シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第14回
日本の面接と、どう違うのですか?



前回は、シリコンバレーでの転職の体験を元に
転職をする応募者側からの
ネット企業での採用活動について書いてみました。

今度は逆側、つまり採用側から
採用活動を見てみましょう。

シリコンバレーの企業では、1人の応募者に対して、
1日で3、4人の面接官が順番に面接を行います。
面接はそれぞれ45分〜1時間ぐらいですから、
応募者側から見れば軽く半日はかかる計算になります。

面接は、応募者に志望動機を聞いたり、
自己アピールをしてもらったりするというよりは、
応募者に対して色々な問題を出し、
それをその場で解いてもらうというテストに近い形式です。

エンジニアの採用の場合には大きくわけて、
2種類の質問があります。
1つ目は問題解決能力を確かめる問題、
2つ目は個々のコンピューター関連技術に対する
理解度を測る問題です。

ですから実際に聞かれる質問といえば、
こんな感じになります。

「じゃあ、早速ですが、一番得意なプログラミング言語で、
 1000番目の素数を求めるプログラムを
 そこのホワイトボードに書いてください。」

問題はそれほど難しいものである必要はありません。
このような問題でも、その問題を解くスピードや、
それをホワイトボードに書いていく様子を見ると
大体応募者のレベルを知ることができます。

簡単にその問題を解いてしまったら、
その応募者はいい筋をしているかもしれません。
元の問題をちょっとひねった質問をしてみます。

「そのプログラムをもっと速くする方法について
 説明してください」

質問の発展のさせ方には様々な方法があります。
答えが1つでない問題を出して、
それに対してどんな答えを出してくるか、
そしてなぜそういう方法を取るのかを説明させることで、
さらに実力を見極めることができます。

実際には3、4人が1日に面接官を担当しますので、
同じような質問が重ならないよう、
ある程度、面接で重点を置く分野の分担を
決めておきます。

面接が終わったら、それぞれの面接官が、
その応募者を採用したいかどうかをマネージャーに報告し、
その評価を総合して採用かどうかが決まります。

かく言う僕も、前の会社に居たときには
何度も面接官をやりました。
ちょっとおかしな英語をしゃべる外人(日本人)の僕に
面接されてしまうアメリカ人は可哀想だなと思う反面、
僕も相手の技術力をちゃんと
見極めなければいけませんから、
引け目を感じている場合ではありません。

なぜ僕が面接官をしたのかといえば、
面接官は通常、一般の社員がやるものなのです。

シリコンバレーの企業は、求人を出すときには、
どのプロジェクトにどういう役割の社員を
雇いたいかということをはっきり掲載します。
面接官になるのは、そのプロジェクトのメンバー、
つまり将来一緒に働くことになる人たちです。

僕が面接官をやったのは、僕のいたプロジェクトの
人員を補充するための募集を行っていた時でした。

将来一緒に働くことになるプロジェクトのメンバーが
面接官をする理由は単純で、
みんなが納得した人を採用するためです。

新しい社員を採用して、
その人が使えなかったら困るのは誰でしょう?
一番被害を蒙るのは同じチームで働くメンバーです。
人間関係がうまくいかなそうな人だったら?
やっぱり困るのはチームメンバーです。
ですから自分たちの責任で、
誰を仲間に招き入れるのかを決めるのです。

一方、面接で目の前で問題を解かせる理由も単純です。
本当に実力のある人を取りたいからです。
誰だって「やる気はある」といいますし、
熱意をアピールすることはできます。
また、過去の経験や実績も、
履歴書に載せる時にはいかに見栄えが良くなるか
工夫するものです。
「私はこんなことをやってきました」
という話も、話し方次第で、
さぞかし立派に聞こえます。
しかし、面接の場で出された問題を解く時には、
そういった飾り立てが通用せず、
応募者の実力がハッキリでてしまうものです。

このシリコンバレー的な面接も
完璧に機能するという気はありません。
面接官が想定しないような隠れた才能を
発見することができませんし、
応募者に対する評価についても、
印象を元にした評価しかできません。
しかし、見掛け倒しの人を誤って採用してしまう確率は、
かなり低く抑えられる方法だと思いました。

この方法、一度試してみる価値ありだと思います。

上田ガク

2003-11-04-TUE


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