シリコンの谷は、いま。 雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。 |
第32回 やっぱりクルマ通勤って多いの? ずいぶん前の回になりますが、通勤事情の回で、 クルマ通勤の話について書くと書いておきながら、 延び延びになっていました。 あまりにも毎回、気にかかっていたので、 今回はクルマ通勤の話を書いて、 すっきりしようと思います。 僕の同僚、知り合いを思い浮かべてみると、 クルマ通勤をしている人と、 鉄道などで通勤している人と、 それ以外の通勤手段の人の割合は、 大体、80%、10%、10%ぐらいでしょうか。 シリコンバレー地域の北にある大都市、 サンフランシスコから通勤してくる人は、 大体3割ぐらいのような感じがしますが、 その大半はクルマ通勤で、 カルトレインという鉄道で通勤してくる人は、 サンフランシスコから通勤してくる人数人に 1人ぐらいと少数派です。 クルマ・鉄道以外の通勤手段というのは、 主に自転車です。今の僕の席の近くには、 いつも3台の自転車が止まっています。 シリコンバレーの会社は、住宅地の近くに ありますから、会社の近くに住んでいる人なら、 運動がてら自転車にまたがって15分ぐらい走れば 会社に行けます。会社まで自転車でくると、 自転車を持ってエレベーターに乗り、 自分のオフィスやキュービクルまで持ってきて そこに置いておくのが一般的です。 タイヤが汚れていたら床が汚れると思うのですが、 まあ、靴の裏も同じく汚れていると思えば、 大差はないのかもしれません。 残る大部分の人は、シリコンバレーに住んでいても、 サンフランシスコに住んでいてもクルマで通勤してきます。 クルマ通勤は、満員電車と違って、 ゆったりと通勤できるように思え、 一見良さそうなのですが、 実際にクルマ通勤をしてみると、 そんなにいいものではありません。 クルマは勝手には走ってくれないからです。 アメリカにくる前は東京で30分から1時間かけて 会社に通勤していましたが、 その時には、文庫本を読んだり、 携帯情報端末でニュースを読んだり、音楽を聴いたり、 通勤時間もそれなりに活用していました。 座れれば、寝るという最も有効な活用法もあります。 しかし、クルマ通勤は電車に揺られるのとは違って、 自分で運転しなければなりません。 運転中は運転に気を配らなければならず、 本を読むことはできませんし、 ニュースを読むこともできません。 出来ることといえば、 せいぜい音楽を聴くことぐらいです。 その上、渋滞すると、ストップ・アンド・ゴーの連続で、 面倒なことこの上ありません。 クルマ通勤1時間というのと、電車通勤1時間というのは ずいぶん意味が違います。 僕は一時期、会社から30分ぐらい離れていたところに 住んでいましたが、その時はちょっと遠いなぁ と感じていたので、それ以来、 なるべく会社のそばに住むというのを条件に アパートを探しました。 こうすれば、毎日の運転時間も短く済み、 通勤も快適です。 こうして毎日クルマ通勤をしていて、 2つの発見がありました。 1つは携帯電話、特に携帯メールの普及、 そしてもう1つは、ラジオ局の普及ぶりについてです。 日本では総人口の1/3がカメラ付き携帯電話を 持っているのに対し、アメリカ、僕の周りでは みんな小さな液晶画面で、3行ぐらいしか表示できない カッコ悪い携帯電話を使っています。 しかも、携帯メールは誰一人として使っていません。 携帯電話の高機能化が進まない理由は、 クルマ通勤が理由なのではないかと考えました。 駅のホームや電車の中で 携帯メールを打っている人は沢山いますが、 クルマ通勤だと運転しながら携帯メールを打つのは 至難の業です。危ないので出来ません。 その上、家でも会社でもメールが使えるので、 小さな端末でメールを書く必要はあまりないのでしょう。 そのため、携帯電話はもともとの通話のための道具から なかなか発展しないのではないかと思います。 一方、日本ではそれほど数の多くないFMラジオ局が、 アメリカには星の数ほどあり、 シリコンバレー一帯でも数十局が放送を流しています。 ほとんどのFMラジオ局は1日中音楽を流していますが、 ラジオ局の数が多いので、それぞれ特色があり、 ヒット曲ばかりかける局もあれば、 80年代の曲ばかりのところ、 カントリー専門、ジャズ専門もあり、 スペイン語や中国語の放送をやっているところもあります。 このFMラジオ、アメリカでも家で聴いているという人は ほとんどいません。しかし、これが 「クルマの中でラジオを聞いているか?」 という話になると、打って変わって、 ほとんどの人がクルマでラジオを聞いています。 つまり、クルマ通勤でラジオを聞くリスナーが ラジオを今でも支えているのではないかと考えられます。 このように見てみると、シリコンバレーの携帯電話事情が いかに遅れているかということが分かります。 必要のないところに発明はないわけで、 シリコンバレーから携帯電話を活用したサービスは なかなか出てこないだろうなと思っています。 逆に、これだけ携帯電話が進歩している日本には、 電話機だけでなく、それを活用したサービスを 世界に先駆けて生み出し、それを世界中に展開していく チャンスが目の前に転がっているのです。 これを生かさなければもったいないですよね。 上田ガク |
2004-02-10-TUE
戻る |