知でしたでしょうか?

コンピューターに出ている
1枚の画面の向こうには、
色んな人が働いている
というお話でした。

上田ガク

2003-09-30-TUE


戻る