シリコンの谷は、いま。
雑誌の記事とはずいぶんちがうみたいです。

第35回
海外ドラマのようなパーティーって、
よくあるのですか?



ついこの間の週末、友達の誕生日パーティーに
行ってきました。誕生日パーティーといっても、
アメリカ人のパーティーらしく、全部合わせれば
来ていた人は40人ぐらいだったのではないかと
思います。

今まで行ったパーティーを思い返してみても
これぐらいの人数であることは普通で、
少人数のパーティーというのはあまりありません。

なぜこんな人数になるのかというと、
パーティーをやると決めると、
自分の友達をみんな呼んでしまうからなのです。

僕が日本に一時帰国するときなどは、
もちろん友達とよく集まりますが、
それは昔の会社の同僚と集まったり、
大学時代の研究室の友達と集まったり、
大学のバイトの時の仲間と集まったりと、
それぞれ個別に集まります。
なかなか自分の友達を一同に集めて、
ということはやりません。
ですから、それぞれの飲み会は
せいぜい10人もいれば多い方です。
集まるメンバーがみんながみんなを知っているというのは、
それはそれで居心地のいいものです。

しかし、この誕生日パーティーのように大勢の友達を
呼んで開くパーティーにも、いいところがあるんです。

かなりの大人数がいたこの間のパーティーですが、
来ていた人のうちの大半は、
僕が既に知っている人なので違和感がありませんでした。

誕生日パーティー以外にも、色々なパーティーがあり、
そういったパーティーを主催者は恒例行事として、
毎年開いています。僕がこちらに来て3年になりますが、
毎年パーティーに呼ばれていると、
段々知っている人の数が増えてきます。

最初のうちは、もともと仲の良かった人たちしか
知らなかったとしても、パーティーで数ヶ月おきに
何度も顔を合わせているうちに、ふとしたことで
話をして、それ以来仲良くなったりしてくるわけです。

こうして同じような人たちと顔を合わすことを
繰り返していくうち、気があう人たちとは
本当に友達になっていきます。
そして、顔を合わす回数が増えてくるうち、
そのパーティーは日本でやっているような
お互いがお互いを知っているような集まりに
なってくるのです。

また、友達になった人にパーティーに
呼ばれるようになると、また知り合いや友達が
どんどん増えていきます。

シリコンバレーで働いているせいもあって、
こういったパーティーに集まる面々は大抵、
コンピューター産業で働いています。

「最近どうしてるの?」

と聞けば、転職したとか、新しいプロジェクトに
関わっているとか、面白い話が聞けます。
中には新しい会社を立ち上げたよといっている人もいます。

こういったところで、新しい動きが生まれてくるのです。

この間のパーティーで話していたら、僕の友達が、
別の友達のやっている会社に入ったという話を聞きました。
もともと僕らは同じ会社にいたのですが、当時それほど
仲良くしていたというわけではありませんでした。
しかし、今はみんな友達で、お互いの技量も
大体分かっているので、「人を探している」、
「あいつに声をかけてみよう」と
トントン拍子で話が進みます。

小さなベンチャーに限らず、
ある程度大きくなった会社でも、
成長を続けている間は常に人を探しています。
そういったとき、「僕の友達で優秀なエンジニアがいるよ」
という情報は、大変役に立つのです。
信用できる人が、「この人はいいよ」と言っていれば、
滅多に外れはありません。

このように社員による推薦があれば、
書類選考等がなしになったりしますし、
推薦した人の一言で、いきなり採用になったりもします。

このアメリカ的なパーティーのやり方が、
友達ネットワークを育てるのに一役買っていて、
そしてそれが、実際の仕事上の人的ネットワークとして
機能しているようです。

逆に言ってみれば、「ネットワーク作りをしよう」
と思って、人々が集まっているわけではないのです。

「類は友を呼ぶ」という言葉がまさに
ぴったりくるのですが、面白い人のところには、
面白い人が集まってくるもので、
それがたまたま役にも立っているだけなのでしょう。

たまたまパーティーなどで会った人に、
こんどうちの会社に応募するので、紹介してほしい
といわれても、それがどんな人だかわからなければ
会社に対してその人を推薦するわけにはいきません。

でも、何度も会っていて、友達になっていれば、
その人がどんなことをやってきて、
どれぐらい能力があるのかなどがわかってきますから、
自信を持って薦めることができるのです。

アメリカは、仕事は仕事、プライベートはプライベートかと
思われがちですが、意外にこういった友達関係というものが
基盤となってシリコンバレーは回っているように思います。

上田ガク

2004-03-02-TUE


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