シリコンの谷は、いま。 雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。 |
第23回 人事異動みたいなものはありますか? 社員教育があまりないという話を書いた時に、 計画的な社員の配置転換がないという話を 簡単に触れましたが、今回はそのことについて 書いてみようと思います。 普通日本の会社では、新卒社員を年に1度一括採用し、 その後、定期的な人事異動で色々な部署に配置し、 社員を育てていくと言うスタイルを採るのが一般的です。 これに対し、こちらでは人事異動ということが 滅多にありません。 まず採用の段階で、採用されたら、どのプロジェクトで 働くかがはっきり決まっているので、 入社直後はそのプロジェクトチームで働くことになります。 そして、そこで1年、2年と働いたとしても、 人事異動で「来月からどこそこへ行ってくれ」 ということはおこりません。 黙って仕事をしている限りは、 ずーっと同じ職場にいることになります。 では、人事異動はどんな時に起こるのでしょうか。 それには2つの場合があり、 一つは自発的に希望して動く場合と、 もう一つは止むを得ない場合があります。 同じプロジェクトで長い間働いていたなど、 今の仕事に興味を持てなくなった時には、 希望を出して他のプロジェクトに移ることができます。 各個人は自分のキャリアや自分の興味のあるものを考えて、 社内で仕事内容を変えていくのです。 ただし、この社内での異動も希望すれば誰でも希望する プロジェクトに参加できるというわけではありません。 プロジェクト自体が人員募集をしていなければ そこに入ることはできませんし、社内の異動の場合でも、 希望先のプロジェクトは面接をした上で、 その人をメンバーとして迎え入れるか決めるのです。 そして、その面接の内容も、通常の採用活動と ほぼ同じような内容なので、転職するのと同じぐらいの 難しさがあります。 もう一つの止むを得ない理由による人事異動は、 様々な理由で起こりますが、例えばプロジェクトや 部署が消滅してしまう場合などがあります。 こういった場合でも、基本的には その時点で出ている社内募集に応募して 行き先を見つけなければなりません。 (僕は実際にはプロジェクトが潰れるのを 目の当たりにしたことはないので、 違う仕組みの会社もあるかもしれませんが、) こういった場合には、一定の猶予期間が与えられ、 その間に自分の行き先を見つけなければ、 さようならということになるようです。 この仕組みを改めて眺めてみると、 「みんながやりたい仕事をやったら、 みんながやりたがらない仕事が残るじゃないか」 という問題が出てきますよね。 しかし、それが現実に問題となっている感じはしません。 まず、本人の希望を無視して配置された社員が 少ないということから、 しばらくこの仕組みで運営されている会社は あまり異動したがる人のいない、 平衡状態にあるといえます。 そして、時々出てくる異動したいという希望も、 人それぞれ、自分のやりたい仕事というのは異なっていて、 一つの仕事に希望が殺到するということも 通常あまりないものです。 それでも、みんながやりたがらない仕事からは 人は抜けていきます。 しかしこれも、それでもいいから 仕事を得たいという人は必ずいるので 結局はなんとかなるものです。 本人にとって嫌な仕事をさせたとしても、 成果はあまり期待できませんし、 転職が一般的なシリコンバレーでは、 下手をすればよその会社に転職されてしまいます。 人それぞれ、自分に一番あった仕事を選ぶのが、 適材適所の状態で、その時、会社全体として 一番力を発揮できるはずです。 嫌なことでも我慢してやれば人間として成長する というのも、もっともな考えだと思いますが、 自由意志で移動先を選べるのですから、 そう考える人は自分でそういう仕事に 進んでつくことだって可能です。 ここでは誰も人のキャリアのことは考えてくれません。 すべて自分で考え、自分で行動しなければならないのです。 上田ガク |
2003-12-05-FRI
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