2013年のインタビュー(その2)汗をかく基本。


帰国してからは、
スウェーデンで学んだことを、
どう今後に生かしていくかを考えました。
僕の母は絵描きなんですが、
その周りに、変わった人がいっぱいいて、
よくそういう人たちに話を訊きに行ったりしました。
そんな中に、
お父さんが現代彫刻家で、
息子さんが木工家という親子がいたんです。
会いに行ったら、
「刃物持って来い」って言われて。
木工で使っている刃物を見せたら、
「だめだ」って(笑)。
「通いなさい」で、通い始めて、
「もう住みなさい」って、住み始めて(笑)。
それで、息子さんのほうに付いて3年間いました。



でも、その3年間っていうのは、
木工の修行というよりも、ほとんど、バイト(笑)。
工事の手伝いとか、土方仕事をやってました。
先生が「こんどはここに行って手伝ってこい」
と言うのです。
植木屋さんとか採石場とか農家とか。
週に4、5日バイトして、
残りの2日と、夜、ずっと作るっていう生活でした。



その3年間で、
汗をかく基本を教えてもらった感じです。
それまでは、
なんでもできると思ってた自分がいたんですよね、
実際、何もできないっていうことを、
まざまざと実感させられました。
汗をかく、汚れるっていうことを、
しなきゃいけないんですね。



今までのことを全部否定される感じです。
実際、そうなんですよね。
職人さんの中に入ったら、なにもできない。
植木屋の手伝いに行っても、
最初のうちは、ぼーっと立ってるだけで、
どうしていいか、わからない。



たとえば、茶畑で、
茶摘みのシーズンだったら、
収穫したお茶を担いで運ぶとか。
お茶の木をを守るためには、
立木を切らなきゃならなかったりとか。
いろんな仕事があるわけです。
生きて行くには、
全部しなきゃいけないんだ
ということを教えてもらいました。
1つの仕事場に行くと、いろんなことを勉強できる。



修行中は、そういうバイトの給料で生活していました。
そのころは、技術というよりも、生活力とか、
さらに言えば、
人間力をつけたいみたいなところも強かったんです。
でも反面、
こんなことするつもりじゃなかった
という反発もあったし、
作りたいのに時間がなくて
作れないっていうストレスがあって。
それで独立を決意しました。



(次回につづきます)

2013-07-26-FRI


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