シリコンの谷は、いま。 雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。 |
第15回 シリコンバレーでは転職が当たり前ってほんとう? シリコンバレーで転職はどれぐらい するものなのか、まわりの同僚や友人に 聞いてみました。 みな年齢は僕と同じぐらいの年代、 つまり社会人歴6、7年です。 一人目の友人は、大学院を卒業後に TV用情報端末のスタートアップ※ (※編集部註:ベンチャー企業)に入り エンジニアとして働きはじめました。 そして、その会社が後に ワークステーションメーカーに買収され、 その会社で働いた後、その職場の同僚が辞めて 作ったネット系のスタートアップに参加、 そしてその会社がまた買収されて、 今は大手ネット系企業で働いています。 別の友人は、大学を卒業してシリコンバレーに やってきて、グラフィックス関連のハードウェアの 企業でソフトウェア開発をした後、 別のネット系スタートアップに参加、 合併と買収を経た後、 自分でソフトウェアサービスの会社を友人とはじめ、 その会社が買収されてインターネット検索の会社で 働いています。 ほかにも例を挙げればきりがありませんが、 今までに渡り歩いてきた会社の数が3つ、4つある というのがごく平均的な人です。 我々エンジニアに限らず、会社の幹部も、営業の人も、 みな色々な会社を渡り歩いてやってきます。 転職が当たり前なのには、ベンチャーに入って 成功を追い求めるという理由もありますが、 シリコンバレーの産業の中心が目まぐるしく 変わっていっているという理由があります。 ものの本によれば、シリコンバレーと 呼ばれるようになったのは今から40年ほど前で、 当時は半導体がそのシリコンバレーの産業の中心でした。 そして企業向け大型コンピューターを売る会社が登場し、 続いて個人で買えるコンピューター、 パソコンの時代に突入します。 ハードウェアから、ソフトウェアへと産業の中心は移り、 そして90年代にはインターネット時代の幕開けです。 ソフトウェアから今度はインターネット上での 様々なサービスへと時代は凄まじい勢いで 流れていきます。 そんな中を成功した企業として君臨しつづける ことのできる企業はごく一部しかありません。 世の中が移り変わるにつれて、 産業の中心も移り変わっていきます。 この流れについていくためには 既存の企業は大きく方向転換をする必要がありますが、 規模が大きければ大きいほど、 その方向転換には時間がかかり、 もたもたしているうちに 新しい市場を狙って生まれた新興企業が あっと言う間に急成長を遂げ、市場を席捲していきます。 このようにコンピューター産業は、 移り変わりが激しい分野なので、 僕が定年になるまで 働きつづけることのできる会社を探すことは、 至難の業です。 しかし、そのことをそれほど悲観することは ありません。 今の職場で働いていて知ったことですが、 年季の入った人たちには、 かつてのシリコンバレーの有名企業で 働いていた人たちが多くいます。 つまり、会社は衰退していってしまっても、 そこにいた人たちは、 今も活躍しているのです。 シリコンバレーと言えど、 企業を変えることはとても難しいことです。 大きな会社になれば、 社長ですら会社を変えることが できない場合があるほどです。 ましてや一社員が会社の将来を憂いても どうなるものでもありません。 でも、シリコンバレーでは 変わらない会社は社員に見切りをつけられ、 優秀な人材は新しく成長している企業へと 流出していってしまいます。 彼らはそこで今の世の中にあった 新しいやり方を実践し、しがらみのない環境で その会社を成長させていきます。 逆に、世の中の流れから取り残された企業は ほかの地域よりも急激にその力を失っていき、 消えていってしまいます。 結局のところ、 シリコンバレーは廃れた産業から人を吐き出し、 そして人材を新しい産業に素早く送り込むことで、 地域全体ではその力を持続しつづけていると 言っても良いかと思います。 そしてそこで働く人は企業を乗り換えつつも、 いわば「シリコンバレー株式会社」の社員として、 この地で自分のキャリアを築いていくことが できるように思います。 上田ガク |
2003-11-07-FRI
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