シリコンの谷は、いま。 雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。 |
第17回 CEOの役割ってなんですか? 僕がシリコンバレーにやってきた頃は、 ドットコムバブル崩壊が進んでいた時期でした。 僕の働いていた会社でも、株価は毎日下落し、 大幅な赤字を出してしまいました。 そして、そのどん底の時に、 新しいCEOがやってきました。 全社員を目の前に、 彼は次のような意味のことを言いました。 「今、我々は一番辛い状況にあります。 でも、私はこの会社の将来に 自信を持っています。 この一番辛い時期を耐え、それを乗り越えることが できれば、我々は今よりももっと強い会社になり、 また成長軌道に戻ることを確信しています。 それを私は約束します。」 そして、具体的にどの分野に力を入れるのか、 どういう目標を達成するのかを社員に説明しました。 それから2年、 会社はどん底を抜け出し、CEOが言ったように 四半期毎に業績をアップさせて行きました。 その後に彼がこんなことを言いました、 「私は以前この同じ場所で、 この会社を成長軌道に戻すと約束しましたが、 その約束通り、会社はまた黒字を出すことが できました。そしてビジネスも上向いています。 これは皆さんの努力のおかげです。 皆さんに拍手を」 この自信に溢れた姿を見た時、 経営者とはこういうものなのかと強い印象を受けました。 僕が感じたCEOの役割は大きく3つあります。 1)決断を下すこと 2)責任を取ること 3)社員をやる気にさせること このエピソードに挙げたCEOに限らず、 どのCEOも会社が進むべき方向を明確に示します。 その方針は、CEO本人が考えたものでは ないかもしれませんが、 その方針を自分のことのようにすらすらと話します。 つまり、会社の進むべき方向について、 人々の意見を聞いた上で、CEO自身が納得をした上で 決断を下したということです。 そして、その方針に従って会社が突き進んでいった 結果についての責任はCEOが負います。 会社が期待された結果を出すことができなかった場合に、 「それは経済状況のせいだ」とか 「ある部門の業績が悪かった」 という言い訳をすることができますが、 「経済状況の悪い中なんとかできなかった責任」や 「ある部門が業績を上げられなかった責任」は CEOが取らなければいけません。 CEOは会社が期待する結果を出すことができなければ クビにされてしまうのです。 それは、彼らは雇われ社長だからです。 ある程度大きくなったシリコンバレーの企業のCEOは、 ほとんどみんな雇われ社長です。 といっても、決断のできない雇われ社長という意味ではなく、 CEOを仕事とするプロの人たちという意味でです。 シリコンバレーのCEOたちは社内での 出世競争に勝ち残ってきた者というよりは、 外からやってくるプロの仕事人の場合が多く、 彼らは別の会社でCEOや会社の幹部として 実績を挙げてきた人ばかりです。 ですから、自分がCEOをやっている間、 何事も起こらなければ良いという考えで 会社を経営するわけにはいきません。 成果を出せなければプロのCEOとしては失格です。 オーナー社長ではありませんから、 成果が出せなければ駄目なのです。 CEOは自分の方針を幹部に伝えるだけでなく、 社員一人一人に誰が会社を動かしているのかを 見せ、会社を自分の思うように動かさなくては なりません。 「私がCEOだ。今日から私の命令をきき給え。」 という態度を取るわけではなく、CEOは事あるごとに、 一般社員の前に登場し、自分のメッセージを社員に 語りかけます。 社員たちに自分の方針を伝え、 社員たちをやる気にさせなくてはなりませんから、 CEOたちはスポーツチームのチームのキャプテンの ような振る舞いをします。 CEOもチームの一員であり、みんなで頑張って 目標を達成していこうということを わかりやすい言葉で社員に伝えます。 共感を得るためには、 時には笑いも取らなければなりません。 社員をうまく使おうと思ったら、 それなりのコツがいるのです。 こういうことが出来て、 初めてCEOという仕事が務まるのです。 そして、CEOとしての振る舞いのノウハウは、 CEOを職業として複数回チャレンジいるうちに 身についてくることなのかもしれません。 プロのCEOたちは破格の報酬を得ていることが多く、 僕はそれはどうかなと思う反面、 会社の経営者の顔が顧客や全社員に ハッキリ見えるのは会社にとって 大きなメリットです。 上田ガク |
2003-11-14-FRI
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