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伊賀の里、土楽窯のたたずまい |
土楽窯の愛猫、チャチャ君 |
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山肌に美しい花房を見せる藤の大木 |
人(?)のよさそうな秋田犬の揚ちゃん |
三重県伊賀市丸柱。
この地に代々続く伊賀焼の窯元、土楽窯の当主、
福森雅武さんを可南子さんが訪ねました。
土楽窯の周囲に広がる豊かな自然。
野山の花を摘み、
古い壷やご自身の作品に生けて楽しむという
福森さんの独自の花の世界は、
『土楽花楽』という写真集でも拝見することができます。
福森さんのお宅に続く小道の脇の、
田植えを終えたばかりの田んぼに小さな雨粒が落ち、
水輪が広がります。
あぜ道の向こうのなだらかな斜面には、
お稲荷さんの赤い鳥居も見えていました。
降りはじめた雨のせいで鮮やかさを増した新緑に、
すっぽりつつまれたかのような土楽の里が
温かく可南子さんを迎えました。
きれいに掃き清められた玄関先の大きな敷石を踏み、
「こんにちは」のご挨拶をした可南子さんの目に、
福森さんが焼かれた陶の仏さまの柔和なお顔が映ります。
天井に走る太い欅の梁や
磨き込まれた板の間に切られた囲炉裏。
床の間の柱、建具の桟の太さや間隔にも、
素朴さや無骨さとは一線を画す、
福森さんの作品に共通する繊細さと力強さの
絶妙なバランスが感じられます。
笑顔で迎えてくださった福森さんは、
いつの間にか、籠を手にして、
お宅のすぐ前まで迫る山に向かいます。
豊かな野山のめぐみに溢れるこの時期。
五月の緑は刻一刻と変化し、
それでなくてもお忙しい福森さんに
「楽しいお仕事」の時間が加わります。
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行く手の山の斜面には、
たわわに咲き乱れる薄紫の藤の花房が
あでやかな姿を見せていました。
ツツジの花に、柚子の実、コシアブラ、
花いかだ、サンキライと、
籠には、本日の囲炉裏端の晩餐の食材が、
見る見るうちに福森さんご自身の手で収穫されました。
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可愛らしい花いかだの葉 |
ツツジの花、柚子の実、
コシアブラ、柿の新芽、白つめ草、
花いかだ、サンキライ |
さてさて、可南子さんが、心待ちにしていた、
晩餐がはじまりました。
次々と供される献立の見事さは、
主菜を決めかねるほどですが、
この地を代表する伊賀牛のヒレを、
土楽の黒鍋で焼いたステーキを筆頭とするべきでしょう。
福森さんがこの日のためにと、
京都のお魚屋さん、
『丸弥太(まるやた)』から取り寄せてくださった
琵琶湖のいい香りの稚鮎も出番を待っています。
先ほどまで籠に並べられていた、山の収穫も、
福森さんのお嬢さんが、薄い衣をまとわせて、
天ぷらにして出してくださいました。
そして、可南子さんだけでなく、
ご相伴にあずかった食いしん坊のカメラマン、
小泉さんをはじめとする一行が
思わずうなってしまった一品があります。
丸弥太さんから送られたとびきり新鮮な内臓を、
流水で丹念に洗い、
利尻昆布のうま味が十分溶け出したおだしに、
お酒、薄口醤油を加え、さっと炊いたもの。
山で摘まれたばかりの木の芽もどっさり添えられて、
まさに絶品でした。
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もみじの若葉をそえた
琵琶湖の稚鮎 |
京都丸弥太さんから
送られた魚の内臓を
さっと炊いて |
「絶品!」伊賀牛 |
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囲炉裏端の酒宴を静かに見守るかのような、床の間の花は、
福森雅武作、伊賀の大壷にのびやかな姿を見せる
野海棠(のかいどう)です。
晩餐には、器好きの可南子さんを喜ばす、
福森さんの作品がたくさん並びました。
ステーキ用の伊賀牛が重ねられた白磁の輪花大鉢や、
山蕗(やまぶき)を盛った織部の鉢、
粉引の徳利や盃を眺め、
可南子さんのボルテージはあがります。
五月とはいえ、まだ肌寒さが残る
雨催い(あまもよい)の夕暮れ時。
囲炉裏にくべられた香木のかすかな香りと、
心地よいぬくもりに、
福森さん秘蔵のスコッチをいただきながらの宴は、
まだ当分続きそうな気配です。
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きもの
合わせる帯次第で、いろいろ楽しめそうな結城紬は、
白茶に墨黒の繊細な崩し織り。
帯
添田敏子作、型染めの帯。
帯締め・帯揚げ
浅葱ねずの帯締めに、優しい薄茶の帯揚げ |
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